井上公造氏が振り返る平成の芸能ニュース<前編>…勝新太郎さんは豪快で独特の世界があった

スポーツ報知
井上公造氏

 大物の死去、薬物犯罪、結婚、離婚、そして不倫劇…。芸能リポーターとしてさまざまな取材を経験してきた井上公造氏(62)が平成の時代に印象に残った芸能ニュースを2回にわたり振り返る。平成15年までの前編では、2人の国民的スターの名前を挙げた。

 平成元年6月24日午前0時28分、美空ひばりさんが亡くなった。僕の元にも当日、夜中に情報が入ってきて、青葉台(目黒区)の自宅に向かった。午前3時過ぎぐらいだったかな。こんな時間にもかかわらず、すべての媒体の記者やカメラマンが次々とやってきて、リポーターもフルキャストで集まった。

 ベテランの女性リポーターも大勢いたんですけど、全員すっぴん。そんなこと初めてだったけど、みんな自分のことなんか構っていられない。それだけの大物で、ひばりさんの死去とともに平成が始まったことには、今もメッセージのようなものを感じる。

 翌年1月に勝新太郎さんがハワイで麻薬所持で逮捕された事件も印象深い。ハワイに駆けつけて携帯電話を借りてマネジャーに番号を伝えたら、5日後に勝さん本人から連絡があった。「井上、お前、麻雀(マージャン)屋でバイトしていたことがあるって言ってたよな。マスコミが周りを取り囲んで外に出られないから、唯一の楽しみが麻雀なんだよ。だけど、全自動卓が壊れてしまった。悪いけど修理してくれないか」と。自分が渦中の人なのに芸能リポーターに電話して麻雀卓の修理を頼むなんて。本当に驚いた。夜遅く訪ねて修理したら、翌日ゴルフに誘ってくれて「ゴルフ場で話した言葉はしゃべっていい」と言ってくれたんですけどね。

 帰国後も驚かされた。日本で裁判が始まって、初台(渋谷区)の自宅マンション前から中継していたら、CMの間に誰かに後ろからたたかれた。パッと振り向いたらスリッパを持った勝さんが立っていて「井上、被告と呼ぶのはやめろ! 勝新って呼び捨てでいいから、被告はつけるな、分かったか」って言って部屋に戻っていった。

 やったことの良し悪しは別として、こんな面白い芸能人はほとんどいない。ひばりさんも勝さんも、独特の価値観、世界があった。最近は国民的スターが生まれにくくなっていて寂しい思いもある。(談)

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