大相撲九州場所 大関・霧島が優勝 ことし春場所以来2回目

大相撲九州場所は千秋楽の26日、大関・霧島が大関・貴景勝に勝ち、13勝2敗として、ことしの春場所以来となる、2回目の優勝を決めました。

霧島は優勝後のインタビューで、2回の優勝とともに大関昇進も果たしたことし1年を振り返り「新大関でけがをして、あまりよくなかったが、今思うとすばらしい1年だった」と笑顔を見せました。

記事後半では千秋楽の中入り後の全取組の結果をお伝えしています。

追う熱海富士が敗れた時点で大関・霧島の優勝決定

九州場所は14日目を終えて
▽2敗で霧島が単独トップに立ち
▽星の差1つの3敗で平幕の21歳、熱海富士が追う展開となり、優勝争いは2人に絞られていました。

千秋楽の26日、先に取組があった熱海富士は関脇・琴ノ若と対戦し、「引き落とし」で敗れたため、この時点で霧島のことしの春場所以来となる2回目の優勝が決まりました。

大関・貴景勝に勝利

そして、霧島は結びの一番で大関・貴景勝と対戦し、立ち合いで強く当たって相手の上体を起こしたあと、タイミングよく突き落として勝ち、13勝2敗として、土俵を締めました。霧島が幕内で13勝をあげたのは、これが初めてです。

霧島は大関に昇進して3場所目となる今場所、4日目に大関経験者の高安、6日目に平幕の豪ノ山に敗れたものの、その後は磨いてきた立ち合いからの突き放しや持ち前の素早い動きを生かして白星を重ねました。

終盤戦に入り、まわしを取る相撲が増えてからは、さらに安定感が増し、12日目には関脇・琴ノ若、14日目には熱海富士と、2敗で並んでいた力士に勝って単独トップに立ちました。

今場所も照ノ富士が休場し、初日から横綱不在となる中、霧島が大関として若手の挑戦を退け、昇進後初めての優勝を果たしました。

霧島「すばらしい1年だった」

2回目の優勝を果たした大関・霧島は優勝後のインタビューで「うれしい。新大関の場所は、けがで苦しみ、先場所は、角番で緊張しすぎてよくなかった。今場所は思い切り自分の相撲を15日間取っていこうという気持ちで頑張った」と喜びを話しました。また、鹿児島県出身で、師匠の陸奥親方が来年の春に定年を迎えることを受け「『親方が九州場所最後だから頑張ってくれ』と、いろいろな人から声をかけてもらっていたので1つよかった」とほっとした表情を見せました。

14日目で勝った熱海富士との2敗どうしの対戦については「自分のできることをやっていこうと思って頑張った。絶対に負けない気持ちで自信を持っていった」と話しました。

千秋楽は先に取組のあった熱海富士が敗れて優勝が決まりましたが、「自分の一番があるので、最後まで頑張ろうと思っていた。最後なので思い切りいって、勝って締めたいという気持ちだった」と振り返りました。

そして、2回の優勝とともに大関昇進も果たしたことし1年を振り返り「新大関でけがをして、あまりよくなかったが、今思うとすばらしい1年だった」と笑顔を見せました。さらに、横綱昇進がかかる来年の初場所に向けては「いつもどおりしっかり稽古する。稽古しかないので頑張る」と意気込みを話しました。

師匠の陸奥親方「あっぱれだ いい親孝行」

霧島の師匠、陸奥親方は「あっぱれだ。はたきにはいったが、下がらない相撲だった。いい親孝行をしてくれた」と喜びを話しました。そのうえで「ゆっくりはしていられない。また相当稽古をしていかないと」とさらなる奮起を期待していました。

八角理事長「霧島は動きがいいし よく見えている」

日本相撲協会の八角理事長は霧島について「落ち着いている。動きがいいし、よく見えている。場所前の稽古がつながったんでしょう」と評価しました。また、横綱昇進を目指す上での課題については、「もっと欲を出すことでしょう」と話していました。

最後まで優勝を争った平幕の熱海富士については、「平幕で立派だ。来場所が楽しみだ。相撲に一途で気持ちがいい」と健闘をたたえました。

そして、ことしの6場所を終えて、「おかげさまで満員御礼も続いたし、頑張ってきた甲斐があった。コロナでどうなるかと思ってはきたが、ようやく落ち着いてきた」と振り返りました。

佐渡ヶ嶽審判部長「安定していた」

日本相撲協会の佐渡ヶ嶽審判部長は霧島について「相撲内容もよかったし安定していた」と評価しました。その上で霧島にとって来場所が「綱とり」になるかという報道陣からの質問に対して「終わってみないとわからない」とした上で、今場所のような相撲で優勝した場合について改めて問われると「そうなるんじゃないですか」という見解を示しました。

また、11勝を挙げた関脇・琴ノ若については「相撲内容もよかったし、来場所をみないとわからない」としながらも「来場所もそれなりの成績が上がれば」と大関昇進に向けた見解を示しました。

◆霧島とは

霧島はモンゴル出身の27歳。左四つに加えて前まわしを取っての寄り、さらに強じんな足腰を生かした粘り強い相撲が持ち味です。

モンゴルでは遊牧民として、ゲルと呼ばれる移動式の住居で生活し、少年時代は1人で馬を乗りこなしていたということで、柔道やモンゴル相撲などにも取り組みました。

相撲の経験はなく、体重は70キロほどでしたが、来日してから陸奥部屋に入門して平成27年夏場所の前相撲で初土俵を踏むと、その年の九州場所で三段目で優勝を果たしました。

その後、幕下では左ひざのけがなどに苦しみましたが、師匠で元大関・霧島の陸奥親方をはじめ、同じモンゴル出身の元横綱、鶴竜親方からも指導を受けて体作りを進めながら相撲の技術を学んで着実に実力を伸ばしました。

