ブランディング事業を手掛けるインターブランドは2022年11月3日、グローバルのブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2022」トップ100を発表した。注目は30%以上の成長を見せた「Microsoft」(2位)、「Tesla」(12位)、「Chanel」(22位)、「Ferrari」(75位)、「LEGO」(63位)。総合ランキングは「Apple」が10年連続1位となり、「Microsoft」(2位)「Amazon」(3位)「Google」(4位)と、デジタル関連銘柄が引き続きブランド価値を高めた。

グローバルのブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2022」で、Microsoftのブランド価値成長率が3割を超え、2位に(写真/Shutterstock)
グローバルのブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2022」で、Microsoftのブランド価値成長率が3割を超え、2位に(写真/Shutterstock)

 このランキングはグローバルに事業展開を行うブランドを対象に、そのブランドが持つ価値を金額に換算してランキング化したもの。算出のポイントは3つ。1つ目は財務分析で、将来的な収益性の高さを重視する。2つ目がブランドの収益貢献度だ。ブランドが将来の収益に与える影響力で評価する。3つ目は「ブランド強度」と呼ぶ指標。ブランドによる収益の将来の確実性を評価する。

 ランキングのトップ20は以下の通り。1位は「Apple」でブランド価値は前年比18%増の4822億1500万ドル。2位は同32%増(2782億8800万ドル)の「Microsoft」、これに3位の「Amazon(2748億1900万ドル)」が続く。上位3ブランドでトップ100ブランドの合計金額価値の34%、上位10ブランドで53%を占めるなど、100ブランドの合計金額価値が前年比16%増で過去最大の成長率となる中、トップブランドによる寡占の傾向は強まっている。

Best Global Brands 2022の上位20ブランド。大手デジタルプラットフォーマーの強さが際立つ
Best Global Brands 2022の上位20ブランド。大手デジタルプラットフォーマーの強さが際立つ

 中でも注目は、30%以上の成長を見せた「Microsoft」(2位)、「Tesla」(12位)、「Chanel」(22位)、「Ferrari」(75位)、「LEGO」(63位)だ。

ブランド価値の成長率が高かった上位5ブランド
ブランド価値の成長率が高かった上位5ブランド

 Microsoftは企業がデジタル変革を加速させる中、タイムリーにビジネス向けアプリケーションを提供し、企業の効率化やクラウド化、コラボレーションを支援。ゲームがメタバースプラットフォームの発展に重要な役割を果たすと考えられる中、米ゲーム大手のアクティビジョン・ブリザードの買収を発表した。

 Teslaは半導体危機が続く中でも、業績が好調。明確なビジョンと野心を持つCEO(最高経営責任者)への支持率が高く、強い需要が維持されている。2021年にブランド価値を前年から184%増加させるという桁違いの成長を記録したのにもかかわらず、22年も3割超の成長を見せた。

 Chanelの成長要因の一つは、新しいアンチエイジングスキンケアライン「No.1」の展開。さらにブランド初の香水展示会を開催したり、限定ウオッチを発表したりなど、さまざまな形でブランド体験を提供している。気候変動などのESG(環境・社会・企業統治)への積極的な取り組みも高く評価されているという。

 Ferrariはエンジンシリーズの進化やハイブリッド化、電動化のレベルアップなどのイノベーションを提供すると同時に、正規販売店を通じて顧客との強い関係性を維持。製品やサービス、イベントによる体験を通して顧客の満足度を総合的に評価するシステムがあり、新型車の販売ごとに調査を実施してVIPを顧客に持つラグジュアリーブランドとして高い共感力を維持している。

 LEGOは製品イノベーションや店舗での体験、デジタル化、サステナビリティー(持続可能性)に投資し続け、顧客との関係性を強固にしながらビジネスの機会を創出。スーパーマリオをレゴブロックにした「レゴスーパーマリオ」やライブ配信イベント「LEGO CON」など、物理的な遊びを維持しながらデジタル時代に対応する方法を見いだしている。

 成長率の高かった5ブランドについて、インターブランドジャパン(東京・渋谷)の並木将仁社長は「同じように高い成長率を記録しているといっても、その意味合いは大きく異なる」という。

 「TeslaやFerrari、LEGOは昔のAppleのように強い商品がブランドをけん引しており、強いブランドの古典的なプロセスを踏んでいる。一方、MicrosoftやChanelはコーポレートブランドが、プロダクトブランドの売り上げを高めるためではなく、なぜブランドが存在するかを伝える手段として機能している。特にMicrosoftは戦略的な買収を仕掛けながらも、CEOの発信などによって企業のパーパス(社会的存在意義)をうまく伝えている」(並木社長)

 一方、トップ100に入った日本のブランドは「Toyota」(6位)、「Honda」(26位)、「Sony」(39位)、「Nissan」(61位)、「Nintendo」(68位)、「Panasonic」(91位)、「Canon」(97位)の7つで、目立った変化はなかった。

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