記者:今回の合意で,東芝からのアドバンテストへの注文はどの程度増えるのか。
大浦氏(右):注文が急増することはないと,東芝さんから釘を刺されている。これまで通り,競合ときちんと比べると。
西室氏(左):競合に勝てるだけのお力をアドバンテストさんはお持ちです。

 アドバンテストと東芝,東芝の関係会社であるアジアエレクトロニクスは,アドバンテストの子会社が,アジアエレクトロニクスの半導体テスタ部門の資産を譲り受けるとともに,関連従事者を継承することで,基本合意に達した(リリース文)。24日午後,東京都内で,アドバンテスト社長の大浦溥氏,東芝社長の西室泰三氏らが発表した(写真)。

今回の半導体テスタ事業譲渡の話は,東芝がアドバンテストに最初にもちかけた。「半導体産業では,ファウンダリの台頭など,大きな変化が起きている。それにあわせて,東芝は,半導体事業を積極的に構造改革している。その効果はある程度見えてきたが,さらなる選択と集中は必要である。アジアエレクトロニクスの半導体テスタ事業は,このまま単独で進めても,成長には限界があると判断し,半導体テスタで国内最大手企業にお任せすることにした。東芝はデバイス事業への集中を図る」(西室氏)。

一方,その提案を受けたアドバンテストは,「そう悪くはない話なので,今年半ばから話を詰めてきた」(大浦氏)。アドバンテストは,アジアエレクトロニクスの特定の技術ではなく,テスタ開発技術者に注目したという。速戦力のある技術者を得ることで,通信用LSI向けテスタなど,欧米メーカが先行している分野の強化を図る。

すでに,アドバンテストとアジアエレクトロニクスの技術者は5月ころから技術交流を重ねており,その成果の製品を2000年半ばに発表する予定という。ただし,この製品が通信用LSI向けかどうかについては,記者発表会では明らかにしなかった。

開発技術者ら225人が移る

基本合意の内容は次の三つ。
(1)アドバンテストは,アドバンテストの子会社において,東芝の関係会社であるアジアエレクトロニクスの半導体テスタ部門の資産を譲り受けるとともに,関連従事者を継承する。当該子会社は現存する100%子会社であるが,社名については記者発表会では明かさなかった。譲渡に伴いアドバンテストが拠出する金額は70億円程度。

(2)譲渡・継承期日は2000年4月とする。現在,アジアエレクトロニクスは,東芝グループとニッピグループの折半出資になっているが,2000年3月末までに,ニッピグループの持分の全株式を買い取り,東芝の完全子会社にして上で,譲渡する。

(3)譲渡・継承内容は以下の通り。
・アジアエレクトロニクスが現有する半導体テスタ部門の設備や特許など,関連資産。
・同社の半導体テスタ部門の業務従事者のうち225人。
・同社の子会社である九州アジアエレクトロニクス株式会社の全株式

譲渡内容の詳細については,2000年2月をメドに両社協議の上決定する。なお,上述の225人は開発部門の従業員が中心という。アジアエレクトロニクスは売上げの9割が半導体テスタ関連。2000年4月以降は,エンジニアリング事業に特化する計画。