読売日本交響楽団 2024/2025シーズンの聴きどころ

新たな布陣でおくる豪華絢爛なラインナップ

©読響

 読売日本交響楽団の2024/2025シーズン、常任指揮者セバスティアン・ヴァイグレ、桂冠指揮者シルヴァン・カンブルラン、指揮者/クリエイティヴ・パートナー鈴木優人、名誉客演指揮者・尾高忠明、特別客演指揮者・小林研一郎、という指揮者陣に、首席客演指揮者として、新たにユライ・ヴァルチュハが加わる。スロバキア出身のヴァルチュハ(1976年生まれ)は、パリ国立高等音楽院で学び、ナポリのサンカルロ劇場を経て、ヒューストン交響楽団の音楽監督を務めている。2011年にはベルリン・フィルにデビューし、チャイコフスキーの交響曲第1番「冬の日の幻想」を指揮した。22年8月の読響との初共演ではマーラーの交響曲第9番を取り上げ、彼の新たな解釈のもと、指揮者とオーケストラが素晴らしい化学反応を起こし、今回の首席客演指揮者のポストにつながった。5月の就任披露となる演奏会(5/19, 5/21)でもやはりマーラーを取り上げ、大作・交響曲第3番で指揮者としての真価を示すであろう。そのほか、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」にも期待したい(5/25, 5/26)。

セバスティアン・ヴァイグレ ©読響

 常任指揮者として6シーズン目のヴァイグレは、十八番のドイツ音楽中心の選曲。なかでもベルクの歌劇《ヴォツェック》(25.3/12, 3/15)の演奏会形式での上演が注目される。ベルリン国立歌劇場の首席ホルン奏者を経て、指揮者に転じ、バルセロナのリセウ大劇場やフランクフルト歌劇場の音楽総監督を歴任した彼は、ドイツ・オペラで最も本領を発揮する。《ヴォツェック》は、指揮者にとってもオーケストラにとっても演奏の難しい作品であるが、ヴァイグレ&読響なら、高いレベルで作品を再現してくれるに違いない。そのほか、生誕150年にあたるシェーンベルクの初期の傑作、交響詩「ペレアスとメリザンド」(24.6/14)、ヒンデミットの「ウェーバーの主題による交響的変容」(6/20, 6/22, 6/23)などの20世紀音楽も楽しみである。

上段左より:シルヴァン・カンブルラン ©読響/鈴木優人 ©読響/尾高忠明 ©読響
下段左より:小林研一郎 ©読響/ユライ・ヴァルチュハ ©読響 撮影=藤本 崇

 カンブルランは、マルティヌー、バルトーク、メシアンという得意の近現代プログラム(4/5)。鈴木は、古楽のオーソリティ(チェンバロやオルガンの名手)であると同時に、作曲家(2023年に読響創立60周年記念委嘱作品「THE SIXTY」を発表)としても活躍する才人。ベリオとモーツァルト(12/3)、ソッリマとベートーヴェン(25.3/20, 3/22, 3/23)という、古典と現代を組み合わせたプログラムを披露する。なかでも鈴木自身の補筆校訂によるモーツァルトの「レクイエム」は注目だ。尾高は、ショスタコーヴィチの交響曲第5番(25.2/27)で、小林は、ムソルグスキー(ラヴェル編)の組曲「展覧会の絵」(24.8/24, 8/25)で、円熟の演奏を聴かせてくれるだろう。

左より:上岡敏之 ©読響 撮影=藤本 崇/ローター・ツァグロゼク ©読響
マクシム・エメリャニチェフ ©ELENA BELOVA/マキシム・パスカル ©読響

 読響との共演を重ねる、上岡敏之、ローター・ツァグロゼクの登場もうれしい。上岡は、ショスタコーヴィチの交響曲第11番「1905年」(25.1/21)を披露。2019年にブルックナーの交響曲第7番で名演を繰り広げたツァグロゼクは、続いて第5番(25.2/7)を取り上げる。

 そのほか、古楽アンサンブル「イル・ポモ・ドーロ」の首席指揮者を務め、バロック・モダン両方のオーケストラを指揮し、鍵盤奏者としても活躍する若き鬼才マクシム・エメリャニチェフの登場は、聴き逃せない。シューベルトの交響曲第8番「グレイト」(24.9/5)、リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」(9/11, 9/13)などを指揮。また、現代音楽での活躍が著しいマキシム・パスカルがストラヴィンスキーの「春の祭典」(6/28, 6/30)を振るのも楽しみだ。

左より:角野隼斗 ©RyuyaAmao/フランチェスコ・トリスターノ ©Greg Massat
マハン・エスファハニ ©Kaja Smith

 新しい作品では、角野隼斗とフランチェスコ・トリスターノをソリストに招いて、ブライス・デスナーの「2台のピアノのための協奏曲」(指揮:ヴァイグレ 6/20, 6/22, 6/23)が日本初演されるのが興味津々。ほかに、ミロスラフ・スルンカのチェンバロ協奏曲(独奏:マハン・エスファハニ、指揮:エメリャニチェフ 9/5)の日本初演もある。

 新しく優秀なメンバーも加わり、ますます演奏水準を上げている読響は、バロックから現代の音楽まで、幅広いレパートリーで、それぞれの時代に合った最良の演奏を聴かせてくれるに違いない。
文:山田治生
(ぶらあぼ2024年2月号より)

問:読響チケットセンター0570-00-4390 
https://yomikyo.or.jp
※2024/2025シーズンの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。