成し遂げることはできずとも、自分なりにやり遂げることはできた

小平奈緒

スピードスケート

35歳で迎えた4回目のオリンピック。
小平奈緒は、2大会連続の金メダルが期待された北京大会の500メートルを17位で終えた。

「挑戦することしか私にできることはないと思うので、恰好悪くても1000メートルで歯をくいしばって、やりたい表現を氷の上にのせていきたい。氷としっかりやりとりをして、会場の空気を温かく包み込めるようなそんなスケーティングができたらいいなと思う」

4日後の1000メートルは10位。高木美帆が金メダルを獲得した。
滑り終えたあと、小平は大会前に右足首をけがしていたことを明かした。
大会前、道で転んだ際に右足首を捻挫。
北京入りしたあとも力が入らず「絶望的な状況だった」という。

痛みがあっても少しでも速く滑る方法はないか。
小平はスタートのときの構えをふだんとは逆に右足を前にして負担を軽くしようとした。
しかし、レースで納得の滑りはできなかった。

「もう十分痛みとか苦しさとか乗り越えてきたので、もう1度そういうものから解放された滑りがどこかでできたらいいなと思います」

日本の短距離のエースとして戦い続けてきた小平。
4回目のオリンピックを終え、思いを自身のSNSに綴った。

“成し遂げることができずとも、自分なりにやり遂げることはできたと思っています。

この4年間、どこまで行けるんだろうと信じてくださった方々や、立ち止まりそうになるたびに温かい言葉をかけてくださった皆さんに何度も救われてきました。
この舞台のスタートラインに着くことができるように支えてくださった皆さん、ありがとうございます。

心も身体も、今ここにあるものはすべて使い果たせたと思います。
4年間全てを含んで、弱みを抱えながら挑むというのはとても苦しかったです。
最後の最後まで、本当に試される事が多くて、自分が今どうあるべきか、目の前の事にどう向き合うべきか思考を巡らせる日々でした。
「受け入れる」それが最大の処方箋でした。
生きている限り、生きることに向かうことで見えてくる未来もきっとあると思います。
カタチには何も残らない五輪でしたが、この先もそよ風のように「あ、今の風心地よかったな」と思っていただける存在でいられたら幸いです。”

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