システム開発プロジェクトを遂行する上では、複数の主張を調整して落としどころを見つける必要がしばしばあります。それには、勝ち負けのための議論ではなく、結論を出すための協議や調整のスキルが重要です。そのための「合意形成術」を身につけましょう。合意形成では、次のような点に留意します。

合意形成のための留意点
合意形成のための留意点
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(1)相手の主張を受け入れる

「No,because(いいえ、なぜならば)はよくない」と言われたことはありませんか?例えば、「こういう機能が欲しいんだけど」と問いかけられたときに、「無理です。対応する工数がありません」と答えるような感じです。

 コミュニケーションの中では、はっきりNoと伝えなければならない場合もあります。でも、Noから始まる応答ばかりだと、理屈は通っていても「あの人はこちらの事情をちっとも考えてくれない」という反発を招いてしまいます。否定と反発の繰り返しでは、合意形成は難しいでしょう。

 まずは相手の主張をよく聞いて、受け止めることから始めましょう。受け止めるというのは、言うなりになれということではありません。最終的に結論に賛成しないとしても、相手の話を聞いて、受け止めた上で判断するということです。「こういう機能が欲しいんだけど」と問いかけられたとすれば、「なるほど、そういう機能があれば、事務のミスが減りますね」と、同意する。その上で、「しかし、残念ながら現在追加機能に対応する余力がないんですよ。既存機能で対応を遅らせられるものがあるでしょうか」と応じる。「Yes,but」と言われる応じ方です。単なる会話テクニックと捉えるのではなくて、「人の主張をきちんと聞いて、受け止める」ことを心がけることが、合意形成の出発点です。

(2)視点をそろえる

 相手と視点がそろっていないと、議論がかみ合わず、合意に達しにくくなります。「業務上、この機能が必要だ」という主張と、「対応する工数がない」という主張は、視点を異にしています。一方は業務上の必要性を語っており、もう一方は対応するコストを持ち出しているからです。

 合意に達しようとするなら、視点を統一することです。「他の機能と比べて、どちらの必要性が高いか」「テスト期間を短縮することと機能追加と、どちらの必要性が高いか」というように、同じ土俵で話をするようにします。プロジェクト目標の達成という目的をともにする仲間なのですから、軸をそろえて議論するようにしましょう。