プロ野球12球団 “監督!ここまでどうでした?”

プロ野球はシーズンの前半戦が終了し、各チームともレギュラーシーズン143試合のうち、6割弱の戦いが終わりました。

ペナントレースはオールスターゲームが行われるため、いったんひと休み。順調に勝ちを重ねるチームもあれば大型連敗に苦しむチームもあり。セ・パ12球団の監督に、これまでの戦いぶりなどを聞いてみると12人それぞれの味わいある反応が返ってきました。

監督!ここまでどうでした?

《パ・リーグ》

パ・リーグ順位表(7月17日時点)

パ・リーグは上位3チームと下位3チームがくっきりと分かれる展開に。

優勝争いで抜け出しつつあるのが去年26年ぶりの日本一を達成したオリックスで、吉井新監督率いるロッテが2位につけています。

一方で、松井新監督が指揮を取る西武は5位、2年目の新庄監督が「日本一を目指す」と宣言した日本ハムは10連敗で最下位と明暗が分かれています。

オリックス:中嶋監督「満足は1つもない」

パ・リーグ3連覇を目指すオリックスは最も長い連敗が4連敗の1回だけと安定した戦いぶりを見せ、49勝32敗2引き分けの成績で2年ぶりに首位で前半戦を折り返しました。先発投手陣が安定していて、2年連続でリーグMVP=最優秀選手に輝いているエースの山本由伸投手が両リーグトップの9勝、プロ初登板で開幕投手に抜てきされた21歳の山下舜平大投手が8勝を挙げました。

打線も西武から移籍した森友哉選手がけがで2回離脱するなか、プロ5年目の頓宮裕真選手がリーグトップとなる打率3割1分8厘と好調で、チーム打率と1試合の平均得点はいずれも両リーグトップです。

オリックス 中嶋監督

中嶋監督は「けが人も多く出たし、不調な選手もいるなかで何とかやっているという感じだ」と不安を口にしながらも「全員が自分たちのレベルを上げようとする気持ちが非常に見えた」と選手たちを評価しました。

後半戦に向けては「満足する部分は1つもない。もっともっと苦しく、プレッシャーがかかるところもあると思うが、全員でやっていくしかない。3連覇は本当に目指してきたところで、どれだけしがみついていけるかだ」と気を引き締めていました。

ロッテ:吉井監督「日々失敗と成長」

ロッテは今シーズンからチームを率いる吉井監督のもと、1点差での勝利がリーグトップの19試合と勝負強い試合運びが光り前半戦を終え42勝32敗4引き分けの2位につけています。4年目の佐々木朗希投手もこれまで12試合に先発して7勝2敗、いずれもリーグトップの防御率1.48、121奪三振とチームを引っ張る活躍を見せています。

ロッテ 吉井監督

吉井監督は「チームの粘りが出てきていて、最後まで諦めずにプレーするというのをやり続けているのが、結果として出てきていると思う」と振り返りました。

その上で「チームがどうしたら勝ちきれるかばかり考えているし、どうしたら選手たちがハッピーになれるかだけを考えている。まだシーズン途中で、これからも選手それぞれ課題ややることがたくさんあると思うが、日々失敗と成長を繰り返しながらうまくなっていくと思う」と後半戦を見据えていました。

ソフトバンク:藤本監督「来月半ばからが勝負」

ソフトバンクは前半戦の最後に27年ぶりとなる9連敗を喫して、首位・オリックスと5.5ゲーム差の43勝37敗2引き分けで折り返しました。

ソフトバンク 藤本監督

藤本監督は前半戦について打撃陣では新加入の近藤健介選手をMVPにあげ「出塁率、得点圏打率ともずばぬけている」と評価しました。一方で、投手陣についてはリリーフ陣の負担が大きくなっていると指摘し「東浜巨投手や石川柊太投手には1番、引っ張ってもらわないといけない」と話し、先発投手陣の奮起をうながしました。

後半戦に向けては「初めに上位のロッテ、オリックスと対戦するので、しっかりと戦い、来月半ばまでには優勝争いに加わりたい。そこからが勝負だと思っている」と意気込みを示しました。

楽天:石井監督「後半戦向け『さあ、行くぞ!』」

楽天は序盤に出遅れましたが、7月は8連勝をマークするなど調子を上げていて39勝43敗1引き分けのパ・リーグ4位で前半戦を終えました。

楽天 石井監督

石井監督は「4月と5月はチームにとっても選手にとっても苦しい戦いになった。順位的にはよくないが、ここ10何試合は選手がパフォーマンスをあげてきてくれていて、後半に向けて『さあ行くぞ』という状況まで持ってこれた」と振り返りました。

後半戦に向けては「投手陣が先発・リリーフ含めて9イニングでどれだけ失点を少なくしてチームに勝つチャンスを与えてくれるかが大事だと思う。今は若い選手も試合の中で経験を積むことができているので、もっとレベルアップしてもらいみんなで戦っていきたい」と意気込みを語りました。

