経営責任「脱原発の契機に」=東電旧首脳に22兆円請求―株主訴訟、13日東京地裁判決 2022年07月12日

 東京電力福島第1原発事故をめぐり、東電旧経営陣5人の責任を問う株主代表訴訟の判決が13日、東京地裁(朝倉佳秀裁判長)で言い渡される。2012年の提訴から10年余り。請求額は史上最高の22兆円に上った。原告の一人は「脱原発を考えるきっかけになってほしい」との思いを込める。
 提訴した株主は48人。弁論は62回にわたり、裁判長は3回交代して昨年11月に結審した。請求額は廃炉費などが増えるにつれ、当初の5兆円から膨らんだ。
 原告の一人、浅田正文さん(81)は移住先の福島県田村市で無農薬野菜を栽培し自給自足の生活を送っていたが、原発事故で「ついの住み家」を追われ金沢市に避難した。「原発は次世代のためになるのか。経営者個人の責任を問うことで『もうやめよう、変えてほしい』と考えるきっかけになってほしい」と訴える。
 津波地震を予測した政府地震調査研究推進本部の「長期評価」に基づき、08年に原発敷地高を超える最大15.7メートルの津波を試算したにもかかわらず、経営陣はなぜ対策を講じなかったのか―。役員の怠慢か、合理的判断かが争われた。
 原告側は08年2月~10年6月に巨大津波襲来の可能性を認識し、タービン建屋の水密化などで事故は防げたと主張。地震学者らが出廷し「想定を超えるのに対策をしないのは考えられない」などと証言した。
 法廷での尋問で、勝俣恒久元会長は「業務執行に関わっていない」、清水正孝元社長も「原子力部門に委ねていた」と責任を否定した。原子力部門トップを務めた元副社長の武黒一郎氏や武藤栄氏は「長期評価は信頼性が低いと報告を受けていた」などと述べた。被告側は、実際の津波の規模は想定と大きく異なり事故を回避できなかったとも反論した。
 訴訟では、強制起訴され一審無罪となった勝俣元会長ら3人の刑事裁判から大半の証拠が採用されたほか、朝倉裁判長は裁判官として初めて原発を視察した。原告側代理人の海渡雄一弁護士は「最も豊富な証拠に基づき審理された」と強調する。原発避難訴訟で最高裁判決が巨大津波を「想定外」と初判断を示した中、どのような結論が導き出されるか注目されている。 

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