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100万円以下で買える“格安”リゾートマンションって本当にお買い得?

皆さん、こんにちは。ファイナンシャルプランナーの佐藤益弘(ヨシヒロ)です。仕事柄、住宅購入や空き家、不動産の相続に関する相談を多く受けますが、最近、いわゆる”リゾート地”に建つ売値10万円ほどの格安マンションに関する記事を読んだり、不動産仲介サイトでそうした物件が売りに出されているのを見かけたりする機会が増えたように感じます。いろいろなサイトをのぞいていると、何と「1万円」という物件も見かけます。

格安リゾートマンションが増えている。写真はイメージ

"格安"リゾートマンションが増えている。写真はイメージ

ここまで安いと、「お小遣い程度なら失敗してもいいや」と、購入に踏み切る人がいても不思議ではありません。実際、私の顧客でも、こうした格安リゾートマンションに関心を持っている人が少なからずいます。でも、ちょっと待ってください。その物件は、本当にお値打ちなのでしょうか。何かカラクリがあるのでは?

ここでは、格安リゾートマンションに興味を持っている人に、購入すべきかどうかなどについて、不動産に強いFPならではの視点で解説します。ぜひ参考にしてください。

格安リゾートマンションは結構多い

一見して「格安だ」と思えるリゾートマンションは、実は結構多いです。大手不動産紹介サイトをのぞいてみると、群馬県、長野県、静岡県、新潟県など、温泉施設やスキー場が近くにある地域で100万円以内の物件がゴロゴロしています。「ワンルーム37平方メートル10万円」(群馬)、「2LDK46平方メートル98万円」(静岡)など、実にたくさんの物件が並んでいます。公的な競売サイトを見ると、1万円のマンションもありました(2018年5月時点)。気になった人は、以下のサイトをのぞいてみてください。

参考サイト
「不動産競売物件情報サイト」(http://bit.sikkou.jp/app/top/pt001/h01/
「スマイティ(中古マンション)」(https://sumaity.com/mansion_used/

動産競売物件情報サイトに掲載されていた格安リゾートマンションの例。画像は一部加工

不動産競売物件情報サイトに掲載されていた格安リゾートマンションの例。画像は一部加工

販売価格だけを見ると、決して無理のない金額で買えそうな物件がたくさんあります。「長期休暇はリゾート地でゆっくり過ごす」という、ちょっとうらやましい生活が、クルマよりも安い値段で手に入るのです。

実際、子育て真っ最中だったり、子どもがなく経済的に比較的余裕があったりする30〜40歳代の若い世代の顧客からは「子育てのため、自然豊かなリゾートエリアで家がほしい」「リゾートエリアで日常の喧噪を離れて週末を過ごしたい。安い物件も多いが、どういう基準で選べばよいか」といった相談も、少ないながらも受けています。

物件価格だけを見てはいけない!? それ以外にかかる費用

格安で売りに出されているマンションを一覧してみて、気になったことがあります。物件の多くが1980〜90年初頭の、いわゆるバブル期に建てられていることです。この「バブル期の竣工」は、いくつかの問題を引き起こしています。

高額なランニングコスト

バブル期のリゾートマンションに多い傾向として、サウナ、大浴場など充実した共用施設が挙げられます。こうした共用施設の運営費は、管理費として毎月請求されます。設備が豪華であればあるほど管理に手間がかかるため、その分、所有者の負担がかさみます。

加えて、築30年ほど建つと、大規模な修繕も必要になります。その費用は所有者それぞれが修繕積立金として積み立ててきたお金の中から賄われますが、施設が充実しているだけに、決して安くはありません。その結果、マンション価格自体は安いのにもかかわらず、年間50万円を超えるような高額の維持費が必要な物件も散見されます。

伊豆半島にある築40年ほどのマンション。温泉大浴場など豪華な設備があり、物件価格はおよそ60平方メートルの一室で約100万円。ただし、維持費は年50万円ほど必要。画像は一部加工

伊豆半島にある築40年ほどのマンション。温泉大浴場など豪華な設備があり、物件価格はおよそ60平方メートルの一室で約100万円。ただし、維持費は年50万円ほど必要。画像は一部加工

