ジャニーズ事務所 会見で何を語った?9つのポイントを詳しく

ジャニー喜多川氏の性加害の問題でジャニーズ事務所は7日午後、都内で記者会見を開き、藤島ジュリー氏と東山紀之氏、それに井ノ原快彦氏らが出席しました。

約4時間にも及んだ会見では何が語られたのか?
そして専門家は会見をどう見たのか?

ポイントを詳しくお伝えします。

ポイント【1】性加害の事実認定と謝罪

会見は午後2時から都内の会場で始まり、藤島ジュリー氏と、東山紀之氏、井ノ原快彦氏、それに事務所の顧問弁護士の4人が出席しました。

会見の冒頭、藤島ジュリー氏が発言し「故ジャニー喜多川による性加害問題について、先月、特別チームによる報告書が公表されましたが、ジャニーズ事務所としても私個人としてもジャニー喜多川に性加害はあったと認識してしております。被害者の皆様に心よりおわび申し上げます」と述べ、事務所として初めてジャニー喜多川氏の性加害を認めた上で、謝罪しました。

その上で「ファンの皆様、取引先の皆様、そして今回の件で不快に思われたすべての方々に心よりおわび申し上げます」と述べました。

ポイント【2】藤島ジュリー氏の進退

会見でジュリー氏は「私、藤島ジュリーは特別チームの提言を真摯に受け止め、9月5日をもって経営責任を取り、社長を引責辞任しました」と述べ、後任として東山紀之氏が9月5日に社長に就任したことを明らかにしました。

一方で、自身は被害者に対する補償の責任を全うするため、当面、代表取締役には残ることを明らかにし、「いろいろ決めていく上で代表取締役でいるほうがよいと事務所で判断してとどまっていますが、補償が速やかに進めば代表取締役から降りることは考えております」と述べました。

また「所属タレントも非常に傷ついている。彼らのケアをすることが私の仕事だと思っている。それ以外は業務執行には関わらないつもりだ」と話しました。

加えて、代表取締役副社長の白波瀬傑氏も9月5日をもって引責辞任したとしました。

ポイント【3】新社長の東山紀之氏の芸能活動

新しい社長に就いた東山紀之氏はジャニー喜多川氏による性加害を認めて謝罪した上で、年内に芸能活動から引退することを明らかにしました。

会見で東山氏は「まずは喜多川氏の性加害を認め謝罪させていただきます。被害にあわれた方々長きにわたり、心身ともにつらい思いをした方々に本当に申し訳なく思います」と述べました。

その上で「この事実に真摯に向き合うため私は年内をもって表舞台から引退します。今後は人生をかけてこの問題に取り組んでいく覚悟であります」と年内で芸能活動を引退する意向を明らかにしました。

東山氏は「大変な事件、人類史上最も愚かな事件だと思う。喜多川氏の性加害が行われていた当時から、役職員は見て見ぬふりをして何の対策もしなかった。事務所としてこの点に対して深く深くおわびする。新しい事務所、新社長として徹底した再発防止策を考えるとともにガバナンスの再構築を行っていく。私はこのために命をかけて取り組んでいく」と述べました。

ポイント【4】被害者への補償・救済・対話

被害者への対応や、再発防止策については、社長を辞任した藤島ジュリー氏が、被害者に対して、事務所として補償を行っていく考えを示しました。

続いて、後任の社長に就いた東山紀之氏が、「被害者の方々の救済、補償に誠心誠意取り組ませていただくことがすべての出発点だと考えている。専門家による特別チームの事実認定と提言を踏まえて、外部からコンプライアンスの責任者を招へいし、人権侵害防止の体制を整備するなど、二度とこうした問題が起こらないよう、再発防止策を行っていく」と述べました。

また、被害者が直接の対話を求めていることについて、東山氏は、「被害に遭った方との対話は必要だと思う。双方の理解を深めるためにも意見交換という意味でも大事だ。被害者は数百人の可能性がある。心のケアの窓口を作って、そこで声を上げてくれたらうれしいが、なかなかそういうことは難しいだろう。どのぐらい時間かかるか分からないが、法を超えた救済補償が必要だと思っている」などと話しました。

