2023年09月15日
(聞き手:西條千春 堀祐理)
個性的なレシピで人気の“料理愛好家”平野レミさん。小さなころから大好きだった料理を家族のために一生懸命楽しんでいるうちに、自然と今の仕事につくようになったそうです。
「自分がやりたいことに正直に」。その思いを軸に道を切り開いてきたレミさんに聞く、人生を楽しむためのとっておきのレシピとは?
レミさんはどうして料理を好きになったのですか?
小っちゃい時、家に自家菜園があって、そこでとれたトマトがおいしくてね。
これで料理やってみたいなと思って、ちょうどその時、台所にうどんとチーズとピーマンもあって、ちょっとためしに全部一緒に煮込んでみたら、もうおいしくておいしくて!
普通はトマトとうどんとチーズとピーマンだったら、1+1+1+1は4じゃない?
でもそれを合体して料理するとさ、これに「うまさ」が入って、さらに私がおいしく作ろうって気持ちが入るからおいしさが100にも1000にも増えるの。
それに感動して、それからどんどんやるようになっちゃった。
料理愛好家 平野レミさん
東京都生まれ。結婚後、趣味の料理をいかし雑誌の料理コラムを書くように。1985年『きょうの料理』で料理番組デビュー。奔放なトークや X(旧ツイッター)でのレシピ投稿も話題を呼び、現在はバラエティー番組など多分野で活躍。生放送でのびっくり料理が毎回話題となるNHK『平野レミの早わざレシピ!』はこの秋で16回目。
好きな料理が仕事につながったのは何がきっかけでしたか。
和田さん※と結婚して、和田さんのために毎日料理を頑張っていたら、ある時、和田さんの妻はどんな料理を作っているんですかっていう取材がたまたま来たの。
(※夫でイラストレーターの和田誠さん 2019年に死去)
それで私はいつもこんな料理を作っていますと話して、それが雑誌に載ると、また別の出版社から取材が来るようになったの。
そんな事やってる間にテレビに出ませんかっていう話になっちゃって。
次々に? すごいですね。
料理作って写真を撮ったあと、「お疲れさまでした」って言って編集者たちが私の料理を食べて帰るわけ。
そこら辺から「和田さんの妻の平野レミさんの料理はおいしい」って評判になったらしいのよね。
1回1回、真面目にちゃんと料理を作っていると、いいことあるの。
意外なところから仕事につながるんですね。
おいしいって言ってくれるとやっぱりうれしいでしょ。作ったものが評価されるとさ、もっとやりたくなっちゃうし。
じゃあもっとやろうってやったら、こんな風になっちゃった、私(笑)。
いま料理愛好家としてテレビにもたくさん出られていますが、どうしてそうなれたとお思いですか?
なんでこんなに仕事来るのか自分でもよくわかんない(笑)。みんなはなんでだと思う?
試してみたくなる料理が多いです。簡単ですし。
個性的です。
いいこと言うじゃないの!(笑)
それは、お料理学校に行っていないからよかったのよ。料理学校に通うと、“こうするべき”みたいなこと、いろいろあるじゃない、きっと。
私は全部すっ飛ばしちゃって、食べてごっくんすればおいしい、プロセスなんてどうでもいいって、でっかい気持ちになって作っちゃうの。
最初に考えたのはコロッケね。息子が小さいときに「お母さんきょうコロッケ作って」って言ってきて。
一日中仕事してたので、面倒くさいから、キャベツを大皿に入れて、ポテトをマッシュして、ひき肉と玉ねぎを炒めてその上に置いて、フライだから食感がカリカリしていればいいと思ったから、コーンフレーク散らしたの。
コーンフレーク?!
息子にどう?って聞いたら「食べたら本当にコロッケだった!」って言って、「ごっくんコロッケ」が誕生したんだけど。
そういう面倒くさがりの人ってたくさんいるのよね(笑)。そういう人たちが、レミさんの料理がいいって言ってくれているのかしら。
たしかに、手間はなくしたいっていう人は多いと思います。
レミさんの料理には個性的なものもあるので、すべての人には受け入れられないということもありませんか?
別に悪いことしているわけじゃないし、いいじゃん。人の事なんて気にしないの。
私がNHKの『きょうの料理』に初めて出たとき、「牛トマ」っていう牛肉とトマトを炒める料理をつくったのね。
そこでトマトを包丁を使わないで手でぐちゃっとつぶしたの。切るよりもトマトの断面に味がよくしみるようにね。
👇クリックで実際の放送動画が見られます。“伝説”はここから始まった?!
1985年6月5日放送『きょうの料理 わたしのすすめる野菜料理3 レミ風トマトいため』
そしたら、NHKの人に「今度から注意してください」って言われたの。
でも私は私のやり方でしか料理できないじゃない? 自分のやり方がいいと思っているから、「変えることはできません」って言いました。
そしたら新聞に「平野レミはとってもユニーク」ってほめられて、NHKからも「ご自由にやってください」って(笑)。
そんなこんなで、ずっと自由にやらせてもらっています。
生放送でレミさんが料理を作る『早わざレシピ』、毎回SNSで話題です。
『早わざレシピ』では、私、何をやってもいいって言われてるの。
例えば、リハーサルのときに面倒くさいから、パスタをひざでバキッて割ったら、本番でもやってくださいって(笑)。
(※番組CP談「そこまでは言っておりません…(苦笑)」)
見てる人に楽しんでもらいたいと思うし、ふつうの料理番組なんてじれったくて、パッパと進めたいのよね。
まわりと自分の考え方が違うと、不安になる人は多いと思います。レミさんは不安になりませんか?
