阪神18年ぶりの「アレ」へ 地元商店街に早くも“2文字”の旗が

阪神ファンが待ち望む18年ぶりの「アレ」。関西では“その時”に備えた動きが出てきています。本拠地の甲子園球場がある兵庫県西宮市の商店街では、地元の人たちが早くも「アレ」の“2文字”の旗を掲げ、応援に熱を入れています。

そもそも「アレ」って何?

18年ぶりのリーグ優勝に向けてマジックナンバーを減らしている阪神の岡田彰布監督が、「優勝」を表現する代わりに使い続けてきたことばが「アレ」です。

岡田監督が優勝を「アレ」と表現するようになったのは、オリックスの監督を務めていた2010年でした。

交流戦の優勝に近づくなかで、選手に意識をさせ過ぎないようにと、「アレ」ということばを使いました。

15シーズンぶりに縦縞のユニフォームに袖を通すことになった去年10月の監督就任会見でも、「『優勝します』とはよう言わないですけど、『優勝』は『アレ』としか言ってなかったので」と宣言しました。

選手たちも今シーズンの前から「『アレ』を目指して頑張る」などと意気込みを語り始め、チームに浸透していきました。

さらに今シーズンのチームのスローガンも、「アレ」にちなんで、
▽目標を意味する「Aim」
▽敬意を意味する「Respect」
▽力をつけることを意味する「Empower」の
3つの英単語の頭文字を合わせた、「A.R.E.」になりました。

瞬く間に優勝を意味することばとしてファンの間にも広がり、監督と選手、スタッフ、球団、それにファンが一丸となって、18年ぶりの「アレ」を目指しています。

JR甲子園口駅近くの商店街「気が早い」「『アレ』は間違いない」

西宮市のJR甲子園口駅の近くにある「すずらん通り商店街」では、阪神のマジックナンバーが初めて点灯した8月16日から、通りの両側にあわせて25本の旗を掲げています。

タイガースをイメージした黄色い布に黒色の文字で「阪神タイガース優勝」と書かれていて、道行く人からは「気が早い」という声や、「『アレ』は間違いないです」という声が聞かれました。

「すずらん通り商店会」の莵原和義会長は「ことしは確実と思ったので、早めに旗を揚げました。小さい商店街ですが、力いっぱい応援しながら地域を盛り上げたいです」と話していました。

商店街では念願がかなった際のサービスを検討している店もあります。

店の外にマジックナンバーを貼り出しているラーメン店では、18年ぶりの優勝となれば、翌日はラーメンを1杯180円で提供するなどのサービスを予定しているということです。

ラーメン店の男性は「18年ぶりなので、本当は18円にしようと思ったけど、スタッフみんなに反対されたので、180円にします」と話していました。

大阪と兵庫 警察が警備強化 道頓堀の戎橋で立ち入り規制も

阪神が優勝すると、大阪市の繁華街などに多くの人が集まり優勝を祝うのが恒例となっていますが、2003年のリーグ優勝時には道頓堀の戎橋から5000人以上が川に飛び込む騒ぎとなり、1人が死亡したほか、複数のけが人が出ています。

前回リーグ優勝した2005年には戎橋周辺の通行を規制するなどの対策が取られ、川に飛び込む人は大幅に減りましたが、周辺は一時、身動きがとれないほど混雑し、歩行者が車道にまではみ出す事態になったということです。

大阪府警察本部は、今回もこうした事態が予想されるとして、優勝した場合には警備本部を立ち上げ、およそ1300人の態勢で警戒にあたることになりました。

当日はミナミの繁華街などを重点的に警戒するほか、飛び込みを防ぐため戎橋への立ち入りを一部規制したうえで、いわゆる「DJポリス」と呼ばれる機動隊員を配置し、歩行者の誘導や注意の呼びかけを行うことにしています。

大阪府警察本部は「人が密集すると大きな事故につながりかねないので、現場の警察官の誘導に従ってほしい。悪質な行為については厳正に対処していく」と話しています。

また、兵庫県警察本部は、優勝へのマジックナンバーが「2」か「1」になった時点で、総勢530人の警察官を動員し、大勢の人が集まる、▽甲子園球場、▽JR三ノ宮駅、▽阪神尼崎駅の3か所の周辺で重点的に警備にあたることにしています。

具体的には、各警察署や県警本部の交通部門の警察官などあわせて280人が専従で3か所の雑踏警備や交通誘導にあたるほか、機動隊などからも状況に応じて250人が配置されるということです。

兵庫県警地域企画課の担当者は、「ムードが高まって人が集まれば不測の事態が起こりかねない。状況を見極めながら事故防止に努めたい」と話しています。

道頓堀の店「常識の範囲で盛り上がって」

阪神が優勝した場合に多くの人が集まることが予想されている大阪 ミナミの道頓堀では、商店街の関係者などから期待と不安の声が聞かれました。

道頓堀商店街にあるたこ焼き店の35歳の男性スタッフは「阪神ファンなので、優勝して大阪の街が活気づくのはうれしいです。訪れる人たちには常識の範囲内で盛り上がってほしいと思います」と話していました。

串カツ店の40歳の店長は「18年前にリーグ優勝した時は、店の前にある看板や人形を壊された経験があります。盛り上がるのはいいことですが、盛り上がりすぎて物を壊したり勝手に持って行ったりするのはやめてほしいです」と話していました。

商店街の事務局によりますと、優勝が決まった場合に臨時休業などの対応をとるかどうかは決めておらず、状況に応じて個々の店の判断に任せるとしています。

戎橋やその周辺では、ところどころに日本語や英語など4か国語で「飛び込み危険」と書かれたポスターが貼られていて、警察と市が注意を呼びかけていました。

在京ファンも「アレ」待ち望む

阪神タイガースの18年ぶりの「アレ」、関西だけでなく東京のファンたちも待ち望んでいます。

東京・新橋駅近くにある飲食店、「TIGER STADIUM」は、阪神タイガースで投手として活躍した川尻哲郎さんが家族で経営する店で、試合日には、都内などから多くの阪神ファンが集まります。

12日の夜も、巨人戦をテレビで観戦しようとおよそ40人が訪れ、声援を送っていました。

店では優勝した日に備えて飲み物をふだんの2倍ほど準備していて、優勝が決まれば、「アレ」という文字がデザインされた特製のTシャツを客に配ることにしているということです。

また、優勝を祝した日本酒も準備して、全員で乾杯して祝う計画です。

店では予約も受け付けていますが今週金曜日の15日はすでにいっぱいで、ほかの日もふだんの倍以上の予約があり、席が埋まりつつあるということです。

仕事でメキシコに駐在していて、阪神の「アレ」を見るために一時帰国したという51歳の男性は、「毎年優勝すると思っていますが、ことしはやってくれると思っていました。優勝はもちろん、日本一になってほしい」と話しています。

また、神奈川県逗子市から来たという69歳の男性は「もう60年以上ファンをやっています。18年ぶりの優勝、絶対できます。応援しているので、頑張ってください」と話していました。

川尻さんは「ことしは投打ともに安定していて総合力がとても高いチームで、開幕当初からことしこそは『アレ』をやってくれるんじゃないかと予想していました。東京にも、根強い阪神ファンがたくさんいますので、皆さんと『アレ』の瞬間を、最高に盛り上がって迎えたいです」と話しています。