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日本で最大規模の大学付置研究所である東京大学生産技術研究所。新所長に就いた岡部徹教授は様々な大学で研究を重ねながら、積極的に企業と連携してきた。歴代所長の中では異色の存在だ。自身の経験を生かし、若手研究者が好きなことに没頭できる研究環境の整備を目指す。(聞き手は岩野 恵、中山 力)

写真:栗原克己
写真:栗原克己
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 東京大学生産技術研究所(生研)は工学のほぼすべての領域を包含する総合工学研究所です。現在、約250人の教員と150人の職員、800人の大学院生・ポスドクの、総勢1200人以上が研究や教育に取り組んでいます。私は2021年4月、その第26代所長に就任いたしました。

 今までレアメタル一筋の研究者として歩んできました。京都大学、米マサチューセッツ工科大学(MIT)、東北大学を経て、01年から生研に所属しています。東大卒ではない所長は珍しいかと思います。私はいわゆる“一匹オオカミ”で、1人で外部連携を進め、研究費を調達する“ストリートファイター”として活動の幅を広げてきました。私を所長にするよりも、1人の研究者として野に放っていた方が生研にとって実入りが良いはずなので、正直に言うと所長のようなマネジメントを行う側になると思っていませんでした。

 ただ、所長になったからには、今までお世話になった生研に恩返しをしていきます。まずは、若手研究者が自身の好きな研究に没頭できる環境をつくることに力を注ぎたい。私自身も若い頃から生研で、好き勝手な研究に専念させてもらいました。研究者として、これほど幸せに生きてきた人間はいません。だからこそ、今の若手にも素晴らしい研究環境を享受させたいのです。