ライオンの顔が目の前に…
遭遇まで1週間掛かることも珍しくないが、すぐに7頭の群れが発見された。
「ジョージがラクダの肉の塊を投げ与えると、ライオンたちはむしゃぶりつき、手ではたき落とし、たらふく食べました。お腹がいっぱいになると、ライオンたちが眠りだしました。その日の撮影は終了になり、私は一番小さなライオンの子供を眺めていました。すると、後ろから物音がした。振り返ると、大きなライオンの顔が目の前に広がっていたんです」
その瞬間、松島は空中に跳ね上げられ、意識を失った。頭をくわえられたまま、10メートルほど引きずられ、ライオンの群れの真ん中に連れて行かれた。正気に戻ると、頭から血がドクドクと流れ出ている。ジョージが救出し、すぐに車に乗せた。
「参ったなと思いましたよ。このままでは番組が成立しなくなる。近くに病院がないため、翌朝にフライングドクターがナイロビからセスナ機でやってきました。『せめてジョージにインタビューさせて』とお願いしたけど、半ば強引に乗せられました」
現地の病院に入院した松島さん(写真提供:松島トモ子さん)
セスナ機の発着場所に新聞社の支局があったため、事故はすぐにニュースになった。松島は10日間の入院と診断されたが、交渉の末に3日間で退院した。
「このまま日本に帰ったらライオンに噛まれに来ただけでしょう。でも後にヒョウの部があるとわかっていたらね(笑)」