相続放棄の照会書とは?回答書の書き方や返送期限、来ない時の対処法も

相続放棄照会書が送られてきたものの、回答書への書き方がわからずお困りの方も多いのではないでしょうか?

相続放棄照会書とは、ご自身の意志により相続放棄を申述したのかを確認する書類です。照会書には回答書が同封されており、回答をもとに相続放棄ができるかどうかを決めます。

この記事では相続放棄照会書の内容や回答書の書き方、記載例をご紹介します。回答書の返送期限や来ない場合の対処法もまとめているため、ぜひ参考にしてください。

1分でわかる!記事の内容
  • 相続放棄照会書とは相続放棄を行う意思を確かめる書類のこと
  • 同封されている回答書は、期限までに返送しなければならない
  • 相続放棄照会書が来ないこともある

相続放棄照会書とは?

相続放棄照会書とはご自身の意思により相続放棄を希望したのか、確認するための書類です。家庭裁判所へ相続放棄の申述を行ったあとで、申述人宛に送付されます。

相続放棄とは預金や不動産などのプラスの財産と、借金や住宅ローンなどのマイナスの財産を同時に手放す手続きです。

受理された相続放棄は撤回できないことから、本当にご自身の意志で相続放棄を希望しているのかを確認する必要があるのです。

回答書が同封されている

相続放棄照会書には回答書が同封されています。回答書には複数の質問が記載されているため、必要項目を埋めて返送しなければなりません。

回答書に記載されている質問事項は、各家庭裁判所によって異なります。被相続人(亡くなった方)の死亡日と相続放棄の意思確認を行うだけの回答書もあれば、相続放棄をする理由や遺産の処分を行ったかについて聞かれる回答書もあります。

相続放棄照会書・回答書の見本

相続放棄照会書・回答書の見本は以下のとおりです。

【相続放棄照会書】

【回答書】

回答書の書き方・記入例

前述したように、相続放棄の相続放棄照会書・回答書に記載されている文面は、各裁判所によって異なります。ここでは以下5つの質問項目があると仮定し、それぞれの書き方と記入例をご紹介します。

  • 被相続人の死亡を知った日
  • 相続放棄の意思
  • 相続放棄を申し立てた人物
  • 相続放棄をする理由
  • 遺産の処分・消費の有無

1.被相続人の死亡を知った日

まずは「被相続人の死亡を知った日」です。相続放棄には「被相続人の死亡を知った日から3カ月」という期限が設けられているため、「いつ知ったのか」を家庭裁判所が把握する必要があります。

ここで注意したいのが「被相続人の死亡日」ではなく「死亡を知った日」という点です。

たとえば、令和2年の5月1日に父が死亡したとして、同年の8月1日に死亡の事実を知った場合、回答書には「令和2年8月1日」と記載しましょう。

2.相続放棄の意思

「相続放棄の意思」の項目では、ご自身の意思により相続放棄の申述が行われたのかが問われます。ご自身が望んで行った場合は「自分の意思である」と記載しましょう。

多くの場合、「自分の意思である・自分の意思ではない」の2つのチェック欄が用意されているため、当てはまるほうにチェックを付ければ問題ありません。

3.相続放棄を申し立てた人物

「相続放棄を申し立てた人物」の項目では、実際に申し立てを行った方について記載します。ご自身で行った場合は「自分で行った」の欄にチェックを入れましょう。

ご自身以外の方が申し立てた場合、代理人の氏名を記載します。相続放棄を希望する方が未成年であったり、認知症などで判断能力がなかったりした場合、代理人による申請が認められます。

4.相続放棄をする理由

「相続放棄をする理由」の項目では、なぜ相続放棄を行いたいのかを記載します。チェック欄が設けられている場合、以下のような理由が並んでいます。ご自身に当てはまる項目を選び、チェックを付けましょう。

  • 遺産を分散させたくない
  • 債務超過
  • 被相続人から生前贈与を受けている
  • 生活が安定している
  • 遺産が少ない
  • その他

「その他」にチェックを入れるときは、空いているスペースに相続放棄を行う理由を記載しましょう。

なお、チェック欄が設けられていない場合、質問のすぐ下の箇所に「遺産を分散させたくないため」や「責務超過のため」などの理由を記載すれば問題ありません。

5.遺産の処分・消費の有無

「遺産の処分・消費の有無」では、ご自身が遺産に手を付けたかどうかを記載します。たとえば、相続財産の1つである家を取り壊したり、故人名義の口座から現金を引き出して使用したりすると、遺産の処分・消費に該当するケースがあります。

上記の場合、故人の財産を受け入れたと判断され、相続放棄が認められない可能性があるため注意しましょう。

回答書の記入例

回答書を書くときの注意点

回答書を記載するときの注意点をご紹介します。

代筆は限られたケースでしか認められない

回答書への記載は、原則として代筆が認められません。ただし、手を動かせないなどのやむを得ない理由がある場合に限り、代筆が認められます。

代筆を依頼する際の注意点は以下の2つです。

代筆を依頼する際の注意点
  • 相続人およびその配偶者は代筆できない
  • 署名押印はご自身で行う

代筆を依頼した場合は、回答書の空欄部分に代筆者の氏名・住所・連絡先・代筆者と依頼者の関係を記載しましょう。

嘘の内容を記載しない

ご自身にとって不都合な質問があったとしても、嘘の内容を記載するのは避けましょう。たとえば、「遺産の処分・消費を行いましたか?」という質問に対し、思いあたる行為があったとします。

