日本郵政 850億円の特別損失を計上発表 楽天の株価大幅下落で

日本郵政はおととし1500億円を出資して資本提携を結んだ楽天グループの株価が大幅に下落していることを受けておよそ850億円の特別損失を計上すると発表しました。
日本郵政は国も株式を保有し、郵便事業などを手がけることから当時の経営判断の是非が問われることにもなりそうです。

日本郵政はおととし3月、物流事業の強化などのため、楽天グループと資本・業務提携を結び、およそ1500億円を出資しました。

しかし、楽天は携帯電話事業の業績悪化が続く中、5月、公募増資を発表して以降、株価が一段と下落し、6月30日の終値は1株499円と日本郵政が株式を取得した際の1145円の半分以下となっています。

このため日本郵政は、保有する株式の価値を見直し30日、およそ850億円の特別損失を計上すると発表しました。

日本郵政は、2017年にも買収したオーストラリアの物流会社の業績の悪化で4000億円を超える損失を計上し、外部の企業の提携や買収で相次いで多額の損失を出す結果となりました。

日本郵政は、株式の34%余りを国と地方公共団体が保有し、郵便事業などを手がけることから当時の経営判断の是非が問われることにもなりそうです。

日本郵政は、今回の特別損失の計上について「コメントは差し控える」としています。

約1500億円を出資 日本郵政と楽天グループの提携とは

日本郵政は、2021年3月に楽天グループと資本・業務提携を結び、およそ1500億円を出資しました。

両社は、物流拠点を共同で運営するほか、全国の郵便局で楽天の携帯電話の申し込みの受付を行うなど提携を進めてきました。

日本郵政としては、手紙やはがきなどの郵便物の取り扱いが減少するなか、楽天が手がけるネット通販の荷物の取り扱いを増やすことで物流事業の売り上げを拡大するねらいがありました。

両社は共同で「JP楽天ロジスティクス」を設立し、千葉県や大阪府など全国10か所で物流拠点を運営していますが、事業の赤字が続いています。

日本郵政の増田寛也社長は、6月27日に開いた記者会見で「ゆうパックを下支えするようになってきている。できるだけ早く黒字に持っていきたい」と述べていました。

一方、楽天としては、携帯電話事業で基地局の整備などに多額の費用がかかるなか、日本郵政からの出資で得た資金を設備投資に充てることが目的でした。

また、全国の郵便局に展開していた携帯電話の申し込み受付カウンターは、一時はあわせて285か所にのぼっていましたが、思うような効果が得られなかったことなどから、現在は81か所に縮小しています。

楽天グループの株価下落の背景は携帯電話事業の赤字

楽天グループの株価は、日本郵政が出資した2021年3月と比べると、半値以下まで下落しています。

背景にあるのが2020年に本格参入した携帯電話事業の赤字です。

基地局の整備費用がこれまでに1兆円にのぼるなど多額の負担が続いてきたうえ、大手3社からシェアを奪うことができず、事業の黒字化が見通せない状況となっています。

さらに来年以降は、基地局の整備費用を賄うために発行した多額の社債償還が控えています。

このため楽天はことし5月に新たに株式を発行して市場から資金を調達する公募増資と、IT大手のサイバーエージェントなどを引き受け先とする第三者割当増資を実施して、財務基盤の強化を図りましたが、その結果、株価は一段と下落しました。

会社は6月1日からはKDDIから回線を借りるローミング契約を見直して通話やデータ通信のつながりやすさを訴求した新たなプランの提供を開始し、顧客の獲得を目指していますが、業績の改善は道半ばで株価の回復にはつながっていません。