それだけではありません。不動産を購入すると年に1回、固定資産税(場合によっては都市計画税も)を納めます。熱海市には、市内に別荘としてリゾートマンション等を保有する人に対し、別荘等所有税という税金も課されています。税額は2018年6月時点でのべ床面積1平方メートルにつき年650円。家族が利用する50〜60平方メートルほどのマンションであれば、3万円ほどが毎年かかります。

確かに物件購入にあたり、必要な初期費用は安いといえます。しかし、税金も含めてこれだけの維持費がかかるとなると、物件価格以外の費用もコストきっちりチェックしないといけませんね。

維持費の滞納があれば買い手が背負う

毎年数十万円の費用を何年にもわたって支払い続けるとなると、中には、支払いきれなくなる人もいるでしょう。「そんなに使っていないのに何で払わなきゃいけないの?」と、あえて支払わない悪質なケースもあるかもしれません。

マンションの場合、建物の管理、メンテナンスに必要なお金は、管理費や修繕積立金などの名目で所有者が分担します。管理組合をつくり、ある程度お金を貯めておく仕組みになっていますが、支払わない人が増えてくると、貯めていた(貯めるべき)お金が足りなくなり、必要な管理や修繕ができなくなってしまいます。

このため、誰かが支払わない分は、ほかの誰かが支払うことになります。前の所有者が管理費や修繕のための積立金などを滞納していれば、次の所有者が肩代わりします。修繕が必要なタイミングにもかかわらず、必要なお金が不足していれば、工事実施時点の所有者が不足額を一時金として支払う可能性もあります。

過去に不動産競売物件情報サイトにあった格安リゾートマンションの評価書の一部。毎月10万円弱の管理費・修繕積立金が必要なほか、500万円を超える滞納金もあった。画像は一部加工

過去に不動産競売物件情報サイトにあった格安リゾートマンションの評価書の一部。毎月10万円弱の管理費・修繕積立金が必要なほか、500万円を超える滞納金もあった。画像は一部加工

リゾートマンションの場合、住んでいる人が少ないので、管理費や修繕積立金の徴収がしにくかったり、当事者意識の欠如からか意見が合わなかったりして、管理組合が機能しなくなっているケースも多いです。

ご自身の物件で滞納がなかったとしても、マンション全体として管理費や修繕積立金が不足しているケースもあり、結果として、適正な管理ができず、また、工事実施時に自己負担が増加する可能性があるのです。

豪華な施設、大きな建物がウリのリゾートマンションは、修繕に必要なコストも大きい

豪華な施設、大きな建物がウリのリゾートマンションは、修繕に必要なコストも大きい。写真はイメージ

以前は、数年に一度の値上げを前提に、管理費や修繕積立金の計画が立てられていました。バブル崩壊後の景気低迷を受けて、こうしたコスト負担に耐えきれなくなった人も多いでしょう。修繕積立金が十分貯まらず、補修工事ができていないケースも少なくありません。適切な管理も行われず、老朽化によって見た目もキレイとはいえません。もちろん、部屋をピカピカにリフォームする余裕のある所有者も少ないでしょう。

格安なら買うべき? 購入を判断するポイントは?

決して安くないランニングコストがかかるとはいえ「それでも安くマンションが手に入るなら」と、購入に踏み切る人もいるでしょう。一方で、中には「どうしようかな」と迷いつつ、時間だけが過ぎていく人もいるはず。ファイナンシャルプランナーならではの意見として、購入を判断するにあたり重視してほしいポイントを以下に記載します。

1.経済的な損得を計算しプラスになるか
2.財産を引き継ぐ家族の重荷にならないか

「100万円なら買っちゃってもいいかも」はNG。買った後のこともきちんと考えよう

「100万円なら買っちゃってもいいかも」はNG。買った後のこともきちんと考えよう

1.経済的な損得を計算しプラスになるか

ファイナンシャルプランナーとして仕事をしてきて「経済的な損得は時間単価で決まる」と感じます。安いモノを買ってすぐに使えなくなれば、それは高い買い物です。高価なブランド品を購入しても、長い時間大事に使い続けられれば結果として安い買い物だったといえます。
(関連記事:コスパを気にしない買い物のほうが節約につながる!?

