巨人との直接対決で敗れ、交流戦自力優勝が消滅したオリックス・森脇浩司監督(53)。実は、ONが一目置いた伝説を持っている。ありがた迷惑な恩返し? を免れたNはホッと一息だが、Oの方は戦々恐々だ。
交流戦優勝のかかった、この日のセ・パ首位チームの激突を、くしくも巨人・長嶋茂雄終身名誉監督が東京ドームで観戦した。誰も予想しなかった、大本命ソフトバンクを抑え、パ・リーグ首位を行くオリックス・森脇監督を見て、感慨深いものがあっただろう。
長嶋氏が森脇監督を目にとめたのは04年2月、アテネ五輪日本代表監督としてダイエーの宮崎春季キャンプを視察した時のことだ。「あのノックをしているコーチは誰だい、ワンちゃん」と驚きの声を上げ、尋ねた。「森脇ですよ」と答える王監督に礼賛したのだ。
「森脇ね。今時あれだけのノックを打てるコーチはどこを探してもいない。あの名人芸のノックだけで飯を食えるよ」と。王監督とすれば、わが事のように鼻高々だっただろう。「キャンプではトレーニングコーチと、内外野の連係プレーを徹底指導する森脇が監督のようなもの。オレのやることなんか何もないよ。特にキャンプ前半は」というのが、王監督の弁だったからだ。
名参謀役だった森脇コーチは、06年夏に胃がんのため戦線離脱した王監督の後を受け、監督代行を務めた。この時は惜しくも日本シリーズ出場は逃したものの、チームをプレーオフに出場させ、評価を高めている。
そんな森脇監督が交流戦優勝争いで、巨人・長嶋終身名誉監督、ペナントレースでソフトバンク・王球団会長の前に立ちはだかり、ONにとってはありがた迷惑な? 恩返しの可能性が…。まずNは難を逃れたが、Oの方はマッチレースの行方は長期戦。枕を高くして眠れない日々が続く。 (江尻良文)