向井亜紀さん「がんはいつか自分のところにもやって来る。検診で見つかれば、それは大成功」
日経Goodayスペシャルセミナー「がん検診の現在と未来」トークセッションより
氏家裕子=ライター
「検診に行かないことは自分の体に対して失礼」
今でこそ子宮頸がんは市区町村などで積極的に検診を受けるよう助成金があるところも多いですが、当時は妊娠をきっかけに見つかる方が多かったんですよね。
向井さん そうなんです。さらに当時は子宮頸がんには偏見があって、性的にだらしのない女性がなる病気だというレッテルを貼られていたんです。私の場合は、鹿児島で家庭科の先生をしていて、祖父との恋愛しかしていないような女性だった祖母が、子宮頸がんにかかっていて。人間には、太古の昔からヒトパピローマウイルス(*2)と向き合ってきた歴史があることを、祖母の体験からわかっていたので、この病気のことを皆さんにお伝えしないのはおかしいと思っていました。
当時と比べればがんに対する世間の目もだいぶ変わってきましたが、それでも、検診を受けるのが怖いというような人もいますよね。
向井さん 私の友だちも寝る時間を削ってお仕事をしている人が多くて、検査に行くことで嫌なことが見つかりそうなのが怖いって言う人はいます。私の父なんかは、「検診に行って何もなかったら恥ずかしい」とまで言うんですよ。でも、それって自分の体に対して失礼だと思いませんか?検診に行こうと思うこと自体がおめでたいこと、素晴らしいことなんだって言いたいくらい。
森山先生 恥ずかしいことなんて何もないんですけどね。日本人は感情的な部分が大きくて、残念なことに世界の中で日本の医療はトップクラスなのに、検診の受診率は下から数えたほうが早いという結果が出ています。
向井さん 私はアメリカで治療を受けたり、トライしたなかで、向こうの人は日本人とは本当に考え方が違うなと感じました。日本人が感情論で話しがちな検診のことも、アメリカのお医者さんは「検査を受けた方が未来に対しての心配事を削ることになるんだから、とても合理的でしょう」って言うんですよ。
「気持ちを強く持って手術を受けた。お医者さんからは『あなたは手術に向いています』って言われました」
子宮を摘出し、がんは無事取り除いたものの、手術の影響で機能が低下してしまった右側の腎臓も摘出することになった向井さん。その後もお腹の中で感染をこじらせて、数度にわたり手術を受けたそうです。さらに2013年にはS状結腸にがんが発見され、再び手術をされました。なんと、これまでに受けた手術の回数は14回にも上るといいます。
向井さんは、3年前に大腸がんの一種であるS状結腸がんの手術をしていらっしゃいますが、どうやって見つかったんですか?
向井さん 2002年くらいからPET検査(*3)を受け始めたんですよ。現在は毎年、主人と一緒に両親の故郷の鹿児島でPET-CT検査を受けているのですが、あるとき、腸の中に光が見えたのを先生が見つけてくれて。2011年にはなかったのですが、2012年には小さな光が光っていたんです。そして2013年には同じ場所での光が強くなっていました。毎年受けていたことが、ごく早期での発見につながったんです。
森山先生 前年と比べてどう変化しているかを見ることが検診のポイントなんですよ。
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