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 トヨタ車体は2023年10月25日、「ジャパンモビリティショー(JMS)2023」(一般公開:2023年10月28日~11月5日、東京ビッグサイト)のプレスデーで、商用車「ハイエース」の電気自動車(EV)版の試作車を公開した。ハイエースは市場によって仕様が異なる。今回の試作車は、欧州やオーストラリアで販売している海外仕様をベースとした。その理由を開発者に聞いた。

ハイエースのEV版試作車
ハイエースのEV版試作車
よりホイールベースの長い海外仕様をベースとした。(写真:日経Automotive)
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国内仕様のハイエース
国内仕様のハイエース
キャブオーバーのためホイールベースは短い。(写真:日経Automotive)
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 国内仕様は、エンジンを前席下に収め、前席の真下に前輪を配置するキャブオーバーである。ホイールベースを短くできる分、一般的なクルマよりも取り回し性が高い特徴がある。

 一方で海外仕様は車両前側にエンジンを配置するセミキャブオーバーを採用する。セミキャブオーバーは前輪を車両前方に配置できる分、キャブオーバー式よりホイールベースが長くとれる。

 EVの場合、航続距離を延ばすためには、より多くの電池を車両床面に搭載する必要があり、ホイールベースを長くとる傾向にある。このため、EVを想定する今回の試作車はホイールベースの長い海外仕様をベースとした。

 床面に電池を敷き詰めるが、「ガソリン車版と床面の高さは変わらない」(同社製品企画ZU兼商用企画部商用企画室標準車1グループ主任の大橋あゆみ氏)という。駆動用モーターはリアに配置し、後輪駆動とした。ガソリン車でエンジンを搭載するスペースには、電池を制御するESU(Electricity Supply Unit)を配置した。

 助手席は備えず、荷室エリアを拡大した。約3.5mの長尺物を積載できるという。コネクテッド系も充実させた。配送ルートを最適化したり、次に配達する荷室の積載位置を表示したりすることで、配達効率を向上する。

 同社社長の松尾勝博氏は「多様化していく社会のニーズに応えられる1つの選択肢として提案していきたい」と語った。同社は、日本をはじめとした世界の市場へ導入を模索しているとした。

荷室スペース
荷室スペース
約3.5mの長尺物を積載できる空間を確保した。(写真:日経Automotive)
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