『ギニーピッグ3　戦慄！死なない男』（1986）悪名高いこのシリーズですが、この作品はコメディです！

　ギニーピッグというと一般的には『ギニーピッグ　悪魔の実験』と『ギニーピッグ2　血肉の華』に代表される殺伐とした暴力と疑似スナッフ映像満載の悪名高い作品を想像される方が多いでしょう。　しかしそれには誤解があり、上記の2作品の残虐性が突き抜けているだけで、『ギニーピッグ3　戦慄！死なない男』『ギニーピッグ4　悪魔の女医さん』などにはどこかコミカルな描写が多い。というか完全に悪趣味なコメディなのです。　特撮シーンも上記2作品以外は強烈なシリアス路線を継承せずに作り物であることがすぐに分かるような出来に仕上げています。実際、幼女連続殺人犯の宮崎勤が所持していたのは『ギニーピッグ4　悪魔の女医さん』であり、シリアス路線の作品ではありません。

　しかしシリアス路線の作品を所持していたとしたほうがよりセンセーショナルな話題になるために、今も昔もくだらない民放マスコミがギニーピッグ・シリーズすべてに悪名を浴びせたにすぎない。　ただシリーズ中でもかなりマニアックな『ギニーピッグ4　悪魔の女医さん』を持っていた彼がより有名で、レンタル店でも気楽に借りられた『ギニーピッグ　悪魔の実験』と『ギニーピッグ2　血肉の華』を見ていないはずはないので、現在のように規制されるのもやむを得ない。　ただ海外の事情は日本とは異なり、アマゾンでも一時は外国盤のリージョン・フリーの商品が気軽に買える状況にはなっていました。しかしながらあのシリーズのボックス・セットを自宅の本棚やDVD収納棚に置ける人がどれだけいるかは疑問です。

　ぼくが見たのも大昔にレンタルで借りたのと、友人が数年前にリージョン・フリーの海外版を見せてくれたときの二回だけです。アタマに学校の先生が使う鉄の三角定規が突き刺さっているジャケットなんて、お笑い漫画の世界でしか見たことはない。　これはあくまでもジャケット用のスチール写真であり、作品本編にはこのような描写は出てきません。ボールペンを腕に突き刺して貫くシーンや内臓を一つ一つ抜き取っていくシーンなどグロい描写なのですが、コミカルな台詞ばかりなので恐い感じは全くありません。　出演者は主にWAHAHA本舗でまとめられていて、今では有名な柴田理恵や佐藤正宏が出ています。久本雅美も『ザ・ギニーピッグ　マンホールの中の人魚』に出演していました。たぶん彼女たちのプロフィールからは抹殺されてしまっているでしょうが、カルト映画が好きな人たちの記憶からは消えることはない。　内容は自殺志願の男が死のうとしても死ねずに、自分の身体をバラバラに切り刻んでいくというシュールな展開を見せ、共演に本番女優EVEを起用していました。死にたいのに死ねないゾンビになってしまうのは哀れではあります。特撮パートは頑張っているのだが、悪趣味なお笑いを狙っていて、夜中に仲間で見たら、けっこう笑えるのかもしれません。　自身の身体を切り刻んだ末に首だけになってしまってもまだ死ねず、会社の同僚だったEVEを驚かそうとして首だけになった彼は凄むのですが、彼女は首だけの彼にちっとも驚かずに、あまりの部屋の汚さに驚く。生首と彼女の対話はまさにギャグであり、「大腸とってもだいじょうぶ！」などというしょうもないギャグを飛ばしまくる。　

　実際、ぼくは大学生のときに小学校の夜の警備のバイトをしていた友人がいたので、他の友人と遊びに行き、視聴覚室でこれを見ました。あまりにもアホな展開が続くので、「ギニーピッグって、こんなんちゃうやんなあ！？もっとえげつなかったよなあ？」と言いながら、しゃべっていました。　　ただ、ギニーピッグ・シリーズ、特に残虐路線の『ギニーピッグ　悪魔の実験』『ギニーピッグ2　血肉の華』はどれだけ隠そうとしても、日本ホラー映画史上、重要な位置を占める作品群であることは確かです。『SAW』などが普通に上映し、地上波でも放送する感覚を持っている日本のテレビ局に本シリーズを封印する権利はない。　基準が曖昧で叩きやすいところを叩いているだけであろう。イジメの論理をもっとも体現している偽善的な態度にはいつも疑問を感じる。　それはさておき、すべての作品の封印をそろそろ解いてもらいたい。買おうとは思わないが、レンタルで復活したら、懐かしみながら見ようと思います。　アマゾンなどでもVHSが買えるようですし、ヤフオクとかでもそう高くはない値段で取引されています。マニアがけっこう探し回っているのは『メイキング・オブ・ギニーピッグ』のようです。見たことがない方が多いようなので、今度また記事にしていきます。総合評価　58点