富士通 伊東千秋副会長
富士通 伊東千秋副会長
[画像のクリックで拡大表示]

 「環境問題はCSR(企業の社会的責任)活動の領域で考えるものではない。企業のP/L(損益計算書)やB/S(貸借対照表)にかかわる重大な問題として、もっと本気で対策を考えなければならない」。富士通の伊東千秋副会長は2008年7月2日、東京都内で開催中の「IT Japan 2008」の講演で、ICTを利用した環境問題対策の重要性を強調した。

 伊東副会長は講演の冒頭、今年1月にスイスで開催されたダボス会議(世界経済フォーラム)に出席した際の衝撃を語った。同会議で話題になった「人口×生活水準=資源(食料・エネルギー)×生産効率」という数式を示し、「先進国の生活水準を維持する世界人口の上限は30億人。しかし、人口はすでに60億人を超えている。資源も無限にあるわけではない。この数式をイコール(=)にするには、技術革新と意識の変革、そして環境問題の解決が急務」と声高に訴えた。

 我々が直面している環境問題の代表例が、二酸化炭素の排出量増加だ。IT業界が排出する二酸化炭素量は全体の2%といわれるが、「残りの98%を削減するために、ICTを生かさない手はない」(同)。

 例えば、富士通がシステム構築を手がけた地方銀行では、ICTを使ってワークフローを見直すことで、結果的に16%の二酸化炭素排出量を削減できた。ある運輸業者にデジタル・タコグラフを導入したところ、エンジンも何も変えずに最大で15%も燃費を向上した(二酸化炭素排出量を削減した)という。ほかにも、「農業や漁業での適用など様々な分野で、ICTを活用した二酸化炭素の排出削減事例が登場し始めている」(同)。

 伊東副会長は「従来のICT活用領域を飛び出し、もっとリアルなビジネスとかかわることで、二酸化炭素の排出量を削減できる。今、環境問題を解決しないと、人類の存続さえ危ぶまれている。環境問題対策としてのICT活用において、日本は世界をリードしている。環境問題はビジネスのチャンスでもある。この分野では世界のどの企業にも負けないという気概で、富士通は世界で戦いたいし、環境問題に真っ向から立ち向かう」と語った。