今回の延長戦は玉井詩織さん! 『日経エンタテインメント!』での連載『新・ももクロ61分3本勝負』は、ももいろクローバーZのメンバーが対決する人気コラムです。日経エンタテインメント! 特設サイトでは、その“延長戦”を掲載しています。現在発売中の2月号では座長を務めた「第2回ももクロ一座特別公演」のお話や、12カ月連続でソロ新曲を発表する企画『SHIORI TAMAI 12 Colors』、そして2024年3月2日、3日に開催されるソロコンサートについて聞きましたが、延長戦ではそこに収まらなかったお話をお届けします。
――明治座で2023年11月末から9日間14公演が行われた「第2回ももクロ一座特別公演」で、玉井さんは座長を務めました。しかも第1部『CHANGE THE FUTURE! ~未来を変えろ~』は、ももクロの楽曲を歌った『ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?』(18年)と違い、今回は宗本康兵氏が作ったオリジナル曲を歌うミュージカル。
玉井 それ、私がテレビ番組で言ってしまったことが発端らしいんですよね。でも、まさか初めてのオリジナルミュージカルを明治座でやるとは、まったく予想外でした(笑)。
観客としてミュージカルを見ることはあっても、何も知らない状態だったので、ミュージカルというものを一から指導していただく形でした。セリフとしての歌い方って、ももクロのライブとは全然アプローチの仕方が違ったので、すごく勉強になりました。
――どう違うんですか?
玉井 ミュージカルはセリフを歌に乗せるから、普通に音程を取ればいいわけではなくて、音程より感情を優先させることもあるんですよ。例えば「ブレス(息継ぎ)を多めに混ぜると、聞こえ方が違ってくるよ」と言われたんです。私たちはグループで歌うことが多いので、歌うために空気を吸い込むブレスの位置をそろえることが重要な場合が多いんです。でもミュージカルは、そんなに空気はいらなくても、感情を表すためにあえて多めに吸うこともある。
私は歌に対する苦手意識が元々あって、それがトラウマみたいにずっと続いているんですよ。だからまず音程が取れればいい、感情はその後に乗ってくるものだと思っていたんですけど、歌い方でこういうふうに感情を持ってくることができるんだなって、すごく勉強になりました。
――演劇に関してももクロは『幕が上がる』でストレートプレイ、『ドゥ・ユ・ワナ・ダンス?』でジュークボックスミュージカル、『第1回明治座公演』で時代劇、そして今回はミュージカルと新しいジャンルに挑戦してきました。次に演劇に挑戦するとしたら?
玉井 23年は『熱海五郎一座 幕末ドラゴン~クセ強オンナと時をかけない男たち~』にゲスト出演もさせていただきましたが、今度はももクロの舞台でもなく、どこかの舞台にゲスト出演させていただくのでもない経験はしてみたいですね。出演者それぞれが、その舞台を作るためにいろいろなところから集まってきて、1つの作品を作り上げていく作業には興味があります。
――24年2月に上演される、高城れにさん座長の『最高の家出』のような?
玉井 いや、やっぱり私はみんなを引っ張っていくよりも、のびのびやっているほうが、たぶん自分らしさが出るなと思います。今回やってみて分かりました(笑)。
――ちなみに舞台の記者会見でも「座長として差し入れをどうするか」という話題が出てきました。玉井座長の会心の差し入れは?
玉井 第1回の佐々木彩夏座長が「マグロの解体ショー」というすごい迫力の差し入れをやったので苦戦しました(笑)。みんなの健康を考えて、体にいいお茶などを用意したんですけど、公演中に生ものを差し入れするのは難しいので、最終日に、回転ずしを差し入れさせていただきました。[※1]
ジブリ作品で好きな映画は……
――23年は12カ月連続でソロ新曲を発表する企画『SHIORI TAMAI 12 Colors』を見事完走。周囲からどんな反響がありましたか? メンバーの反応は?