西武:松井監督「僕がしっかりしないと」

西武は、けが人が相次いだことや書類送検された主力の山川穂高選手が1軍を離れている影響もあり、6月には最下位に転落するなど苦しい戦いが続きました。それでも、前半戦の最後に調子を上げて5年ぶりとなる6連勝で締めくくり35勝47敗1引き分けの5位で折り返しました。

西武 松井監督

松井監督は「日々の勝ち負けの中で反省をしながらも学ぶことが多々あった。同じ内容の試合がない中で僕もいい経験をさせてもらっているし、選手に助けられていることももちろんある。そういう意味でも僕がしっかりしないといけない」と話しました。

その上で「前半戦を6連勝で締めくくることができて、いい形で後半戦に入っていける。残り60試合あるが、ファンの期待に応えられるよう1試合1試合しっかり準備をして戦っていきたい」と巻き返しを誓いました。

日本ハム:新庄監督「まだチャンスある」

日本ハムは2年目の新庄監督が開幕前に「日本一を目指す」と宣言、前半戦では、チーム防御率が2.90でトップと投手陣が安定し、プロ5年目で、リーグ2位のホームラン15本をマークしている万波中正選手の活躍などで、一時は4位につけましたが、今月に入り6年ぶりの10連敗を喫し、前半戦は負け越し「15」で最下位になりました。

日本ハム 新庄監督

新庄監督は「いい戦いをできるチームになったことは間違いない」と若手中心のチームを評価し「後半もいい戦いが必ずできるから、下を向かずにやる。優勝しか目指していないし、まだチャンスはある。クライマックスシリーズに食い込んで、そこから一気にいける若い力がある」と話し、ここまでの厳しい成績にも前を向きました。

《セ・リーグ》

セ・リーグ順位表(7月17日時点)

続いてセ・リーグ。優勝争いは混戦模様で今シーズン、新監督が就任した2チームが上位につけています。

15シーズンぶりに岡田監督が復帰した阪神が首位、12球団最年少、46歳の新井監督が率いる広島が2位に。一方で、リーグ2連覇中のヤクルトは5位と苦戦しています。

阪神:岡田監督“アレ”に向け「どっしり戦う」

阪神は岡田監督のもと、5月は9連勝するなど球団の月間勝利記録に並ぶ19勝を挙げました。6月は5連敗するなど大きく負け越しましたが、46勝35敗3引き分けで2年ぶりに首位で前半戦を折り返しました。

チーム防御率は2.79でリーグトップと投手陣が好成績を支え、岡田監督も前半戦、最も活躍した選手に今シーズン現役ドラフトで加入し、チームトップの7勝を挙げた大竹耕太郎投手と、プロ初勝利を含む6勝をマークした村上頌樹投手の2人をあげました。

阪神 岡田監督

岡田監督は「5月はできすぎで、あんなにうまくいくことは1年間でもそんなにない。辛抱する気持ちでいかないといけないと思っていた。いいときと悪いときの差が激しかったが、総合的に見るといい前半戦だったと」と振り返りました。

岡田監督が「アレ」と表現する18年ぶりの優勝に向けた後半戦については「勝負はビジターが続く夏のロードを乗り切って甲子園に帰ってきてからだ。いい時の感じを思い出してどっしりと戦っていきたい」と意気込みを話しました。

広島:新井監督「チーム成長の証」

リーグ3連覇の後は4年連続4位以下と苦しむ広島。今シーズンは10年ぶりの開幕4連敗といきなりつまづきましたが、若き指揮官のもと、その後は持ち直しました。先月は14勝9敗と調子を上げ今月も5連勝で前半戦を終えるなど、首位の阪神と1ゲーム差の2位と上々の成績で前半戦を折り返しました。

広島 新井監督

新井監督は「厳しい戦いばかりだが、ものにできるということはチームが成長している証しだ」と手応えを話しました。

先月以降の好調の要因については、これまでに「先発ピッチャーがしっかりとゲームを作ってくれているしブルペンもどの展開でも耐えて頑張ってくれている。その間に野手陣が得点を重ねて逆転するなどいい循環になっている」と話し「選手には頭が下がります」とチーム状態のよさとともに監督の人柄を感じさせることばも聞かれました。

DeNA:三浦監督「くらいついていく」

DeNAは、打率と得点がリーグトップ、投手陣もエース・今永投手と東克樹投手の両左腕に加え大リーグでサイ・ヤング賞の受賞経験もある新加入のバウアー投手が先発の柱として力を発揮し、序盤から上位をキープしました。しかし今月に入ってややもたつき、前半戦最後の3連戦では上位を争う広島に3連敗を喫し、勝ち越し「5」、首位と3ゲーム差の3位で前半戦を終えました。

DeNA 三浦監督

三浦監督は「いい面も悪い面も出てきたなかで、もっと取り組んでいかないといけないことが出てきている。そこは全員が理解して継続してやっていくことが大事だ」と振り返りました。

そのうえで「ここ最近、負けが込んでいるが、いい部分も出てきていて今の順位にいるので、しっかりくらいついていけるようにやっていきたい」と後半戦に向けて意気込みを話しました。

