元バレーボール日本代表 大山加奈さん
一病息災
[元バレーボール日本代表 大山加奈さん]椎間板ヘルニア(5)全盛期の感覚は戻らず
2009年3月、Vリーグの試合で484日ぶりにコートに立った。前年の8月に手術を受け、リハビリを続けてきた。もう痛みはまったくなかった。
「最初は3割ぐらいの力で」と指示されていたが、再びスパイクが打てた時は、泣きそうになるぐらい幸せだった。しかし、本格的に試合に出るようになるにつれ、全盛時の感覚が戻らないことに、もどかしさがあった。
09年12月、試合前の練習で痛みを感じた。診察の結果は炎症。少し休んでリハビリをすれば、復帰できるレベルだと診断された。
「でも、もう、心が折れちゃいました」。二度と試合に出ることはなかった。
高校の恩師だけは、手術後、異様に明るく振る舞う姿に、逆に危機感を持っていたことを、後から知った。
10年6月、現役を引退。コメントの発表だけで記者会見は開かず、逃げるように実家に戻った。両親の「加奈を誇りに思っている。胸を張って帰っておいで」という言葉に、気持ちが吹っ切れた。
今年は東京オリンピック。「選手はいろんな葛藤を抱えていると思うけど、あまり考えずに、自分のためにプレーしてほしい」と思う。
けがとの闘いだったバレーボール人生について、講演などで話す機会も増えた。「自分のような、つらい経験をする子どもが出ないように。全員が幸せと思えるバレー界をつくりたいです」
(文・田村良彦、写真・川口正峰)
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元バレーボール日本代表 大山 加奈さん(35)
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