「はい」と答えると相続放棄できない可能性があるからといって、「いいえ」と回答してしまうと、嘘が発覚した時点で相続放棄の申立てが却下される恐れがあるのです。

また、遺産の処分・消費を行ったとしても、例外として相続放棄が認められるケースもあります。

たとえば、遺産の一部から葬儀費用を出したり、故人の思い出の品を遺族で分け合ったりしたケースでは、「遺産の処分・消費」にあたらないとされることがあるのです。

思いあたる行為がある場合、嘘を記載して返送する前に、弁護士へと相談することをおすすめします。

申述書と同じ印鑑を使う

回答書へ押印する際は、相続放棄の申述書に使用した印鑑を使いましょう。同じ印鑑を使うことで、実際に申述した本人であることを証明できます。

申述書に押した印鑑がどれかわからない場合、思いあたる印鑑をすべて回答書に押してください。署名欄に横一列になるよう、手持ちの印鑑を並べて押印すれば問題ありません。

相続放棄照会書はいつ届く?

相続放棄を申述したあと、相続放棄申述書はいつ頃届くのでしょうか?届く時期と返送期限を解説します。

申述後1~2週間で届く

相続放棄照会書は相続放棄の申述後、1~2週間ほどで届きます。ただし、届く時期は申述書を提出した家庭裁判所によって異なり、1カ月ほどかかることもあります

1カ月近く待っても届かない場合の対処法は、「相続放棄照会書が来ないときの対処法」の項目をご覧ください。

返送期限は照会書に記載されている

回答書の返送期限は相続放棄照会書を見れば確認できます。記載方法は以下の2つです。

  • 令和○年○月○日までに返送してください
  • 書面(相続放棄照会書)にある日付から10日以内に返送してください

「書面にある日付から10日以内」と記載されているときは、相続放棄照会書の右上部にある日付を確認します。

事情により期限を過ぎそうな場合、早めに家庭裁判所へと連絡を入れます。相続放棄照会書には電話番号が記載されていることが多いため、間に合わない旨を伝えましょう。

相続放棄照会書が来ないときの対処法

相続放棄照会書が来ないときの対処法は以下の2つです。

相続放棄照会書が来ないときの対処法
  • 依頼している弁護士に確認する
  • 家庭裁判所に確認する

相続放棄の申述を弁護士へと依頼したケースでは、相続放棄照会書はご自身ではなく弁護士の元へと送付されます。その場合は回答書への記入と返送も弁護士が行ってくれます。

まずは弁護士へと確認し、届いていないと告げられてから家庭裁判所へと確認してみましょう。

ここで注意したいのが、相続放棄照会書は相続放棄を申述した方全員に送られるものではない点です。

申述書に記載された内容に疑問がなければ送付しない家庭裁判所もあり、このあたりは申述した家庭裁判所により異なります。

「相続放棄照会書が来ないこともある」という点を踏まえたうえで、弁護士または家庭裁判所へと確認してみましょう。

相続放棄の手続きを司法書士へと依頼した場合、相続放棄照会書はご自身の元へと届きます。

相続放棄を申述するときの流れ

相続放棄を申述するときの流れは、以下のとおりです。

  1. 費用を用意する
  2. 必要書類を用意する
  3. 相続放棄申述書に記入する
  4. 家庭裁判所に申述する
  5. 相続放棄照会書を受け取る
  6. 回答書を返送する
  7. 相続放棄申述受理書が届く

ご自身で相続放棄の手続きを行う場合、かかる費用は5,000円以内に収まるケースが多いです。ご自身の戸籍謄本や亡くなった方の住民票除票などが必要になるため、集めて相続放棄の申述書とともに提出しましょう。

相続放棄照会書に同封されている回答書を返送し、相続放棄申述受理書が送られてきたら相続放棄が完了したことになります。

相続放棄照会書に関するよくある質問

相続放棄照会書に関するよくある質問をご紹介します。

回答書の返送は普通郵便でもよい?

回答書は普通郵便でも返送できます。ただし、配達状況を確認できないため、届いていないことを知らずに相続放棄の期限である3カ月を過ぎてしまうことも考えられます。

できれば配達が完了するまで追跡できる、書留郵便で返送するほうがよいでしょう。

回答書の修正方法は?

回答書の誤りに気付いた場合、訂正印を使って修正しましょう。まずは書き直したい箇所に二重線を引き、その上から訂正印を押します。

二重線を引いた横に、本来記載したかった内容を追加すれば問題ありません。

相続放棄の受理はいつ頃される?

回答書を返送してから1週間~2週間後に、家庭裁判所から相続放棄申受理通知書が送られてきます。これにより、相続放棄が受理されたことになります。

相続放棄照会書とは異なり、相続放棄受理通知書は全員に送られてくる書類です。2週間ほど待っても届かない場合は、申述を行った家庭裁判所へと問い合わせてみましょう。

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