阪神 18年ぶり優勝の要因は“攻守両面の成長”岡田監督の指導

18年ぶりのリーグ優勝を達成した阪神。ペナントまで目前に迫ったシーズンもありましたが、わずかのところで逃してきました。

その優勝をつかみ取った要因は、今シーズンから再び指揮を執った岡田監督の指導による“攻守にわたる成長”でした。

【要因 その1】二遊間の徹底強化が結実

まずは守備からです。

阪神は、ここまでリーグ最少失点を続けています。

背景には岡田彰布監督が「守り勝つ野球」をテーマに掲げ、徹底的に守備を強化したことがあります。

中野拓夢選手 キャンプでの特守(2月)

就任後、真っ先に手を付けたのがセカンドとショートの二遊間です。

ルーキーから2年間、ショートのレギュラーに定着し、昨シーズンはベストナインに選ばれた中野拓夢選手をセカンドにコンバートしたのです。持ち味の俊敏性などを生かすための決断でした。

ショート 木浪聖也選手

ショートは、肩の強さに定評がありともに5年目の木浪聖也選手と小幡竜平選手を秋のキャンプから競わせました。

この二遊間が関わるプレーでキャンプから重点を置いたのが「ダブルプレー」をしっかりと確実にとることでした。

昨シーズンまでの阪神は、ダブルプレーをとれる場面で二塁でアウトにできても、一塁がセーフになってランナーが残るケースがありました。

岡田監督は、残ったランナーが失点につながっていたことに気づき、課題と捉えて、ひたすら基礎練習を課しました。

選手たちはノックを受けるだけでなく、打球が飛んで送球が二塁を経由し、一塁に到達するまでのタイムを繰り返し計るなどして、むだを省いて、プレーの精度を高めていきました。

(左)中野選手(右)木浪選手

迎えた今シーズン、ショートは主に木浪選手が起用されるなか、ダブルプレーの成功率を示す「併殺奪取率」は69.4%になりました。(9月10日時点)

昨シーズンの58.7%から格段に上昇したのです。

ダブルプレーがほしい場面で、バッテリーがゴロを打たせてアウトを確実に2つとる。

優勝のウイニングボールつかんだ中野選手(右)

岡田監督が生み出した新しい二遊間の守りを中心に何度もピンチの芽を摘み取ってきたことが、今シーズン、ここまでリーグ最少失点「374」につながり強さを裏付けています。

【要因 その2】ボール球の見極めが浸透

次は攻撃面からです。

今シーズンの阪神の攻撃で際立ったのがフォアボールの数。ボール球を見極める意識がチームに浸透し、地道に出塁して得点につなげたことで勝利を積み重ねてきました。

フォアボールを選んだ数は452個と12球団で断然トップです。(9月13日時点)

昨シーズンの358個に比べて、大きく増やしました。

岡田彰布監督は開幕前から選手たちにボール球を見極める重要性を伝え、さらに選手の年俸につながる基準のフォアボールのポイントをこれまでより上げるよう球団フロントに申し出たのです。

ボール球を見極め、フォアボールを選ぶことの重要性について岡田監督は現役時代にセカンドで活躍した自らの経験を踏まえて語っていました。

岡田監督
「逆の立場で考えると、守っている時にフォアボールで出塁されるとものすごく嫌。特にセカンドとショートの二遊間は、仕事もいろいろと増えるし、やることも多くなる。ヒットを打たれるのは仕方がないが、フォアボールで出塁されるのはつらい」

4番・大山悠輔選手

口酸っぱく選手たちに伝えてきたことはチームに浸透していきました。

▽4番の大山悠輔選手は昨シーズンの59個を大きく上回る88個
▽1番・近本光司選手が64個
▽2番・中野拓夢選手は5月の時点で、早くも昨シーズンの18個を超え53個になっていました。(数字は9月13日時点)

大山選手が押し出し四球選ぶ

またチーム打率は、リーグ3位ながら
▽得点数が500
▽出塁率が3割2分4厘で、いずれもリーグトップです。

シーズンを通してフォアボールで地道に出塁し、それを得点につなげてきました。

岡田監督は、8月22日の中日戦でフォアボール9個を選んで勝利したあと、報道陣に対して…。

岡田監督
「大事なところでボール球を振らない雰囲気で、ベンチの選手もボールを見極めた時がいちばん喜んでいる」

ボール球を見極める意識がチームに大きく浸透していることを明かしました。

決して派手とは言えないものの、岡田監督の目指す堅実な野球が18年ぶりの優勝をつかむ礎となったのです。

岡田監督「試合の中で徐々に力をつけていった」

優勝後の記者会見で岡田監督は、充実した表情で振り返りました。

岡田監督
「就任1年目でこんなに早くきょうを迎えると思っていなかった。5月ごろから白星を重ねて、若いチームなので、が、そのスピードが速かった。手応えはあったが、勝負の9月はどうなるかというところで、本当に力をつけてチームみんなの力だと思う。チームの中にいると、成長しているかは分かりづらいが、普通にやっていたら白星を重ねていったというのが正直な気持ちだ。監督が言うのはおかしいが、何となく強くなった。前回(2005年の優勝)は、2003年の優勝メンバーが多くて完成されたチームで、自分が言うこともなくて、選手とのコミュニケーションは少なかった。ことしは自分がやりたい、守り重視の野球を伝えていけないと思い、選手と話す機会が増えた」