音声マーケティングを考えるうえで避けて通れないのが「店内放送」だ。店内でBGMをかけ、音声広告を流す外食店や小売り店は数多い。店内放送を実施する日本マクドナルド(東京・新宿)と、マクドナルドをはじめ多くの企業を支援するUSEN(USEN-NEXT GROUP)(東京・品川)それぞれの取り組みから、店内放送をマーケティングに有効活用する手立てを明らかにする。
「店内で食事をされているお客様がイヤホンを外し、スマートフォンの画面などを見るのをやめて店内放送に耳を傾けてくれるくらいになること。そして出演されるアーティストの方にマクドナルドの店内放送で自分の音楽がかかると『紅白出場も夢じゃない』といわれるほど音楽の登竜門的な番組になることが目標」
日本マクドナルドで、店内放送を担当するマーケティング本部ナショナルマーケティング部マネージャーの手嶋克宏氏はこう語る。
マクドナルドほどの企業であれば、音声を用いた認知度アップは今さら必要ないように思える。にもかかわらず、わざわざ店内放送専用チャンネルまで設けている。これは、世界のマクドナルドの中でも珍しいという。なぜこれほどまでに店内放送にこだわるのか。
店内体験向上のための3つの工夫
もともとマクドナルドでは、各店舗の店長が独自に専門企業と契約し、店内放送で流すチャンネルや楽曲のラインアップを決めていた。洋楽好きの店長の店では洋楽がよく流れ、さらには朝昼晩とチャンネルを変える店もあるなど、店舗によって放送はまちまちだった。
全店舗で店内放送の内容を統一することになったのは、2015年のこと。ナショナルチェーンブランドとして、店内放送もマーケティングに積極的に活用していこうと、マクドナルドのマーケティング部と、前身である大阪有線放送社時代から60年近く店舗BGMの配信サービスを手がけてきたUSEN(USEN-NEXT GROUP)が協力して、店内放送専用チャンネルで放送する内容を準備することになった。
マクドナルドが全店で内容を統一して店内放送をする目的は、冒頭の手嶋氏の言葉通り、2つある。1つは店舗体験の向上だ。流れるBGMを聞くことで来店客に快適さを感じてもらい、場合によっては曲自体にも興味を持ってもらう。マクドナルドで心地よい曲を聞けたと感じてもらえれば、それが次回の来店動機へとつながるからだ。
もう1つは、目的来店の創出だ。放送する楽曲を手がけるアーティストのファンに働きかけること、そしてマクドナルドに行くと最新の音楽が分かるという目的で、ファン以外にも来店してもらうことを目指している。
店舗体験を向上させる鍵を握るのが、店内放送のほとんどを占めるBGMだ。来店客に快適さを感じてもらうため、主に3つの工夫を施した。
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