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 東日本、中日本、西日本、本州四国連絡の高速道路会社4社は、橋の耐震補強計画で被災時における道路網の迅速な分断解消が考慮されていないとの会計検査院の指摘を受け、補強の優先度の考え方を見直す。上下線の橋が分かれている場合、片方だけを先行して補強する。4社が2024年1月13日に発表した。

耐震補強計画の見直し概要(出所:東日本高速道路会社、中日本高速道路会社、西日本高速道路会社、本州四国連絡高速道路会社)
耐震補強計画の見直し概要(出所:東日本高速道路会社、中日本高速道路会社、西日本高速道路会社、本州四国連絡高速道路会社)
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 会計検査院は23年10月、高速道路4社に対して耐震補強の進め方を見直すよう求めた。大地震時に上下線のうち片方の橋で損傷が軽微ならば、緊急輸送の機能は果たせる。しかし、各社は施工の効率性などから、これまで上下線両方を同時に補強していた。

 こうした進め方に対し、会計検査院は「地震時のミッシングリンクが生じる恐れがある区間などを早期に解消させるための橋脚補強の効率的な整備手法について、検討を行うことの重要性に対する認識が欠けている」と厳しく批判した。

 高速道路4社は熊本地震が発生した16年以降、1996年改訂の道路橋示方書よりも古い基準で設計された橋を対象に、最大級の地震を受けても機能を速やかに回復できる「耐震性能2」に強度を引き上げるよう補強を進めている。具体的には、橋脚の巻き立て補強や支承の交換、段差防止構造・水平力分担構造の設置などだ。26年度までの完了を目標としていた。

 しかし、16年度時点で補強が必要だった4454橋のうち、22年度末時点で完了している橋は約1割の449橋に過ぎない。あと4年で残り9割の補強を終えるのは、ほぼ不可能といえる。そこで高速道路4社は、災害時のネットワーク確保に着目した計画に変更し、先行して補強が必要な橋を絞り込んだ。

上下線の橋脚が分離している橋では、いずれか一方の橋脚補強を先行する(出所:東日本高速道路会社、中日本高速道路会社、西日本高速道路会社、本州四国連絡高速道路会社)
上下線の橋脚が分離している橋では、いずれか一方の橋脚補強を先行する(出所:東日本高速道路会社、中日本高速道路会社、西日本高速道路会社、本州四国連絡高速道路会社)
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段階的に4車線化した路線などで、後から整備した橋が耐震性能2を確保している場合、先行整備した橋の補強を後回しにする(出所:東日本高速道路会社、中日本高速道路会社、西日本高速道路会社、本州四国連絡高速道路会社)
段階的に4車線化した路線などで、後から整備した橋が耐震性能2を確保している場合、先行整備した橋の補強を後回しにする(出所:東日本高速道路会社、中日本高速道路会社、西日本高速道路会社、本州四国連絡高速道路会社)
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