第三者による被害者救済の委員会を設けるのかという質問に対しては、「設置はする。それに向けてまさに動いている。補償も含めて、これから動きます」などと話しました。

ポイント【5】性加害への認識があったか

藤島ジュリー氏「当時、確かめなかったのが私の責任」

ジャニー喜多川氏による性加害への認識について、藤島ジュリー氏は「暴露本が出たり雑誌で特集が組まれたりしているのは知っていたが、当時、確かめなかったのが私の責任であり、罪悪感がないということは全くない。親族であってもものを言えなかったというのが弊社のいびつなところで当時は何もできなかった」と述べました。

東山紀之氏「うわさ知っていたが喜多川氏を信じていた」

東山紀之氏は「さまざまな暴露本が出ていて、そういううわさがあるのを知っていたが、あくまでもうわさで、喜多川氏を信じていた」と述べました。

性加害を知った後の心情については「自分の根本であったものがすべて無くなった思いだ。人生というのはいいことばかりではなく、思いのほか落胆の連続ですが、これほどの落胆はなかった。生きている意味を含めて考えた」と話しました。

東山氏は「恥ずかしながらみずから行動することはできなかった。うわさとしては聞いていましたが、現場に立ち会ったこともなく、相談もなかったので、みずから行動できなかったことを反省して今後は対応していきたい」と述べました。

井ノ原快彦氏「えたいの知れない、触れてはいけない空気」

井ノ原快彦氏は「僕は小学6年生でジャニーズ事務所に入り、そういった本が出ていたので、まわりもみんなそうなのかなとうわさはしていた。そうなったらどうしようという話もしていた。小学生とか中学生の自分たちが『おかしいんじゃないか』とか『うわさを聞いたぞ』と言えなかったのは今となっては後悔している。言い訳になりますが、えたいの知れない、触れてはいけない空気みたいなものがあった」と述べました。

そして性加害を知ったあとの意識の変化について「本当にいろんなことを教えてもらったので、あの顔と裏の顔があるんだろうかと僕は非常に怖かった。2年間にわたり何回もと訴えている方などどんどん出ている。当時はうわさレベルだったが大人になっていろいろ考えると最近の方がショックだ。何てことをしてくれたんだと思っている」と話しました。

ポイント【6】「ジャニーズ事務所」の社名を変更するか

ジャニー喜多川氏の名前を冠した「ジャニーズ事務所」という社名については、変更しない考えを示しました。

東山紀之さんは「名称に関して大変議論した。どうするべきか、これだけの犯罪なので、これを引き続き守るべきか。ただジャニーズというのは創業者の名前であり初代でもあり、大事なのはこれまでタレントが培ってきたプライドなど、その表現の1つと思っている」と述べました。

その上で「再出発した方が正しいのかもしれないが、ファンの方に支えられているのでどこまで変更するのがいいのか考えてきた。今後はそういうイメージを払拭できるほど、頑張るべきだと今は判断している」と述べ、現時点で、社名変更の考えがないことを明らかにしました。

一方で、今後社名の変更を検討する余地があるか問われると、「それもある」と答えていました。

ポイント【7】「メディアの沈黙」

特別チームの報告書で今回の問題の背景に「メディアの沈黙」があると指摘されたことについて、今後の方針を問われた東山氏は「メディアとは対話は必要だと思う。深いところは分からないが、喜多川氏やうちの事務所がすべて悪いと思っている。僕自身がやることで対話が深まればいいと思う」と話していました。

また、辞任した白波瀬副社長が事務所を退所したタレントが出演できないように圧力かけたのではないかという指摘を受け、「そういう風に思われたのは事務所が悪い。その責任をとって白波瀬は退任した。これからどのようにメディアと付き合うっていくか前向きに考えたい。僕はすぐ記者会見にも出られるので対話も多くなる」と述べました。

その上で、東山氏は会見の終わりに「メディアはメディアで考えていただいて、その意見を頂戴したいと思う。過去は変えられないし、本音で話すこともできずに想像であるとかそんたくが働いている部分があったかと思う。今後、メディアとの意見交換の場を作ることは大事だと思う。これから本音で話し、意見をうかがう機会もなるべく作るようにしたい」と述べました。

ポイント【8】ファンに対して

この会見を見ているファンに向けてと問われると、東山氏は「過去は変えられない。裏切られたと思った人もいる。信頼を勝ち取るのは至難の業でこれから僕らが作るエンターティメントの世界を信じていただくために、タレント一人一人が自覚を持って取り組むことが近道だ。その信頼を勝ち取るのは個人の力、グループの力が合わさって初めて結実する。まずは努力を続けることだ」と話しました。

