2022年7月21日にCDデビュー25周年を迎えるKinKi Kids。デビュー以来続くシングルの“オリコン初登場1位”でギネス記録を持つ彼らだが、ここ数年、カラオケで最も歌われているのは、カップリング曲として発表された『愛のかたまり』だ。コアファンには思い入れが強い楽曲だが、一般層にはそこまで知られた存在ではなかったこの曲が、ジャニーズ以外のアーティストを対象とした「カラオケ週間ランキング」でもトップ100内に入る定番になっている。その推移を追った。

 現在発売中の日経エンタテインメント!では、7月21日にCDデビュー25周年を迎えるKinKi Kidsを特集。「2人が作ってゆくジャニーズイズム」と題して彼らの特異性を深掘りし、エッジの効いた現在の活動スタイルに至る教えや制作姿勢などに迫っている。

7月21日でCDデビュー25周年のKinKi Kids
7月21日でCDデビュー25周年のKinKi Kids
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 デビュー以来続いているシングルの“オリコン初登場1位”がギネス記録としても知られている彼ら。挙げたらキリがないほどのヒット曲を持つ2人が7月27日にリリースする新曲『Amazing Love』は、作曲がデビュー曲『硝子の少年』を手掛けた山下達郎、作詞はKinKi Kidsという話題性もあり、記録を更新することになりそうだ。

 そんなKinKi Kidsの楽曲のなかで、ここ数年、カラオケで最も歌われているのが『愛のかたまり』だという事実をご存じだろうか。この曲は2001年、13作目のシングル『Hey! みんな元気かい?』のカップリングとして収録され(つまりアナログシングルでいうところのB面)、作詞を堂本剛が、作曲を堂本光一が担当したラブソング。KinKiの2人が詞曲を手掛けたこともあり、コアファンには発売当初から思い入れが強い曲だったが、それ以外の一般層には正直、そこまで知られた存在ではなかった。それが今や、ジャニーズ以外のアーティストを対象としたカラオケ週間ランキングでもトップ100内に入るほどのド定番となっている。

 本作がどのように“KinKi KidsのNo.1ソング”となっていったのか、カラオケランキング(JOYSOUND調べ)の推移を追って考察してみたい。

大きな動きがあったのは2002年と2005年

 表1は、KinKi Kidsの曲に限定したカラオケ年間ランキングでの、『愛のかたまり』(以下、『愛かた』)の推移だ。収録CDが発売された01年、『愛かた』は44位だった。ちなみに表題曲の『Hey! みんな元気かい?』は、剛主演のドラマ『ガッコの先生』主題歌としてテレビ番組で多数歌唱されたこともあり10位。しかしその翌年、『愛かた』は30以上ランクアップの13位に大躍進する。これは前年末から、彼らが出演していた森永製菓『ダース』のCMソングに採用されたことが影響したと思われる。

 以降、数ランク落とすものの、20位圏内をキープ。次に大きな動きがあったのは05年、初のトップ10入りを果たした年だ。上昇した背景には、04年末に発売されたシングル・ベストアルバム『KinKi Single Selection II』がある。『愛かた』は、カップリング曲で唯一選曲され、脚光を浴びた。

 そして06年に5位、07年に3位と、存在感をどんどん高めてゆく。07年は10周年のベストアルバム『39』の収録曲を決めるファン投票で堂々の1位にもなっている。つまり『愛かた』は、ベスト盤に選曲されることで、より多くのファンに浸透していったと言える。実際、この『39』発売以降、「好きなKinKi Kidsの曲」として『愛かた』を挙げるタレントもよく目にするように。「クリスマスなんていらないくらい/日々が愛のかたまり」という、芯を食った女性の目線の詞、その世界へと一気に引き込むメロディー。広がった共感の基盤には、圧倒的な楽曲力の高さがあったというのは言うまでもない。

2020年には“ステイホーム”の呼びかけにも

 08年以降は2位で推移していたなか(ちなみに1位は『硝子の少年』)、15年、ついにKinKi Kidsのなかで最も歌われる歌に。首位獲得の背景を探ると、14年末に発売されたオリジナルアルバム『M album』が浮かび上がってくる。このアルバムの通常盤には、再録音された『愛かた』が収録されたのだ。そのからみで、『ミュージックステーションスーパーライブ』で2人の歌唱が披露されると、改めて多くの人々の心を揺さぶった。

 15年以降は1位をキープ。そのなかでもまだ動きはあり、17年は、KinKi部門のダントツ1位に加え、カラオケ全体での年間総合ランキング100位にも初めてランクインした。この年は、バラード・ベストアルバム『Ballad Selection』への収録、MTVでの看板番組である『MTV Unplugged LIVE』や、突発性難聴で一時休業していた堂本剛の復帰ライブでの披露、音楽番組『関ジャム完全燃SHOW』(テレ朝系)での制作エピソードなど、様々な角度からスポットが当たったことが影響。ちなみに、100位前後にランクインしている2000年代の楽曲は、絢香『三日月』、ポルノグラフィティ『アゲハ蝶』、サザンオールスターズ『TSUNAMI』など、いずれもカラオケのド定番ばかり。それを考えると、いかにこの時、『愛かた』が“神曲”化したかが分かるだろう。

 20年は新型コロナウイルス禍のなか、光一がステイホームを呼びかけるために『家のかたまり』という替え歌を動画投稿すると、2度目の年間総合トップ100入り。それまではクリスマス時期に多く歌われる傾向があったが、コロナ禍以降は、まさに「クリスマスなんていらないくらい」季節を問わず、たびたび週間総合トップ100をも出入りするオールシーズン型の定番となっている。

 今や、ジャニーズの後輩が歌う名曲メドレーをはじめ、芸人の歌ネタ、はたまた店のNo.1となったホストがお客様にささげるラストソング(通称「ラッソン」)としても歌われている『愛かた』。ちなみに、KinKiの楽曲をカラオケで歌うメイン層は30代から40代なのに対し、『愛かた』は20代が圧倒的に多いのも注目ポイント(表2)。つまり、明らかにリアルタイムではない世代がこの曲を支持しているのだ。この25年間、流行にとらわれることなく、音楽と真摯に向き合ってきたKinKi Kidsだからこそ持ちえた真のヒット曲と言えるだろう。

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