誇大ネット広告で不適切な債務整理に サポート団体立ち上げへ

「借金が必ず減る」などとする誇大なネット広告を入り口に、多重債務者などが不適切な債務整理に誘導されて金銭的な被害を受ける事例が相次いでいるとして、弁護士らが対策やサポートを行う団体を立ち上げることになり、17日にその準備会が開かれました。

オンラインで開かれた「大量広告事務所による債務整理二次被害対策全国会議」の立ち上げ準備会には、多重債務の問題に詳しい弁護士や支援者などおよそ20人が参加しました。

会合では、ネットの広告から2つの法律事務所に債務整理を依頼したという30代の男性が「結局、借金は減らなかった上、結果的に借金の額よりも多い50万円以上の費用を求められ、生活が苦しくなり、ヤミ金で新たな借金を抱えてしまった」と自分の経験を話しました。

債務整理を行う場合
▽債権者と交渉して支払い可能な額を毎月支払う「任意整理」や
▽債務を免除してもらうために裁判所で行う「破産手続き」などの方法がありますが
依頼された弁護士や司法書士は債務者の生活実態に合わせた支援が求められています。

しかし、準備会によりますと、去年、多重債務者の支援団体に対して行ったアンケート調査では、ネット広告などから誘導された法律事務所に依頼したところ、本来、「破産手続き」をすべき状況にもかかわらず「任意整理」に誘導され、より負担が増えたなどといった相談事例が、直近で37人から寄せられていたということです。

相談の内訳では、債務者にとって
▽借金が減らなかったという事例が18件
▽事務所への支払いで新たな負債を抱えた事例が14件あったということです。

また、37人のうち30人が弁護士や司法書士に直接会わずに、ネット上で手続きが進められたということです。

準備会を開いた日弁連の消費者問題対策委員会多重債務部会の部会長をつとめる三上理 弁護士は「ネット広告から弁護士などに依頼して、きちんと面談や説明を受けず、結局解決にならなかった人の相談を受けていきたい。『国が認めた借金救済制度』など、誤解を生むようなものがあふれているので、ネット広告の在り方を問うていきたい」と話していました。

この団体は3月に発足し、無料の電話相談会を開くことにしています。

被害者「違和感あっても そういうものだと思った」

インターネットの広告から「借金を減らせる」と誘導され、依頼した弁護士に高額な着手金を支払ったうえ、借金は減らずに、負担が増えたと訴える40代の女性に話を聞きました。

女性は生活費のため、消費者金融から65万円を借りていましたが、去年3月、インターネットの動画配信サイトで見た広告から、借金が減るか無料診断できるウェブサイトに誘導され、借金額や連絡先などを入力したところ、都内の弁護士事務所から連絡が来ました。

そして、毎月、積立金を振り込むよう言われ、8か月でおよそ13万円を払ったということです。

その後、消費者金融との示談の結果、借金が減ることはなく、弁護士事務所との契約を解除しましたが、積立金だと言われて払ってきたお金は着手金だったとして返還されなったということです。

弁護士事務所とはネットのやりとりだけで、直接会わずに契約をしたというとです。

女性は「いかにも借金が減った体験談のような動画の広告を信じ、違和感があっても弁護士が言うならそういうものなのだろうと思ってしまいました。人をだますような弁護士や広告はなくなってほしいです」と話しています。

女性は別の司法書士事務所に相談して、破産申請を進めることにしているということです。

相談を受けた多重債務者の支援をしている市民団体「全国クレサラ・生活債権問題被害者連絡協議会」の事務局次長で、司法書士の新川眞一さんは「女性が依頼した事務所は長期の任意整理をしても本人の借金が減らないと分かっているはずなのに、あえて示談をさせるビジネスモデルを作り上げていると考えられる。大量集客のツールになっているネット広告の中には詐欺まがいのものがあり、業界をあげて対策しなければなりません」と話していました。

弁護士の誇大広告 懲戒処分の事例も

弁護士による誇大広告が懲戒処分にあたると判断される事例も出ています。

千葉県弁護士会は投資詐欺やロマンス詐欺の被害救済で
▽「すべてお任せ頂ければ丸っと解決いたします」などとうたい
▽消費者庁や金融庁のロゴマークをつけてネット広告を出していたのは、日弁連の規程で禁止されている「誇大広告や過度な期待を抱かせる広告」にあたる可能性があるなどとして、
70代の弁護士に対して、去年6月、懲戒処分に値すると判断し、処分の内容を審査しています。

広告について消費者からの意見を集めている日本広告審査機構=JAROによりますと、法律事務所などの相談業務の広告についての苦情が去年までの3年間、毎年、およそ200件寄せられていて、中には「お金が返ってくるかのような表現がまぎらわしい」など内容に関するものもあるということです。