藤島氏は涙を浮かべながら「応援してくれているファンには本当に感謝の気持ちしかない。みんなそういうことがあってスターになっているわけではなく、1人ずつが本当に努力して地位を勝ち取っている。そこは失望してほしくない」と話しました。

ポイント【9】所属タレントや保護者に対して

所属タレントや保護者への対応について、井ノ原氏は「今回の会見について何も説明もないままご家庭で見るのは不安に感じると思い、10代の子には直接会って、こういう会見があるよと伝えた。小学生の子たちにはリモートですが親御さんにも不安にならないような声がけをさせてもらった。『うちの子はどうなんだろう』とかいろいろな不安があると思うので、できるかぎりの時間を設けてお答えしたいと思っている」と述べました。

《専門家はどう見た》

芸能史の専門家「内容は不十分 改革の経過をオープンに」

ジャニーズ事務所の会見について芸能史に詳しい学習院大学の周東美材教授は、「性加害の問題をめぐるこれまでの経緯を考えれば一定の前進があったと言える。ただ、芸能界で安定した地位を保ってきた事務所だからこそ、再スタートを切るためには思い切った改革が求められるが、会見で示された内容は大方の予想通りで不十分と言わざるを得ない」と話していました。

特別チームの調査報告書で今回の問題の背景の一つとして「メディアの沈黙」が指摘されたことを踏まえ、「なぜこの問題が長年にわたって放置されてきたのか、それぞれのメディアで当時の資料や証言を集めて、検証していく機会を作ることが必要だ。今回の問題をジャニーズ事務所だけでなく芸能界全体の問題として再検証していくことが求められる」と指摘しました。

さらにジャニーズ事務所の今後について「改革をどう進めていくか途中経過を定期的にオープンにしていくことが求められる」と話していました。

企業統治の専門家「経営経験ない社長の就任は少し心配」

ジャニーズ事務所の会見について、企業統治に詳しい高田剛弁護士は、「経営陣が会見に出席して言いにくいことを含めて説明したことは一定の評価ができるが、抜本的な再発防止策が提示されなかったことなどを考えると、及第点は与えられない内容だった。藤島ジュリー氏が代表取締役を辞任していないことも中途半端な印象を受けた」と指摘しました。

現時点で「ジャニーズ事務所」の社名を変更する考えがないとしたことについては、「マイナスイメージがついた社名をなぜ残さないといけないのか理解できず、残すのであれば説得力のある説明が必要だったのではないか」と話しました。

そして、東山紀之氏を社長とする事務所の新体制について、「失った信頼を取り戻すために、これまでとは違った形で会社を経営していく体制が求められている中、経営の経験がない東山氏が社長に就任することには少し心配がある。今回の問題は外部からも注目されており、この体制で社会の期待に応えられるということを早く見せていくことが求められるだろう。外部から有識者を招くなどしてより強固な体制を作り、創業家一族による経営から脱却していってもらいたい」と話しました。

性暴力の専門家「会社側は被害者のしんどさをよく考えて」

子どもの性暴力被害の問題に詳しく、臨床心理士で武蔵野大学名誉教授の藤森和美さんは「事務所が性加害を認めて謝罪したことや被害者を救済するという方針を明言したという意味では、1つのプロセスとして評価できるが、具体的な補償の内容が明らかにされておらず、その点は十分ではなかった」と指摘します。

今後の補償や救済に向けては「性暴力被害に遭った人たちは非常に無力感にさいなまれ、何度も交渉を進めていく上でいろんなことを思い出さなくてはならず、自分の気持ちを言語化していく過程がとてもつらい。補償に向けて会社側はそのしんどさをよく考え、外部の専門家の支援を得て多くの選択肢を提供することが重要だ」と述べました。

その上で、「いま事務所で活動している子どもたちは直接の被害に遭っていなくてもとても不安定になると思うので保護者や会社が支えていくことが大事だ。性被害を訴えている人たちにもより手厚い支援が必要だ。社会全体として子どもの性暴力被害に関し、積極的に取り組んでこなかった現実があり、実際にはずっと前から被害があったということに、社会も目を背けず真正面から捉えなくてはいけない」と指摘しています。