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 「令和2年7月豪雨」で市街地の広範囲が浸水した福岡県大牟田市。市内の住宅被害は2020年8月24日時点で約2460棟。なかでも半壊と認定された住宅は1200棟を超える。市は「大牟田市令和2年7月豪雨災害検証委員会」(委員長:渡辺亮一・福岡大学工学部教授)を設置して、20年8月25日に第1回委員会を開いた。被害拡大の原因や市の対応などについて検証し、20年内に報告書を取りまとめる。

「令和2年7月豪雨」で市街地の広範囲が浸水し、2人が死亡した福岡県大牟田市。避難所に指定されている市立みなと小学校や三川地区公民館が一時孤立した。2020年7月7日撮影(写真:国際航業の写真に日経アーキテクチュアが加筆)
「令和2年7月豪雨」で市街地の広範囲が浸水し、2人が死亡した福岡県大牟田市。避難所に指定されている市立みなと小学校や三川地区公民館が一時孤立した。2020年7月7日撮影(写真:国際航業の写真に日経アーキテクチュアが加筆)
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 7月豪雨で大牟田市では24時間降雨量が446.5mmと、同市では観測史上最大を記録。18年3月に市が街づくりのマスタープランとして作成した「立地適正化計画」のなかで、住宅や医療施設などを集約する重要エリアとして位置付けた「居住誘導区域」が浸水し、区域内で2人が死亡した。

 総務省消防庁によると20年8月24日時点で豪雨による住宅被害は全国で、全壊319棟、半壊2009棟、一部損壊2230棟、床上・床下浸水1万3934棟に上る。大牟田市では全壊11棟、半壊1218棟、一部損壊1122棟、床上浸水108棟と、半壊・一部損壊については全国での被害の半数以上を占める。大牟田市税務課の境康晴課長は被害について「想定を大きく上回る」と説明する。

 市が被災直後に被害把握のために目視調査を実施した際には、全壊・半壊した住宅は確認できなかった。しかし、罹災(りさい)証明の発行に伴う現地調査で壁や床、柱の腐食が目立つ住宅が多数確認された。「浸水が長時間解消されなかったことが被害拡大につながったのではないか。2日間以上、水が引かなかった地域もある」(境課長)