巨人:原監督「直せるところは訂正」

通算17シーズン目となる原監督のもと、3年ぶりのリーグ優勝をねらう巨人はアップダウンの激しい前半戦に。開幕からしばらくは下位に低迷しましたが、交流戦で優勝争いをして、勝ち越しを最大で「5」まで伸ばしました。しかし攻守の要の坂本勇人選手がけがで戦列を離れると、徐々に打線に勢いがなくなり、チーム防御率も3.64とリーグワースト。前半戦最後の試合も延長戦の末にサヨナラ負けで5連敗を喫し、40勝42敗1引き分けの成績で4位で折り返しました。

巨人 原監督

原監督は前半戦最後の試合のあと「もう1回、いいところは伸ばして、直せるところは訂正しながらやっていく」と話し「時間を有効に使っていく」とオールスターゲームで公式戦がない期間をチームの立て直しに充てる考えを示しました。

ヤクルト:高津監督「一生懸命に、もっとうまく、賢く」

ヤクルトはリーグ3連覇を目指していますが4月には7連敗、5月には引き分けをはさみ12連敗と流れに乗れず、35勝46敗2引き分けの成績で5位に沈んでいます。昨シーズン、三冠王に輝いた4番の村上宗隆選手も打率2割4分2厘、ホームラン16本、打点49と本来の力を発揮できていないほか、キャプテンの山田哲人選手も今月に入り1軍登録を抹消されるなど苦しいチーム事情となっています。

ヤクルト 高津監督

高津監督は「いろんなイメージを持ってスタートしたが、うまくいったところとうまくいっていないところがある」と前半戦を振り返りました。

後半戦に向けては「残り60試合、できることを一生懸命、取れるアウトを一生懸命、防げる1点を一生懸命、それに尽きる。みんな一生懸命、頑張っているがもっと野球をうまくならないといけないし、賢くやらないといけない部分もたくさんある」と、さらなる奮起を促していました。

中日:立浪監督「勝負の世界は結果がすべて」

中日は前半戦、投手陣の防御率は2.92でセ・リーグ2位と安定していましたが、攻撃陣はリーグ最低の244得点に終わり、2年連続となる最下位でシーズンを折り返しました。

中日 立浪監督

立浪監督は「開幕してずっとなかなか点が取れずに先発ピッチャーの足を引っ張ることが多かった。また守備のミスも多く取れるアウトを取れなかった」と振り返りました。

その上で後半戦に向けて「とにかく今は必死になって勝ちに向かって戦っていくことが大事だ。そのなかでいい結果が出たり、うまくいかないことはある。今出ている選手を1人前にできるようにこちらとしても必死になって一緒にやっていきたい。勝負の世界は結果がすべてなので勝ちに対して貪欲に必死になっている姿をファンに見せたい」と巻き返しに意欲を示しました。

《関西勢 阪神・オリックス首位ターンは3回目》

阪神とオリックスが同時に前半戦を首位で折り返すのは、パ・リーグが2シーズン制だった時期を除き、前身の阪急を含めて3回目になります。

プロ野球で今の2リーグ制は1950年(昭和25年)に始まりました。

【1972年】
阪神とオリックスが初めて同時に前半戦を首位で折り返したのは、1972年(昭和47年)でした。阪神が2位に1ゲーム差、オリックスの前身の阪急が2位に7.5ゲーム差をつけていました。阪神は、当時4年目の田淵幸一さんが34本のホームランを打ち、江夏豊さんが23勝を挙げましたが、巨人との優勝争いに敗れ、2位となりました。一方、阪急は福本豊さんがシーズン世界記録となる106個の盗塁を決めてチームを引っ張ったほか、エースの山田久志さんが20勝を挙げて最多勝となりリーグ優勝を果たしました。

【2021年】
2回目はおととしで、阪神が2位に2ゲーム差、オリックスが2位に1.5ゲーム差をつけて前半戦を終えました。阪神はこの年ルーキーだった佐藤輝明選手が前半戦だけで20本のホームランを打ち、青柳晃洋投手がシーズンで13勝を挙げ最多勝に輝きましたが、主力選手の相次ぐ不振が響き、ヤクルトに勝率で5厘及ばず、2位となりました。一方、オリックスはMVPに輝いたエースの山本由伸投手と首位打者のタイトルを獲得した吉田正尚選手の投打の軸がチームをけん引し、25年ぶりのリーグ優勝を果たしました。

日本シリーズの関西対決なるか?

これまで阪神とオリックスが同じシーズンで同時に優勝したことはなく、日本シリーズで対戦する“関西対決”が実現したことはありません。

一方で、関西を本拠地とするチームどうしによる日本シリーズは1回だけありました。1964年に行われた阪神と、大阪市浪速区の大阪球場を本拠地としていた南海の対決でした。この日本シリーズでは南海が4勝3敗で日本一になり、ジョー・スタンカさんが3回の完封勝利を挙げる活躍を見せました。このシリーズは、両チームの当時の親会社がそれぞれ大阪市の梅田と難波の駅を拠点としていたことから“御堂筋シリーズ”とも呼ばれました。