コンビニエンスストア9チェーンの2023年2月末店舗数は前月から73店舗増加した。セブンイレブンが新フォーマットである“ビッグコンビニ”の新構想を明らかにするなど、将来を見据えた動きもでている。コンビニ業界を長く取材する「販売革新」副編集長(元月刊コンビニ編集長)で流通ジャーナリストの梅澤聡氏が解説する(店舗数データは23年2月末時点のもの、記事下に一覧表を掲載)。

 コンビニエンスストア(コンビニ)9チェーンの2023年2月末店舗数は5万8095店、前月から73店舗の増加。これを前年同月(2022年2月末)と比較すると59店舗のマイナスとなっている。2月末はコンビニを含む流通大手の決算期。前期と店舗数を比較すると、1年間にセブンイレブンは75店舗の増加(子会社のセブン-イレブン・沖縄を含む)、ファミリーマートは36店舗の減少、ローソンは25店舗の減少となった。

セブンイレブンは2023年2月末に2万1402店舗となった(c)shutterstock
セブンイレブンは2023年2月末に2万1402店舗となった(c)shutterstock

 コンビニ業界は10年代中ごろまで出店競争を激しく続けてきた。決算期末における計画通りの店舗数増加は必達であり、チェーン大手は毎年2月に大量に出店し、一方で閉店を抑制、決算期末後の3月に、不採算店舗をまとめて閉鎖する「数字合わせ」がパターン化していた。

 今でもその名残はある。セブンイレブンは2023年2月末に2万1402店舗となり、2月の1カ月間で79店舗を増加させている。ただし、セブンイレブンは期首予想100店舗の増加には届いていない。この100店舗には、子会社であるセブン-イレブン・沖縄の数を除外しているので、結果は前期比47店舗増加(全体75店舗増加から沖縄28店舗増加を引いた数)となる。新型コロナウイルス第7波や、建築資材の高騰など阻害要因が影響したと考えられる。

 10年代後半から、コンビニ業界は、チェーン全体の店舗数や成長ではなく、加盟店の経営改善に重点を置いてきた。経済産業省主管の有識者会議や大手メディアや世論もこれを後押しした。加盟店の安定経営なくして、コンビニ業界の持続性は厳しいとする見方である。

 チェーン本部の都合で、決算期末に向けて出店し、期首に閉店を繰り返すのではなく、年間を通して既存店の改装や立地移転といった、個々の加盟店に向き合った政策を重視してきた。期末の店舗数を競う時代ではないということだ。

 セブンイレブンは23年2月に前月79店舗増加と攻勢をかけたものの、その前月である1月には27店舗を減少しており、不採算店舗の閉鎖や、立地移転を地道に実施していると見ることもできる。

 他方、セブンイレブンの店舗数増加を地域ごとに見ていくと濃淡がある。都道府県別に前年比増加数の大きい順に並べていくと、東京31店舗(計2881店舗)、沖縄28店舗(計150店舗)、神奈川・栃木が各8店舗(順に計1491店舗・465店舗)、大阪7店舗(計1276店舗)、福岡6店舗(計1032店舗)となる。こうした傾向を見る限り、19年7月から出店を開始した沖縄を除くと、現状の成長余力は大都市圏にあることが分かる。

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