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会社側の退職手続きとは?従業員が退職したときの手続きをわかりやすく解説

HUPRO 編集部
会社側の退職手続きとは?従業員が退職したときの手続きをわかりやすく解説

従業員が会社を退職するとき、会社側も一定の手続きを行わなければいけません。会社側に課される手続きの中には、期限があるものや税金・社会保険料などお金の支払いに影響があるもの等があり、退職者だけではなく会社側にとっても大切な手続きです。

そこで、この記事では、従業員の退職時にスムーズに対応できるために会社側が行う退職時の手続きを分かりやすく解説していきます。会社側が適切に手続きを経ないと法律問題に発展する可能性もあるので、会社経営者や人事担当者の方は参考にしてください!

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会社側の退社手続きには何がある?

従業員が退社する場合、会社側は「雇用保険」「社会保険」「所得税・住民税等の税金」に関する手続きを行わなければいけません。各手続きに期限が設けられているので、できるだけスピーディーな対応を心がけましょう。

【会社側の退社手続き1】雇用保険の脱退手続き

社員が退社する場合には、会社側で雇用保険の脱退手続きを行わなければいけません。雇用保険は自動的に失効するものではなく、会社が主導して当該退職者を雇用保険から抜く手続きをする必要があるからです。

従業員の退職日から10日以内に、管轄のハローワークに対して、雇用保険被保険者資格喪失届を提出します。

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【雇用保険の脱退手続き1】退職者が離職票を希望しない場合

退職する従業員が離職票を希望しない場合には、会社側が提出しなければいけない書類は、上述の雇用保険被保険者資格喪失届のみです。雇用保険被保険者資格喪失届を提出する際の注意点等については、以下の表をご参考ください。

雇用保険の脱退手続き1

特に注意すべき点として挙げられるのは、※1にあるように、退職者が離職票を希望せず雇用保険被保険者資格喪失届のみを提出する場合、添付書類は不要という点です。

実は、以下のように、雇用保険法施行規則では、第七条において添付書類の提出を必須としています。ただし、退職者が離職票を希望しない場合には、添付書類を提出させてまで離職の事実等を証明する必要がないと考えられているために、ハローワークの雇用保険実務上は、添付書類不要として便宜上取り扱われているだけです。法律の立てつけと実務運用が異なる点なので、ご注意ください。

事業主は、法第七条の規定により、その雇用する労働者が当該事業主の行う適用事業に係る被保険者でなくなったことについて、当該事実のあつた日の翌日から起算して十日以内に、雇用保険被保険者資格喪失届(様式第四号。以下「資格喪失届」という。)に労働契約に係る契約書、労働者名簿、賃金台帳その他の当該適用事業に係る被保険者でなくなったことの事実及びその事実のあつた年月日を証明することができる書類を添えてその事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に提出しなければならない。
出典:雇用保険法施行規則 第七条

【雇用保険の脱退手続き2】退職者が離職票を希望する場合

退職する従業員が離職票を希望する場合や、退職者が59歳以上の場合には、会社側は離職票を交付しなければいけません。退職する従業員について次の転職先が決まっている場合には、雇用保険被保険者離職証明書等の提出は不要です。

離職票を交付するケースでは、以下の雇用保険被保険者離職証明書及び添付書類を届出る必要があるのでご参考ください。

退職者が交付を希望する際には、ハローワークにおいて、雇用保険被保険者資格喪失届の提出時に、3枚複写式の離職票を受け取り、提出しましょう。離職票1は失業保険の支給申請の際に必要となり、離職票2は退職者の保管用です。会社側が必要事項を記入した上で、退職者本人の署名が必要です。

トラブルにならないためにも、退職前に退職者本人に記載内容を確認してもらい、「署名欄」に直筆署名と押印をしてもらうのがポイントです。なお、退職者の記名押印を得られない場合には、記名等を得られない理由を記載し、会社側のサインをすれば正式な提出に代えることができます。

雇用保険被保険者資格喪失届のみの申請時とは異なり、離職票を希望する場合には、ハローワークに添付書類を提出しなければいけません。労働者名簿・賃金台帳・タイムカードなどの勤怠状況を客観的に把握できる書類、退職届などの退職理由を確認できる書類です。

【会社側の退社手続き2】社会保険の脱退手続き

続いて、退職者を会社の健康保険・厚生年金などの社会保険から抜くための脱退手続きを行う必要があります。当該従業員が退職した日から5日以内に、管轄の年金事務所に対して健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届及び健康保険被保険者証等の添付書類を郵送又は持参して提出しなければいけません。概要については、以下の表をご参照ください。