こうした損得計算を、マンションにも当てはめてみましょう。必要経費(ランニングコスト含む)を上回るメリットが長い期間得られるのであれば、その物件は「買い」です。このメリットには「家族でゆっくり過ごせる」「友人を招いてワイワイ楽しめる」「好きなときに好きなだけ温泉に入れる」など、目に見えにくい価値も含まれます。

不動産は買うにしろ、借りるにしろ、基本的に長期間利用するモノです。思い入れなど精神面=主観的な要素も含め、トータルとして長い時間楽しめる価値があるのかをしっかり考え、行動してください。

2.財産を引き継ぐ家族の重荷にならないか

2017年に「母が他界したことで、亡くなった父がリゾートマンションを持っていたことがわかった。どうしたらよいか悩んでいる」という相談を受けました。よくよく聞いてみると、まったく利用していないにもかかわらず、税金や維持費だけを支払い続けていたとのことでした。こうした問題は、実は増えています。

相続の際にリゾートマンションを保有していた事実が明らかになることも

相続の際にリゾートマンションを保有していた事実が明らかになることも

ご自身が亡くなった後、遺された家族にとってマンションが重荷にならないか、という点も大切です。例えば、預貯金など金融資産は相続し、不要なリゾートマンションだけを相続放棄するということはできません。ですから、遺された家族の選択肢としては、以下のようになります。

(1)家族が利用する
(2)第三者に貸す
(3)売却する

しっかり手入れされた(リフォームなどできれいになった)マンションを格安で購入でき、かつ納得できるランニングコストであれば(1)は問題ないでしょう。一方で、(2)(3)は相手がいることですから、注意が必要です。借り手や買い手が見つからないと、何年経っても空室のまま、コストだけを負担し続けなければなりません。まさに「無用の長物」です。

特に、物件が売れるかどうか判断する際、設備、管理、ランニングコストに加え、もう1つ重要なポイントがあります。「利便性(立地条件)」です。リゾートマンションとはいえ最寄りの駅やインターチェンジから遠すぎる、周囲が閑散としていて買い物できる場所がまったくないなど、生活しにくいマンションは、どうしても売却に手間取ります。

一方、幹線道路沿いで自宅から通いやすい、クルマでちょっと行くとショッピングセンターや道の駅、中核病院があるなどの特長を持つマンションであれば、多少老朽化していても買い手が付きやすくなります。もし、リゾートマンションの購入を検討しているのであれば、将来の街づくりの計画も含め、最適な物件を探しましょう。

まとめ

最後に、格安リゾートマンションの特徴をおさらいします。

・1万〜100万円ほどで、リゾート地に建つマンションが購入できる
・温泉施設やプール、食堂など設備が充実している物件もある
・設備が豪華な分、管理費や修繕積立金などの維持費がかさむ
・物件によっては支払うべき維持費が支払われておらず、購入者が負担する可能性も

購入する際に検討してほしいポイントは以下のとおりです。

・ランニングコストを上回る楽しみがあり、それが長期間続くか
・家族に相続しても使ってもらえる、あるいは売りやすい物件か

高度経済成長の波に乗って林立したリゾートマンション。経済的に豊かだった団塊の世代が高齢になり、次の世代が財産として引き継ぎつつあるいまだからこそ「なんとかして処分したい」という思惑が表面化し、それが格安物件の多さにつながっているのだと思えます。将来にわたって軽くない負担を抱え続けるのであれば「安くてもいいからとにかく手放したい」と考える人が多いのも、当然といえます。

こうした動きは、相続する人や買い手がおらず、老朽化したまま放置されている全国の「空き家」の問題にも通じるところがあると考えています。まるで同じ道をたどるかのように、いま首都圏などでは豪華な共有施設を備えたマンションの建設ラッシュも続いています。そこで、次回は「空き家」問題の背景や先行きについて解説した上で、皆さんがこれからマンションや戸建て住宅を購入する場合にどんな点に注意すればよいのか、お伝えしたいと思います。

※本記事は、執筆者個人または執筆者が所属する団体等の見解です。

佐藤益弘
Writer
佐藤益弘
優益FPオフィス代表取締役。全国でも数少ない顧客サイドからサポート&情報提供する非販売独立系FP。 FPのフロンティア田中英之氏(日本FP協会初代幹事)の師事を受け、18年間活動中。CFP。
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