人と違っている方が面白くない? 人と同じが一番嫌い!
人と一緒じゃなきゃいけないとか、私はなにも気にならない。人は人、私は私! 人の目を気にしてたら、なんにも進まないじゃない。
レミさんのように楽しく仕事できたら本当にステキだなって思います。
そうね。とにかく好きなことを見つけるのが一番大切。
大好きなことって苦しくないのよね、楽しくて楽しくて、時間がたつのも忘れちゃう。
私が本当に恵まれていると思うのは、大好きな料理が仕事になっていることよね。やりたいこととやるべきことが一致しているのは幸せだと思う。
就活で仕事を探すとき、「自分の夢って何だろう」と考えることもありますが、その「夢」がなくて悩む人も多いと思います。
夢がないの? 夢って憧れでしょう? 向こうのほうにすごく輝くようなものがあるように思える…という希望のようなものでしょう?
直感でやれそうに思えるなら、それに向かって進んでみたらいいじゃない?
今は情報が多すぎて、やる前になんでも分かっちゃったような気になるのかな。たとえ憧れがあったとしても、嫌なことがあったら…って気持ちになっちゃうのかな。
まあ「夢」っていうと大きすぎるから、何でも「自分がやりたいこと」を見つければいいんじゃない?
人の意見や価値観に左右されちゃダメ、自分を信じるのね。とりあえず、好きな事をやってみることね。
私は、料理はもちろん好きだし、歌も好きでやりたいと思ったから歌手もやってる。ピアノも好きだから、もっと練習してたらピアニストになってたかもしれないわよね。
つまんない人生は嫌だな、って考えられるなら、見通しは明るいね。
みんなも、びくびくしていちゃダメ、好奇心を持って突き進めばいい。若いんだからなんだってできるよ!
自分がやることになった仕事が好きになれない、楽しくないことだったら、どうしたらいいでしょう?
やりたくないならその仕事はやめてもいいでしょ。ほかに向いている仕事があるんじゃないかな?
でも、たとえ生活のために嫌な仕事をしていても、自分の趣味を大切に持っていれば、救われるんじゃない?
好きなことがあれば、嫌な仕事でも終わった後に前向きな気持ちになれると思う。やっぱり好きなことを持っている人はいいよね。
レミさんのように、好きなことで人を幸せにできるような仕事ができれば、一番理想ですよね。
まあでも自分が一番大事なんだから、とにかく自分にとってプラスになることをやっていけばいいのよ。
仕事をしていて、まわりに認められて幸せ、とかでもいいと思う。
自分が主役! まず自分が幸せにならなかったら、人のことなんて幸せにできないわよね。
仕事にかかわらず、好きなことをいっぱい見つけられる人、プラス思考の人が、何より幸せだと思うわ。
ボードに「レミさんにとって仕事とは」を書いてもらえますか。
わあ! どうしよう! …コレかな!
「仕事が愛になれば ステキな人生になると思う❤」
「愛」は世の中で1番大切なこと。愛を持っていれば、人を許せるし、幸せな人生になる。
だから、仕事を愛せれば、仕事が愛になれば、いいよね。
最後に就活生にメッセージをお願いします。
鏡の前で自分の顔を見てみるの。その顔がムッとしていたらダメ。そんな時はとりあえず笑っちゃえ! スマイルスマイル!
笑っている顔が一番いいよ。
ありがとうございました。
平野レミさんが次々に料理を作るハラハラどきどきの生放送。旬の野菜や果物を使った、お役立ち絶品レシピをたくさんご紹介。レミさん恒例“びっくり料理”も飛び出す!? 豪華なゲストたちとのトークも盛り上がりました。
2023年9月18日(月・祝)NHK総合テレビ 夜7:30~
番組ホームページはこちらから
撮影:吉田遥希 編集:脇本彩香
あわせてごらんください
先輩のニュース活用術
教えて先輩!脚本家 兵藤るりさん 数学の道から脚本の道へ 想像もしていなかった職業に
2023年09月08日
先輩のニュース活用術
教えて先輩!俳優 町田啓太さん 経験はむだにならない、たとえ失敗しても
2023年07月21日
先輩のニュース活用術
教えて先輩! タレント・ボディービルダー なかやまきんに君さん “チャンスは必ずやってくる” 筋肉も仕事も、負荷をかけ成長していく
2023年04月28日
先輩のニュース活用術
教えて先輩!ロッチ 中岡創一さん・コカドケンタロウさん(前編) “やってみたら世界が広がる” ロッチ流仕事との向き合い方
2023年01月04日
先輩のニュース活用術
教えて先輩! NHK 松本卓臣プロデューサー 予期せぬ出会いが成長に 報道プロデューサーの仕事
2022年09月16日
先輩のニュース活用術
教えて先輩! NHK 桑子真帆アナウンサー(3) 憧れたけど「志望しなかった」アナウンサーという職業
2022年09月09日