玉井 メンバーには聞いてないです(笑)。(毎月出演している生放送の音楽番組)『しおこうじ玉井詩織×坂崎幸之助のお台場フォーク村NEXT』でご一緒している坂崎さんやヘイヘイ(宗本康兵)、(加藤)いずみさんに詞を見てもらうときは緊張しましたね。坂崎さんには褒めていただきました(笑)。
そうそう、人づてで聞いたんですけど、音楽に携わっている方が、私が書いた詞と知らずに、『Sepia』の詞を褒めてくださったそうです。そのお話を聞いたときは光栄だと思ったし、すごくうれしかった。
このプロジェクト自体が、ソロ曲を望んでくれていたファンの方々に届けたいと始めたもので、あわよくばファンの方よりもちょっと外側の方に届けばいいなと期待もあったんですけど、そういった業界の方に聞いていただけてお褒めの言葉をいただけたのはすごくうれしかったです。
――23年11月には、様々なアーティストがスタジオジブリの楽曲を歌うトリビュートアルバム『ジブリをうたう』で『風の谷のナウシカ』をカバーしました。どういう経緯で参加することになったんですか。
玉井 アルバムをプロデュースした武部聡志さんから声をかけていただいたんです。ジブリの作品を見て育ってきたので、参加できるだけですごくうれしかった。ただ自分が歌うならどの曲がいいんだろうという想像がつかなかったので、何曲か候補を挙げていただき、武部さんからも「この曲がいいんじゃないか」って選んでいただいて、決めた形です。
――84年の曲ですが、知っていましたか?
玉井 はい。「フォーク村」で聞いたことがありました。
――実際に歌ってみて、どうでしたか?
玉井 この曲は聴いていると、きれいなメロディーに乗せて、きれいな歌詞がストレートに伝わってくる、覚えやすい曲じゃないですか。だからシンプルな曲なのかなと思っていたんですけど、音程の幅の取り方が難しかったり、ロングトーンがあるので息継ぎが大変だったり、実際に歌ってみて難しい曲だと思いましたね。
今回、レコーディングのディレクションも武部さんがしてくださったんですが、長年のお付き合いの中で、レコーディングのディレクションをしていただくのは初めてだったんですよ。ライブではずっと一緒にお仕事をしている人のはずなのに、スタジオで会うとすごく緊張した(笑)。ただ、まったく知らない人よりはリラックスしていたんだと思うんですけど。武部さんは音楽について何も知らなかった私たちに、バックバンドの音楽監督として、音楽の楽しさを教えてくださった人なので。
――どんなディレクションがありましたか?
玉井 昔はよく「バンドより歌が先走っている」って言われました。最近は昔より注意されなくなったんですが、今回のレコーディングでも「もうちょっとゆっくり歌っていいよ」と言われましたね。
――ちなみに玉井さんの印象に残っているジブリ作品は?
玉井 うーん、何だろう。1つ選ぶなら『耳をすませば』が好きです。ジブリ作品ってファンタジー要素が入っているものが多いけれど、『耳をすませば』が描いているのは学生時代の淡い恋なので。
でも『ナウシカ』も好きです。強い女性で、動物に優しい主人公が好きなので、『もののけ姫』のサンも大好きです。
20代ラストの24年は悔いのない年にしたい
――改めて振り返ると、2023年はどんな1年でしたか?
玉井 自分としても1つ、殻を破れた年だったかなとは思います。「これをやってみたい」といったいろいろなアイデアが浮かんでくる1年でした。まだまだだとは思うんですけど。
曲を作るにしても、私の意見をすごく求めてもらった年でもあったし、自分で発言をするってことが多かった年だったなという感じもします。舞台にもゲスト出演させてもらうという貴重な経験もありましたし[※2]、自分にちょっと自信が持てた年でした。
――では、24年はどんな年にしたいですか?
玉井 個人的に“ラスト20代”の年になるので、悔いのない年にしたいと思いますね。でも、前半の半年間はまだ28歳ですけど(笑)。
明治座でもいろいろな人に背中を押してもらって、気づかせてもらったように、「自分はできない」って押さえつけないで、いろんなことにまだまだチャレンジする年になったらいいなと思います。20代で経験したことって本当にたくさんあって、その20代最後の年を、出合ったものをより育んでいける年にしたいなって思います。
写真/中川容邦
日経エンタテインメント! 2024年2月号
発売日 2024年1月4日(木)
特別定価 890円
表紙 日向坂46
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