貫地谷しほり、結婚で変わった価値観 今大切にしているものは“私生活”「20代はないがしろ」

小野武彦(81)が俳優生活57年目にして初主演した映画『シェアの法則』(10月14日公開、監督・久万真路)でなぞめいたシェアハウスの住人を演じたのが俳優の貫地谷しほり(37)だ。演技派が今、大切にしているものは?

インタビューに応じた貫地谷しほり【写真:矢口亨】
インタビューに応じた貫地谷しほり【写真:矢口亨】

映画『シェアの法則』でキャバクラ嬢役

 小野武彦(81)が俳優生活57年目にして初主演した映画『シェアの法則』(10月14日公開、監督・久万真路)でなぞめいたシェアハウスの住人を演じたのが俳優の貫地谷しほり(37)だ。演技派が今、大切にしているものは?(取材・文=平辻哲也)

 本作は「劇団青年座」が2021年に上演した岩瀬晶子作の同名舞台の映画化。東京の一軒家を改装したシェアハウスで、年齢も職業も国籍もバラバラで個性的な住人たちが繰り広げる群像劇。母親的な存在だった妻・喜代子(宮崎美子)が入院し、夫の秀夫(小野)が仕切ることになったことから、住人との騒動に発展していく。

「最近では私が先輩になることもあるのですが、今回は小野さん始め頼れる先輩しかいなかったんです。小野さんは、ヒーロー的な役柄ではなかったとおっしゃっていましたが、私から見たら、かなりヒーローでした。借金取りが押しかけてくるシーンでは、みんなをまとめてくださった。小野さんが本当に秀夫のようにどっしり考えてくださった」と明かす。

 演じたのは、周囲には20代と年齢を詐称し、キャバクラに勤務する謎めいた高柳美穂。最初は堅物の秀夫と衝突を繰り返すが、次第に事情が明らかになり、信頼関係も生まれていく。

「いつも思うんですけど、物語に出てくる人は普通のようで普通じゃない。私だったら、人に頼って、また違う答えが出てきただろうなって思ったりもするけど、この人は一人で頑張っている。本当に強いなと思い、私も強さが欲しいと思いました」

 自身はシェアハウス暮らしをどう思うのか。

「血が繋がった家族でも、いろんな摩擦があったりしますよね。宮崎さん演じるお母さんみたいな大きな思いを持っている人がいないと、できないんだと思います。今回のシェアハウスに住んでいる人達は、このシェアハウスがなかったら、孤立してしまう人たち。個人的には、合宿みたいな感じだったらいいかもしれない」

 物語では、秀夫の持つ先入観が住人との障害になっているが、貫地谷自身にも、先入観はあるという。

「自分や周りの人を守るって意味でも、そういう部分が強くなってしまっている部分はあります。その人との感覚が合って、面白い話ができるかということの方が大事なのに、シャットダウンしてしまうのはもったいない。取っ払いたいと思っているのに、なかなかできないと考える毎日ですね」

 それは日々、守るべきものが増えてきた証でもあるのだろう。今、俳優として大切にしていることを聞くと、「私生活!」と即答する。

「20代は、ないがしろにしてきたんです。(2019年に一般男性と)結婚したこともあって、いかに自分が家事を怠ってきたかを思い知りました。20代の頃には、所作指導の先生から『あなたは料理しないねぇ』と言われたこともありました(笑)。今の方ができることは増えているけれども、こういう日々の生活は、俳優にとっても、すごく大事だと感じています。小野さんが生きている実感を話していても、『なるほど』と思える。役者として人生がにじみ出ているのは大事だと思います」

 2007年にはNHK連続テレビ小説『ちりとてちん』のヒロインを務め、13年には映画『くちづけ』で初主演を果たした演技派。30代後半に差し掛かって、仕事へのスタンスも変化してきた。

「20代の頃は、絶対に女優として人生を全うするんだっていう風に思っていたんですけど、今は細く長く続けられたらいいなと思っています。他のことにも目を向けてみたい。私には、趣味がないので、好きを増やしていけたら、きっといろんな新たな自分の知らない気持ちにも気付けるのではないかと思っています」

 最近、好きになったのはテニスだ。

「夫の影響でテニスを見るのも、やるのも好きになってきました。結婚生活って随分大きいですね。夫は、自分とは全く違う価値観を持っている人なので、すごく面白いです。とても新鮮で影響を受けています」と貫地谷。劇中では、共演者の鷲尾真知子(74)からも刺激を受けたそうで、「私が尊敬する人はとても愛のある方が多い。私も愛や家族を大切にしていきたいなと思いました」と話した。

■貫地谷しほり(かんじや・しほり)1985年、東京都出身。2002年『修羅の群れ』で映画デビュー。映画『スウィングガールズ』(04)で注目を集め、NHK連続テレビ小説『ちりとてちん』(07)で初主演を務め『エランドール賞』新人賞受賞。主演映画『くちづけ』(13)では『第56回ブルーリボン賞』主演女優賞を受賞。近年、ドラマでは『テセウスの船』(20・TBS)、『顔だけ先生』(21・フジテレビ系)・『大奥』(23・NHK)、映画では『夕陽のあと』(19)、『総理の夫』(21)・『サバカン SABAKAN』(22)・主演映画『オレンジ・ランプ』(23)などにも出演。俳優としての活動に留まらず、NHK『アストリッドとラファエル文書係の事件録』の主人公アストリッドの吹替を担当し『第十七回声優アワード』外国映画・ドラマ賞を受賞するなど声優・ナレーターなど様々な分野で幅広く活躍している。

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