富士山噴火 ハザードマップと避難計画は
富士山では300年以上噴火が起きておらず「噴火は必ず起こる」と専門家は警鐘を鳴らしています。2023年3月、富士山噴火を想定した新しい避難計画がまとまりました。ハザードマップと避難計画はどのようなものか?。東京を含む首都圏の広範囲に降るとされる火山灰の影響は?。
2023年3月 防災関連ニュースなどで放送された内容です
目次
富士山の新ハザードマップは
現代社会で富士山が噴火した際、どのような被害が想定され、どう避難すればよいのか。静岡・山梨・神奈川の3県と国、有識者などでつくる協議会は新たな避難計画を作成。もとになったのは最新の知見から2021年3月に改訂された「富士山ハザードマップ」です。
ポイントは被害が想定される時間の速さ。
「火口」「火砕流・火砕サージ」「大きな噴石」「融雪型火山泥流」「溶岩流」と噴火による現象ごとに被害が発生する時間が大きく異なるからです。
例えば「溶岩流」は比較的速度が遅く、噴火してからでも逃げる猶予がありますが、「火砕流」は速度が100キロを超えることもあり、逃げる猶予はありません。
"逃げ遅れゼロ"目指す新避難計画
これらのことを考慮してまとめられたのが新しい避難計画。避難の対象となる地域に住む人は静岡・山梨・神奈川の3県27市町村のおよそ80万人です。ただし、どこでどのような形態の噴火をするのかは予測は難しく、すべての人が一度に避難する必要があるわけではありません。
まず、住民に対しては、混乱を避けるため噴火の前に火山性地震が増加するなどして気象庁が噴火警戒レベルを引き上げた場合などに、親戚や知人の家、宿泊施設へ自主的に分散して避難するよう呼びかけるとしています。
「富士山噴火警戒レベル」気象庁資料(※NHKサイトを離れます)そのうえで、避難の対象地域を噴火に伴う現象や影響が及ぶ時間に応じて6つのエリアに分け、それぞれ移動手段や避難の開始時期を示しました。
第1次避難対象エリア
想定火口範囲です。5段階ある噴火警戒レベルのうちレベル3の段階(居住地域に影響しない程度の噴火の発生、または地震、微動の増加等、火山活動の高まり)で避難します。
第2次避難対象エリア
主に火砕流や火砕サージ、大きな噴石が到達する可能性のある範囲です。噴火警戒レベル4(小規模噴火の発生、地震多発、顕著な地殻変動等に より、居住地域に影響するような噴火の発生が予想される)となった段階で一般の住民も車で避難するとしています。
第3次避難対象エリア
溶岩流が3時間以内に到達する可能性のある範囲です。短時間で到達するため、噴火が起きた直後に避難するとしています。
第4次避難対象エリア
溶岩流が24時間以内に到達する可能性がある範囲です。
第5次避難対象エリア
溶岩流が7日間以内に到達する可能性がある範囲です。
第6次避難対象エリア
溶岩流がその後、最終的に到達する可能性がある範囲で、最大57日間かかるとされています。
住民と登山客 どう避難?
このうち市街地では住民が一斉に車で避難すると深刻な渋滞が発生して逃げ遅れる可能性があることから避難に時間がかかるお年寄りなどをのぞき、一時的に安全を確保できる場所へ「原則、徒歩で避難する」という方針が改めて示されました。
登山客に対しては噴火警戒レベルが「活火山であることに留意」を示す警戒レベル1の段階でも気象庁から臨時の情報が発表された時点で下山を指示します。それ以外の観光客に対しても混乱が生じる前の早い段階で帰宅を呼びかけます。
どこへ避難?避難先の考え方
避難先の考え方についても見直されました。
県外避難も可能とする
これまでの計画では県内での避難が想定されていましたが、隣接する県外の自治体などへの段階的な避難を可能とし、3県が受け入れの調整を行って避難を短時間で完了させるとしています。
ただ、富士山は観測を開始してから噴火したことが無く、噴火の時期や火口の場所についての不確実性が高いことを踏まえて、あらかじめ避難先を決めず噴火の状況に応じて避難先を確保することとしています。
お年寄りや子どもなどの対策強化
避難に支援が必要な人たちへの対策も強化されました。
溶岩流が3時間以内に到達する地域では病院や高齢者施設などに対し入院患者らを安全に避難させるための計画づくりを促すほか、小学校や幼稚園などは噴火警戒レベルが3に引き上げられた時点で速やかに休校とし、保護者へ引き渡すとしています。
火山灰 影響は東京など広範囲に
富士山で大規模な噴火が発生した場合、風向きや風速によっては周辺の自治体だけでなく東京の都心を含む首都圏の広い範囲に火山灰が降り、公共交通機関や物流に影響が出て生活に支障が出るおそれが指摘されています。
885万人が火山灰2センチ以上の地域に
協議会が2019年に公表した広域避難計画によると、300年余り前の江戸時代の噴火をもとに火山灰が2センチ以上に達する地域の推計人口は神奈川県を中心に885万人にのぼると推計されています。
火山灰を大量に噴き出す江戸時代の宝永噴火ようなタイプの噴火が発生した場合、風向きや風速によっては富士山周辺だけでなく、東京の都心など関東各地にも到達するとみられていて、短時間で都市機能がマヒするおそれがあります。
火山灰による生活影響をまとめた国の検討会によると
▽5センチ以上積もると10キロ程度
▽10センチ以上積もると通行不能に
協議会では「火山灰」は、噴火の規模や風向きによって影響するエリアが変わるため事前に避難先を決めるのではなく、鉄筋コンクリート造など頑丈な建物での「屋内退避を原則」としたうえで、道路の通行止めなどにより物流が滞った場合に備え、1週間分の水や食料などを備蓄しておくことも求めています。
地域ごとに普及啓発へ
新たに示された避難計画を踏まえ、それぞれの自治体では今後、地域の特性を踏まえたより詳細な避難計画を作成したうえで、住民への周知を進めることになります。
「富士山火山防災対策協議会」各県の資料を詳しく(※NHKサイトを離れます)「いつかは分からないが富士山は必ず噴火する。以前の計画では危険が予想される場所から遠くへ逃げることになっていたが、溶岩流の特性を踏まえた避難が必要だ。噴火時に実際にどこに避難するかなど各市町村ごとに違うため、地域の防災計画にしっかり落とし込んでもらいたい」
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