そして、初土俵からおよそ5年で新入幕を果たすと、次の年の九州場所では新三役となる小結に昇進。ことしの初場所では三役で初めての2桁となる11勝を挙げ、新関脇として臨んだ春場所では12勝3敗で並んだ大栄翔との優勝決定戦を制して初優勝を果たしました。

そして、5月の夏場所でも11勝をあげ、三役を務めて直近、3場所での勝ち星が34勝と大関昇進の目安とされる33勝を超え、場所後の臨時理事会で正式に大関昇進が決まりました。

しこ名を「霧馬山」から師匠の陸奥親方と同じ「霧島」に改名し、新大関として臨んだ名古屋場所は、けがのため6勝7敗2日の休みに終わりましたが、9月の秋場所は勝ち越して角番を脱出しました。

今場所は西の大関として臨み、力強い寄りと動きのよさで白星を重ねてきました。

【解説】たゆまぬ努力で2回目の賜杯

稽古熱心なことで知られる霧島は大関に昇進してもなお、たゆまぬ努力を続け、2回目の賜杯を手にしました。

今場所に向けては、大関経験者の正代が所属する時津風部屋に連日、出稽古に赴き、関脇・若元春や大栄翔などを相手に精力的な稽古を行いました。ある日の稽古では、終わってみれば41番、実に55分間、相撲をとり続けました。

それでも稽古後には、「まだまだ足りない、もっとやりたい」と語り、努力を惜しまない姿勢がことばにもにじみ出ていました。

稽古十分で臨んだ今場所でしたが、前半戦で2敗を喫するなど、順調とはいえないスタートを切りました。それでも「自分の相撲を取る」「1日一番」とみずからの相撲に向き合い続け、徐々に調子を上げていきました。

特に、終盤戦にかけては、土俵上での霧島らしさが発揮されました。

11日目の関脇・若元春との一番では、互いに得意とする左四つで組み合ったあと、どんどん前に出て寄り切り。12日目、2敗でトップに並んでいた関脇・琴ノ若と対戦では、立ち合いで右の下手は許したものの、まわしを引いて頭をつける霧島らしい攻めで琴ノ若に十分な形を作らせませんでした。そして、最後は力強く寄り切ってみせました。

翌日の関脇・大栄翔との対戦では、強烈な突き押しにも下がることなく受け止め、タイミングよくはたきこんでみせました。

そして、14日目、優勝を争う平幕の熱海富士との直接対決に臨みました。熱海富士も稽古熱心な力士として知られていますが、霧島はこの取組に向けて「どちらが稽古をやってきたか。自信持っていかないとね。初日からきょうまで大事に取ってきたので、どれが一番大事というのはない。変わらず相撲を取っていこうかな」と気負いはありませんでした。

霧島は立ち合いで熱海富士の圧力を受け止めながら右腕を差すと、すきを見て左腕を巻きかえてもろ差しの体勢を作りました。

熱海富士との直接対決を制す

そのあとは、体が起き上がった熱海富士を一気に寄り切り、大関として格の違いを見せつけた一番となりました。

単独トップで迎えた千秋楽の朝もしこを踏み、立ち合いの確認を行うふだんどおりの稽古を行った霧島。「緊張感はどうか」という報道陣からの問いかけにも「変わらずに。逆に千秋楽だから思い切り相撲を取ろうかな」と、ここでも泰然自若でした。

師匠で元大関・霧島の陸奥親方は「今場所だけではなくて、積み重ねて休まずやってきているから。今回も巡業に出て、稽古して、その結果だろう」と目を細めていました。

鹿児島県出身の師匠のご当所でもある九州場所で最高の結果を出した霧島。年間最多勝も獲得し、大関としての責任と存在感を示しました。

《千秋楽・中入り後の勝敗》

▽十両の輝に錦富士は取り直しのすえ錦富士が「寄り切り」で勝ちました。

▽新入幕の北の若に平戸海は平戸海が「引き落とし」。

▽竜電に剣翔は竜電が「寄り切り」で勝ちました。

▽王鵬に御嶽海は王鵬が「押し出し」で勝ち越しました。

▽妙義龍に友風は妙義龍が「押し出し」。友風は負け越しです。

▽遠藤に新入幕の狼雅は狼雅が「小手投げ」で勝ちました。

▽一山本に金峰山は一山本が「はたき込み」で11勝を挙げました。一山本は敢闘賞を受賞です。

▽新入幕の美ノ海に翠富士は美ノ海が「押し出し」で勝って9勝目をあげました。

▽豪ノ山に湘南乃海は豪ノ山が「押し出し」で勝ち越しました。湘南乃海は負け越しです。

▽佐田の海に翔猿は佐田の海が「寄り切り」で勝ち越しました。翔猿は負け越しました。

▽高安に玉鷲は高安が「突き落とし」。

▽新入幕の東白龍に明生は明生が「押し出し」。

▽正代に宝富士は取り直しのすえ、正代が「押し出し」。

▽北青鵬に宇良は宇良が「押し倒し」で勝ち越しました。北青鵬は負け越しです。

▽錦木に北勝富士は錦木が「はたき込み」。

▽阿炎に朝乃山は朝乃山が「突き落とし」で勝ちました。

▽阿武咲に若元春は若元春が「寄り切り」で勝ちました。

▽琴ノ若に熱海富士は琴ノ若が「引き落とし」で勝ちました。琴ノ若と熱海富士はともに敢闘賞受賞です。

▽大栄翔に大関・豊昇龍は豊昇龍が「寄り切り」で10勝目をあげました。

▽大関・貴景勝に大関・霧島は霧島が「突き落とし」で勝って13勝2敗として九州場所を締めくくりました。