【補足】健康保険任意継続について

【補足】健康保険任意継続について

なお、会社側が行う手続きではないものの、退職者にとって重要な補足事項として、健康保険任意継続があります。転職先が決まっていないために社会保険から脱退せざるを得ない退職者に教えると、退職者に与える会社側の心証が良くなるのでおすすめです。

退職者が退職日までに2ヶ月以上社会保険に加入している場合には、退職後も最長で2年間、健康保険を任意継続することができます。退職者が健康保険の任意継続を希望する場合には、退職日の翌日から20日以内に、健康保険組合に対して任意継続被保険者資格取得申請書を提出しなければいけません。任意継続するかの判断にも期間制限があるので、速やかに告知してください。

ただし、健康保険の任意継続を希望する場合には、従来会社側と折半していた健康保険料を退職者側が全額負担しなければいけなくなるので、その旨も忘れずに伝えましょう。

【会社側の退社手続き3】所得税・住民税等の手続き

従業員が退職する際には、会社側は税金に関する手続きも行う必要があります。退職日の翌月10日までに、退職者が居住する市区町村に対して、給与支払報告に係る給与所得異動届を提出しましょう。納税に関する事務手続きなので、失念していると督促状などが送付されてしまうので、ご注意ください。

※期限は市区町村によって異なる場合がありますので確認をお願いします。
※前年分の住民税の特別徴収は、退職月により手続きが異なりますのでご注意ください。

退職者と会社との間でやり取りをするもの

雇用していた従業員が退職する場合には、会社と退職者との間で返却したり送付したりするものがあります。雇用関係が解消されるので、清算業務が求められるのは当然です。

退職者から回収するもの

まず、会社側が退職者から回収しなければいけないものについて説明します。

雇用関係にある期間中、会社側が退職者に貸与していたものがある場合には、返却してもらわなければいけません。これらは会社の所有する財産だからです。制服や事務用品等の物品はもちろんのこと、業務上使用した機密性の高いデータや取引先の情報等、社外への漏洩を避けなければいけない情報も含まれます。

したがって、万が一のトラブル防止のために、会社で仕事をしていた際に知りえた情報を漏洩しない旨の誓約書や、会社から受け取ったものをすべて全返還した旨の誓約書を交わすのが望ましいと考えられます。

その他、退職者から回収しなければいけない代表例は以下の表の通りです。特に、健康保険被保険者証については、退職者本人のものだけではなく扶養家族の分も含まれるので、ご注意ください。

会社側から退職者に交付するもの

会社側から退職者に交付しなければいけないものも多数あります。会社側が社員から預かって保管していたものだけではなく、以下のように退職後の各種手続きに必要な書類も含まれるので、しっかりと用意して退職者に交付しましょう。

特に重要なのが、源泉徴収票です。退職者が年内に再就職する場合には年末調整のために必要ですし、就職しないまま自営業であるのなら確定申告に必要だからです。したがって、従業員が退職してから1ヶ月以内を目安に、退職月までに支払った給与・ボーナス・社会保険料などの情報を正確に記載して郵送しましょう。

まとめ

以上が、従業員が退職する際に必要となる会社側の諸手続きです。雇用関係が終了したとしても、税金や社会保険等は退職者の生活に直結する事柄です。会社側に求められる手続きを正しく履行しないと退職者に迷惑がかかってしまうので、速やかに事務処理をするように心がけましょう。

ただし、すべての退職が円満に進むわけではありません。ただでさえ退職後は連絡がとりにくくなるのに、何かしらのトラブルが原因で退職をすることになってしまうと、退職手続きだけではなく、退職後の諸手続きにも悪影響が及びかねません。言った言わないの水掛け論、会社の経営自体を揺るがすような情報漏洩トラブルに発展するようなリスクさえあるので、極力スムーズに退職事務が終わるように留意してください。必要であれば、誓約書や合意事項を明文化するのもおすすめです。

従業員の退社に伴って、会社経営者や人事担当者は以上のような複雑な事務手続きを行わなければいけなくなるので、ぜひ余裕があるうちに、基礎知識について確認しておきましょう!また、分からないことがあれば速やかに専門家等に相談できるように、環境を整えておくべきでしょう。

この記事を書いたライター

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