スイスSTMicroelectronics(STマイクロエレクトロニクス)は、SiC(炭化ケイ素)関連の合弁企業を中国重慶に設立する契約を中国の三安光電(Sanan Optoelectronics)と締結した()。2023年6月7日(スイス時間)に発表した 日本語ニュースリリース 。この合弁企業では、三安光電が供給する直径200mmのSiCウエハーを使ってSiC製品を製造する。2025年第4四半期に生産を開始し、2028年にフル稼働することを目標にしている。

図 左はST、右は三安光電のロゴ
図 左はST、右は三安光電のロゴ
(出所:STMicroelectronicsのニュースリリース)
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 この合弁企業では、ST独自のSiC製造プロセス技術を使い、ST向けのSiC製品のみを製造する。すなわち、STの専用SiCファウンドリーとして稼働し、中国顧客が電気自動車(EV)や産業機器などに使うSiC製品を造る。なお三安光電は同合弁企業へ供給するために、200mmのSiCウエハーの製造施設を新設する。合弁企業の設立費用は、今後5年間の設備投資額である約24億米ドルを含め、総額約32億米ドルと見込む。これらの費用は、STと三安光電の出資に加え、地方自治体の支援や融資によって調達される予定である。

 STの社長兼最高経営責任者(CEO)であるJean-Marc Chery氏によると、新設予定の三安光電の200mm SiCウエハー製造施設、合弁企業による前工程工場、および深センにあるSTの後工程工場を組み合わせることで、STは中国において完全垂直統合型のSiCバリューチェーンを確立できる。同社は「2030年までにSiC製品の売上高を50億米ドル以上にする」という目標を掲げており、設立する合弁企業がこの目標達成に寄与するという。

 三安光電は中国最大のLEDチップメーカーとして広く知られている。最近では、SiCの成長性に着目し、多数の特許を取得するなど、戦略的な動きをしている。特許などの調査/コンサルティング会社であるフランスKnowMade(ノーメイド)は、中国でSiCを製造するには、何らかの形で三安光電と手を組む必要があるだろうという。三安光電CEOのSimon Lin氏は、「今回の合弁企業の設立は、SiCファウンドリーとしての当社の目標達成に向けた重要なステップである」と述べた。

 なおSTによれば、今回の合弁企業によるプロジェクトの完了には、規制当局の承認という条件がある。