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 2021年11月19日、文化審議会(会長:佐藤信・東京大学名誉教授)は「香川県庁舎旧本館および東館」など10件の建造物を重要文化財に指定するよう、末松信介文部科学相に答申した。指定されれば、香川県庁舎旧本館・東館は戦後に竣工した庁舎建築として初めての重要文化財になる。今冬には重要文化財に指定される見込みだ。

重要文化財に指定される見込みとなった香川県庁舎旧本館・東館を西側から見た様子。日本の伝統建築のような柱や梁、庇が印象的だ(写真:生田 将人)
重要文化財に指定される見込みとなった香川県庁舎旧本館・東館を西側から見た様子。日本の伝統建築のような柱や梁、庇が印象的だ(写真:生田 将人)
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香川県庁舎の低層棟ピロティ(写真:生田 将人)
香川県庁舎の低層棟ピロティ(写真:生田 将人)
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香川県庁舎のピロティから見た高層棟(写真:生田 将人)
香川県庁舎のピロティから見た高層棟(写真:生田 将人)
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 香川県庁舎の旧本館と東館は丹下健三(東京大学工学部建築学科丹下健三計画研究室)が設計を手掛け、1958年に竣工した。当時の資料によれば延べ面積は3647.1坪だ。鉄筋コンクリート造で旧本館は地上8階建て、最高高さは43.0m。東館は地上3階建てだ。構造設計は坪井善勝(東京大学生産技術研究所坪井善勝研究室)が担った。

 旧本館・東館は19年、基礎の下に免震装置を設ける「免震レトロフィット工法」による改修を終えている。耐震改修の基本設計は松田平田設計が、実施設計と施工は大林組・菅組JVが手掛けた。

 1997年に耐震診断をした結果、耐震化が必要であると判明。しかし、学校施設など他の建築物の耐震化を優先する必要があったため、旧本館・東館は建て替えを含めた在り方の検討にとどまっていた。「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準」が改定された後2012年、再度の診断と躯体調査を実施。有識者による議論などを経て、旧本館・東館の保存と耐震化を進めるに至った。

 香川県庁舎旧本館・東館は現在も庁舎として利用され、防災拠点施設としての性格も持つ。旧本館1階ロビーには来庁者が自由に立ち入ることができる。香川県庁舎の現在の本館は00年に竣工している。地上21階・地下2階建てで、香川県と丹下健三・都市・建築設計研究所(当時)の設計だ。

 答申通り指定されれば、丹下健三が設計した建築物では、06年指定の広島平和記念資料館、21年指定の国立代々木競技場に続き3件目の重要文化財となる。鉄筋コンクリート造でありながら、柱や梁、庇によって日本の伝統建築を表現している意匠面などが評価された。