“母は強し”じゃなくてもいい。型に縛られない、佐藤ありさとしての生き方【インタビュー後編】_1

yoiで約3年ぶりのメディア出演が実現したモデル・佐藤ありささんのインタビュー後編。モデルとしての華々しいキャリアから離れてドイツに移住した理由と葛藤、感情の揺らぎと向き合いながらセルフケアを取り入れる日々についてなどたっぷりと語っていただいた前編に続き、インタビュー後編をお届けします。妊娠・出産を経て変化した体と心、そして、モデルとしても母としても“自分らしい道”を模索しつづける思いについて教えてくれました。

モデル

佐藤ありさ

1988年9月20日、北海道生まれ。2005年『ミスセブンティーン 2005』を受賞し、モデルデビュー。『Seventeen』『non-no』『MORE』と数々の女性誌でカバーを飾るトップモデルとして人気を博し、女優やタレント活動にも活躍の幅を広げる。2016年7月に結婚、2017年に長女を出産してドイツへ移住。2021年に長男を出産。

母親になってからのほうが、泣くことも悩むことも増えた

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――2017年に長女を、2021年には長男を出産された佐藤さん。妊娠や出産という経験はどんな変化をもたらしましたか? 

子どもはずっと欲しかったのでとても幸せな経験でしたが、自分が「母親」だっていう実感はあまりなかったというか、今でもちょっと不思議なんです。もちろん、命を育てている責任感はありますが、私が子どもを守っているというより、子どもは大切な仲間みたいな感覚。娘とは大人気なくケンカしたりしちゃいますし(笑)。

「母は強し」ってよくいわれますが、私の場合は全然そうじゃない。特に、第二子の息子を出産したあとの1〜2カ月は、なかなか寝てくれなかったので睡眠不足が深刻だったのと、子どもの命を守らなきゃいけない責任が一人のときより倍になってのしかかってきたこともあり、精神的にとても大変な日々を過ごしました。仕事から帰ってきた夫の顔を見た瞬間、私が大泣きしてしまったこともあったくらい。母親になってからのほうが泣くことも、悩むことも増えました。

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――“母親はこうあるべき”など、肩書にまつわるイメージにとらわれて苦しんだりすることは、子育てに限らずあるかもしれませんね。

本当にそう。「自分はなんてダメなんだ」って落ち込むことはたくさんあるし、今は特に、二人育児のバランスに悩んでいます。ある日、長女から「ママは○○ちゃん(自分の名前)のこと嫌いになったの?」と聞かれたことがあったんです。まだ乳児の息子にどうしても手がかかってしまって、言葉では娘に「大好きだよ」と毎日伝えていても、愛情が十分に伝わっていないのかもしれないと、申し訳ない気持ちでいっぱいになりました。一方で、娘も私が必死なのがわかっていて、私が逆に娘になぐさめられちゃったりして。「母親」のイメージや型にはまっていくのではなく、自分らしい母親像を今も模索している最中です。

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――モデルという仕事や妊娠、出産など、ご自身の体と向き合いつづけてきた佐藤さんが考える体との向き合い方は?

自分のなかで“理想の自分”を思い描いていても、体型や見た目は変わっていくし、思い通りにはいかないもの。出産にまつわることでいえば、産後はなかなか体重が戻らなかったし、帝王切開の傷あともあります。でも、そんな傷あとも「二人はここから出てきたんだよ」と子どもたちに見せてあげられるし、顔にシワができてもそれだけ表情豊かに人生を歩んできた証し。ケアできることはしながら、自分の変化を楽しんでいきたいと思っています。

母としてだけでなく、モデルとしての姿も子どもたちに見せていきたい

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――今回、撮影しながら「モデルとしてではなく、佐藤ありさとしてカメラの前に立つのが新鮮」とおっしゃっていました。息子さんとの共演もありましたが、いかがでしたか?

佐藤ありさ=笑顔の印象があるとよく言っていただきますが、生き方で表情って変わると思うんです。だから、今まで経験してきたことを経て、今日の撮影で自分がどんな表情で写るのかを私自身も楽しみにしていました。きっと今まで見せたことのない佐藤ありさになると思うし、そんな新しい自分を自分でも見てみたくて。

息子との撮影はちょっぴり落ち着かなかったけれど、また新しい経験になりました。子どもたちにも、仕事の写真はできるだけ見せるようにしているんです。母親としての私だけでなく、モデルとしての姿勢を見せていきたい。だから、娘は私がどれだけこの仕事を愛しているかをよくわかってくれていて、家でトレーニングしているときなんかは応援してくれたりするんです(笑)。

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――モデルとしての長いキャリアのなかで、支えにしてきた言葉などはありますか?

子どもの頃から両親によく言われていた「初心忘るべからず」という言葉が、いつも私の指針になっています。何事も、やるって決めたときの気持ちを忘れたくない。その道の途中で壁にぶつかったときは、まわりの人たちに相談したりしながらも、ごまかしたり逃げないようにしています。そうすることで、最終的にその壁を乗り越えたときに、人生の糧となる経験が得られたり、次への自信につながると思うから。

まわりを明るく照らす“太陽のような人”でありたい

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――今回、こうして「ありのままの私」について話していただいたことで、モデルとして見せる笑顔だけでない佐藤ありささんの葛藤や自分との向き合い方を深く知ることができました。最後に、このインタビューを読んでいるyoi読者にメッセージをお願いします。

自分らしく生きるってすごく難しいと思います。私自身、今回お話ししたような数々の経験をしてきたとはいえ、日々自分が成長できているかどうかはわからないというのが正直な気持ちです。でも、ひとつ心に決めているのは「太陽みたいな人でありたい」ということ。私を支えてくれる人、応援してくれる人、すべての大切なまわりの人たちを明るく照らせる人でいたいんです。

だからこそ、モデルとしても、母としても、“自分らしい方法”を探しつづけることをあきらめたくないと思っています。すぐに正解は見つからないかもしれないけれど、今回、yoiのおかげで「エンパワメント」という素敵なキーワードにも出合えました。時にまわりの人から背中を押されながら、そして私も誰かの背中を押せるように、皆さんと一緒に自分と向き合いつづけていきたいと思います。

撮影/Sophie Isogai(kiki inc.) ヘア&メイク/河嶋 希(io) スタイリスト/小泉 茜 企画・文/高戸映里奈(yoi)