賜杯への執念をまざまざとみせつけた。白鵬(31)が勝ちに徹した相撲で日馬富士を下し、14勝1敗で4場所ぶり36回目の優勝。自身の持つ史上最多優勝記録をさらに更新した。
千秋楽は、負ければ稀勢の里との優勝決定戦に回る可能性があった。それだけに日馬富士を左に変わって突き落とし。手堅く勝ちにいった格好。館内には大ブーイングが飛んだ。
「まさか、あれで決まるとは。初日の負けがいいクスリだった。これでやっと(年に1度のモンゴル相撲で6回優勝の)父に並ぶことができた」。土俵下の優勝力士インタビューでは、感激と反省が交錯、何度も声を詰まらせ、涙を流した。
今場所前の11日に満31歳になった。力士としては晩年にさしかかっている。敬愛する横綱大鵬は引退が近づいたとき、「富士山の裾野を行くように、ゆっくり降りてきなさい」と後援会会長に言われたそうだ。だが、今場所の白鵬は気迫に満ちた相撲で稀勢の里や豪栄道を退け、まだ上り坂を上っているような印象を受ける。
その一方で、日本国籍を有していれば、もらって当然の一代年寄にも強い関心を示す。去年の11月、北の湖前理事長が急逝したときも「あの人の手からもらいたかった」と嘆いている。
28日午後、その北の湖前理事長の後継者を決める、日本相撲協会の理事長改選が行われる。現職の八角理事長(元横綱北勝海)と貴乃花親方(元横綱)の一騎打ちが予想されているが、すでに八角理事長が幅広く支持を集め、続投が確実な情勢だ。
かつて、故・北の湖前理事長は白鵬の一代年寄について「日本に帰化しない限り認めない」という姿勢を貫いていた。八角理事長も北の湖路線の継承を打ち出しており、一代年寄をもらえる目途は、まったく立っていない。横綱は優勝を重ねても心が晴れない日が続きそうだ。 (大見信昭)