生成AI(人工知能)などのテクノロジーが民主化され、個々のキャリア形成や企業経営に大きなパラダイムシフトが起きている。この変化の大きい「AI時代」を生き抜いていくためには何が必要なのか。米シリコンバレー発のAI企業パロアルトインサイトCEO(最高経営責任者)の石角友愛氏が、ビジネスの第一線で活躍する経営者や専門家との対談を通して「AI時代を生き抜く人材」のヒントを提示する。2024年3月31日に放送作家を辞めることを宣言している鈴木おさむ氏との対談後編は、行動力の源泉となっている好奇心や生成AIがメディアに与える影響などについて議論した。(対談は24年1月19日)

2024年3月で放送作家を辞めると宣言した鈴木おさむ氏(左)とパロアルトインサイトの石角友愛氏(右)が対談した
2024年3月で放送作家を辞めると宣言した鈴木おさむ氏(左)とパロアルトインサイトの石角友愛氏(右)が対談した

順調なときこそ、うまくいかないときに備える

石角友愛氏(以下、石角) これからのAI時代を生き抜いていくためには、リスキリングは欠かせないと私は思っています。書籍を出したり啓蒙活動をしたりする中で、リスキリングの最初の一歩は「今持っている常識などの前提条件を手放すこと」が重要だと考えるようになりました。

 これまでのキャリアを塗り替えたいのなら、腹をくくり、学べる環境をつくることが大事です。それだけの強い思いがあると分かれば、周囲もきっと応援してくれるはずです。鈴木さんは辞めるという宣言でまさにその覚悟を示されました。

 新著『仕事の辞め方』(幻冬舎)の中で、辞めた後は「若者を応援したい」と書かれていましたが、具体的なプランはもう決めているのですか。

鈴木おさむ氏(以下、鈴木) ええ。でも具体的な内容を決めたのは親しい人に辞めると宣言した後ですね。辞める前に次を決めていると本気度が伝わりにくくなると思い、辞めることを伝えた後、知り合いに「どんな仕事が向いていると思う?」と意見を聞いて選びました。

石角 そうだったんですね。ずっと前から放送作家以外にやりたいことがあったのだと思っていたので、経緯を聞いて驚きました。そのためのリスキリングも進めているのですか。

鈴木 以前から少し携わってきていることではあるので、全体像はなんとなく理解しています。これまでの仕事の経験が生かせる部分はかなりありそうなので、そこは活用しつつ、足りない部分はしっかり勉強していくつもりです。

石角 これまで獲得したスキルを横展開できるのはとてもいいですね。私はこれからのAI時代を生き抜いていくためには専門スキルである「ドメインスキル」と、リスキリングで身につけた「スパイクスキル」、そして両方を統合する「マスタースキル」が必要だと考えています。

 鈴木さんはテレビ業界で培ってきたドメインスキル、新しいビジネスにつながるスパイクスキルを持っていて、それらをまとめて新しいビジネスを始められるのですね。その統合するスキルはどのように身につけたのですか。

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