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 ホテルオークラ(東京・港)と帝国ホテルという日本を代表する老舗ホテルが相次いで、京都に新しいホテルを開業する。ホテルオークラは2021年5月28日、三菱地所が京都市左京区岡崎天王町で開発しているホテルの運営管理契約を結んだ。22年1月に「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」としてオープンする予定である。

「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」の外観イメージ(資料:ホテルオークラ、三菱地所)
「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」の外観イメージ(資料:ホテルオークラ、三菱地所)
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 一方、帝国ホテルは同年5月12日に、京都市東山区四条通大和大路東入祇園町南側の祇園甲部歌舞練場敷地内に立つ「弥栄会館」の一部を保存活用した新しいホテルの計画実施を決定した。

 21年6月に、祇園甲部の芸舞妓(げいまいこ)学校「祇園女子技芸学校」を運営し、祇園町南側の土地や歌舞練場などの不動産を所有する学校法人八坂女紅場(やさかにょこうば)学園が、弥栄会館の解体保存工事を始める。そして22年4月に帝国ホテルが弥栄会館の保存部分の譲渡を受け、土地の賃借を開始。ホテルの建設工事に着手する。

 ホテルの竣工は25年10月、開業は26年春を予定している。総事業費は約110億円を見込む。

京都の祇園甲部歌舞練場敷地内に立つ「弥栄会館」の一部を保存活用した、新しい帝国ホテルの外観(南西面)イメージ。弥栄会館の外壁と構造体の一部を保存し、花見小路からの景観を引き継ぐ。右側は歌舞練場の玄関部分(資料:帝国ホテル)
京都の祇園甲部歌舞練場敷地内に立つ「弥栄会館」の一部を保存活用した、新しい帝国ホテルの外観(南西面)イメージ。弥栄会館の外壁と構造体の一部を保存し、花見小路からの景観を引き継ぐ。右側は歌舞練場の玄関部分(資料:帝国ホテル)
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 祇園甲部は京都五花街の1つで、東は東大路通、西は鴨川、南北は建仁寺から新橋通に囲まれている。重要伝統的建造物群保存地区の祇園白川地区を含む、京都で最も大きな花街だ。お茶屋や料亭などの伝統建築と、石畳みのたたずまいが特徴の人気観光スポットである。

「祇園甲部歌舞練場」の周辺マップ(資料:帝国ホテル)
「祇園甲部歌舞練場」の周辺マップ(資料:帝国ホテル)
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 2つのホテルは、老舗ブランドの「ホテルオークラ」と「帝国ホテル」の看板を掲げ、満を持して京都に進出する。立地はどちらも京都観光に便利なエリアで、客室数を60室ほどに抑えていることも共通している。小規模ながら、老舗ならではのサービスを提供する。

 ホテルオークラ京都 岡崎別邸は、京都の岡崎エリアに位置する隠れ家のようなスモールラグジュアリーホテルを目指す。敷地面積は約2860m2、延べ面積は約5500m2。地上4階建てで、客室数は60室。

 標準客室面積は約40m2。山荘をテーマにするバルコニー付きのスイートルームが8室あり、こちらは客室面積が約80m2と広い。

 設計は三菱地所設計、施工は大林組が担当。内装の設計・施工は乃村工芸社が手掛ける。

 館内には、西陣織の老舗「細尾」や茶筒の「開化堂」をはじめとする京都の伝統工芸を担う若手後継者6人によるプロジェクトユニット「GO ON(ゴオン)」が手掛ける意匠を取り入れる。1階には庭園を眺めながら食事ができるレストランを設ける。

庭園を望むレストランのイメージ(資料:ホテルオークラ、三菱地所)
庭園を望むレストランのイメージ(資料:ホテルオークラ、三菱地所)
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 親鸞聖人草庵(そうあん)跡と伝えられる寺院「真宗大谷派岡崎別院(東本願寺岡崎別院)」の隣地に立ち、スイートルームなどの客室からは境内の自然や日本庭園の景色を望める。丸太町通に面し、平安神宮や南禅寺、京都市動物園、京都市京セラ美術館といった、京都を代表する観光施設にアクセスしやすい。

 ホテルオークラは01年から「京都ホテルオークラ」を、市の中心部で運営してきた。22年のホテルオークラ京都 岡崎別邸の開業に合わせて、こちらは「ホテルオークラ京都」に名称を変更する。ホテルオークラ京都は、宿泊と宴会、レストランが一体になったグランドホテルとしてのサービスを提供することで、違いを打ち出す。

「ホテルオークラ京都」に名称変更する京都ホテルオークラ(資料:ホテルオークラ、三菱地所)
「ホテルオークラ京都」に名称変更する京都ホテルオークラ(資料:ホテルオークラ、三菱地所)
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