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 「先を見通せないVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性、ブーカ)の時代に対応すべく、全面的に再構築した」。損害保険ジャパンの浦川伸一専務はこのほど稼働した新たな基幹システムについてこう語る。

 人口減と少子化が進むなか、自動運転やAI(人工知能)、IoT(インターネット・オブ・シングズ)など技術革新も相まって損保の市場構造が激変している――。迫る荒波を乗り越えるべく、損保ジャパンはおよそ30年ぶりに基幹システムを刷新。柔軟性や拡張性を確保し、商品開発スピード向上や外部システムとの連携強化を目指した基幹システム「SOMPO-MIRAI」を2021年3月に本番稼働させた。

基幹システムを全面再構築した損保ジャパン
基幹システムを全面再構築した損保ジャパン
(撮影:日経クロステック)
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3期に分けて新システムに移行

 SOMPO-MIRAIが扱う対象は、様々な保険商品の開発や契約、保険金の支払いなど国内損害保険の基盤となる業務全般である。これまでメインフレーム上で稼働していたCOBOLアプリケーションを、オープン系のプラットフォームでマイクロサービスとして動くJavaアプリケーションに置き換えた。

 加えてAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)基盤も用意し、代理店やFinTech企業などのシステムと連携しやすくした。2015年10月に日立製作所と共同で設立したIT子会社のSOMPOシステムイノベーションズが設計などを担い、日立製作所や日本IBM、アクセンチュアなどが実装に携わった。

 損保ジャパンはSOMPO-MIRAIに段階的に保険商品を移行する。まず2016年10月から2021年3月まで開発に取り組んだ「第1期」で、共通の業務機能を移管した。同時に、SOMPO-MIRAIを活用した新たな保険商品として、顧客と代理店が非対面・非接触で手続きできる傷害保険の販売を2021年4月に開始した。

 次いで2023年度までの「第2期」で自動車保険を移管する。さらに2021年4月に開発がスタートした「第3期」で火災保険などの商品を順次移管していく計画である。

 投資額は非開示だが最終的な総額は2000億円規模とみられ、国内有数の大規模プロジェクトとなったSOMPO-MIRAI。注目すべきポイントは大きく2つある。