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今回は、霊長類、なによりヒトで特に発達している大脳新皮質を扱います。
大脳新皮質は大脳の一部です。大脳は、大脳半球(cerebral hemisphere)という左右2つの部位から成っています。いわゆる右脳と左脳にあたります。両者は完全に分離しているわけではなく、脳梁(corpus callosum, CC)で接続されており、相互に情報をやり取りしています。それぞれの大脳半球の表面を覆うのが大脳皮質(cerebral cortex)で、その内部には大脳基底核(cerebral basal ganglia)が収まっています。
大脳皮質はさらに次の3つに分けることができます。(1)新皮質(cerebral neocortex)。大脳の表面にある6層構造を持つ薄いシート状の皮質で、今回のトピックです。(2)古皮質(paleocortex)。梨状前皮質など。霊長類では退化してあまり見られません。(3)原皮質(arichicotex)。海馬体などを構成しています。つまり、霊長類の脳として思い浮かぶ、あのしわしわの器官は、大脳新皮質の部分ということになります。
大脳新皮質の役割は、ものを知覚したり、運動を制御したり、未来の予想、計算、推理など。まさに知性を司るといっていい器官です。例えば、大脳新皮質の視覚を処理する部分が、外傷や、脳内出血、脳梗塞などによって不可逆的に破壊されると、網膜や視神経はまったく問題がないのにもかかわらず、ものが見えなくなってしまいます注1)。
四つの「葉」で処理を分担
まずは大脳新皮質の見た目から説明します。大脳新皮質は、第2回で述べたように厚さが1mm~3mmと薄いシート状の組織で、約2500cm2の面積があります。新聞紙1枚を広げたくらいの大きさで、相当な面積があります。これが、しわしわに折りたたまれて頭蓋骨の中に格納さるわけです。畳んだときに、表面に出ている部分を脳回あるいは回(gyrus)、逆に奥に入り込んでいった部分(外からでは直接見えない部分)を脳溝あるいは溝(sulcus)といいます。特に目立つ、あるいは重要な脳溝には名前がついています。中でも中心溝とシルヴィウス溝は重要です。
大脳新皮質は、脳溝による区分けと、それぞれが担う機能をもとに、大きく4つの領域に分かれています(図1)。これらの領域のことを大脳葉(lobe)と呼び、場所に応じて前頭葉(frontal lobe)、頭頂葉(parietal lobe)、側頭葉(temporal lobe)、後頭葉(occipital lobe)の4つがあります。前頭葉は物事の判断や計画に関わり、頭頂葉は運動と皮膚感覚、側頭葉は見たり聞いたりしたものが何かの認識、後頭葉は視覚の処理をしています。それぞれの細かい機能や仕組みは、別の回で触れることにします。