地震被災地 災害に便乗した犯罪の発生が懸念 注意を 警察庁

過去の大規模な災害の被災地では窃盗や詐欺など災害に便乗した犯罪が確認されていることから、今後、こうした犯罪の発生に注意が必要です。警察庁によりますと、今回の地震の被災地での災害に便乗した犯罪の被害については情報収集中で、確認できていないとしていますが、今後、発生が懸念されるとしています。

窃盗

まず、懸念されるのは空き巣など窃盗の被害です。

避難所に避難している隙を突いて、人がいない住宅や店などから金品を盗むケースが考えられるということです。

警察庁によりますと、8年前の熊本地震では被災者の住宅から現金や商品券、タブレット端末などが盗まれる窃盗事件が発生し、43件が検挙されています。

詐欺

また、詐欺の発生も懸念されています。

13年前の東日本大震災の際には、「再建のために必要な融資をするが、手数料が必要だ」などとうその話を持ちかけ、被災した人から金銭をだまし取るケースが相次いで発生しました。

今後、電話回線が復旧していく中で、こうした詐欺が増える可能性があるとしています。

また、災害に便乗した犯罪は被災地に限ったことではありません。

熊本地震では
▽「困っている人に老人ホームの入居権利を譲ってくれないか」とか、
▽「仮設住宅を購入するために名義を貸しをしてほしい」などといった、うその話で現金をだまし取られたケースが全国で相次いだほか、東日本大震災ではうその募金を呼びかける詐欺事件が相次いだということです。

警察庁は今後、震災に便乗した犯罪が起きる可能性があることから、全国の警察に対して被害の防止に努めるよう指示を出す調整を進めています。

性被害にあうケースも注意を

これまでの災害では被災地で女性や子どもが性被害にあうケースも報告されていて、注意が必要です。

専門家やNPOなどが立ち上げた団体「東日本大震災女性支援ネットワーク」が、東日本大震災で起きた女性や子どもへの暴力について行ったアンケート調査では、夫や交際相手からのDVのほか、同じ避難所で生活している人や見知らぬ人から性被害を受けたとする回答が多く寄せられたということです。

例えば、避難所にいた女性が、
▽深夜に寝ていたところ、隣に男性が来て胸を触られたとか、
▽赤ちゃんへの授乳や着替えの様子をのぞき込まれたといったケースや、
▽避難所のリーダー的な立場にある男性から物資の融通などをほのめかされたうえで、性行為を要求されたといったケースがあったとしています。

このほか、
▽男の子が顔見知りの男性に下着を脱がされたり、
▽女の子が知らない男性にキスを要求されたりするなど、子どもの被害についても回答があったということです。

この調査に携わった、防災とジェンダーの問題を研究している、静岡大学グローバル共創科学部の池田恵子教授によりますと、避難所の共通の就寝スペースのほかにも、離れた場所に設置してある仮設トイレや、家が倒壊して死角が多くなっている町の中、それに車中泊をしている場所でも被害が報告されたということです。

池田教授は「自分自身のことで手いっぱいのときに、いつも2人以上で行動できるともかぎらないので、例えばトイレは男女別にして安全な場所に配置したり、就寝スペースにはしきり板を入れたりするなど、女性の意見も聞いて、避難所の環境を安全に整えることが大切だ。そして、誰かに相談しやすい体制をとることも必要だ」と話していました。

そのうえで、被害を防ぐためには、
▽避難所の運営や防犯の担当者に女性も携わり、仮設トイレやゴミ置き場の設置場所などについて意見をくみ取ることや、
▽更衣室や授乳室にも使える女性専用ルームを設置するなど、プライバシーが守られる環境を作ること、
それに、
▽夜は自主的な見回りをすることなどが必要だと指摘していました。