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【なだぎ武】笑いも舞台も型破り 由緒ある京都・南座でも隙あらば「どこでアドリブいれよーかなー」

2014.10.08


なだぎ武【拡大】

 職人気質のひとり話芸で、「R−1ぐらんぷり」を2007年から2連覇した腕前の持ち主。吉本所属のお笑いユニット「ザ・プラン9」のメンバーでもあるが、なぜか現在、ライバル松竹の聖地ともいえる京都四條南座に出演中だ。

 そのワケを明かす前に、今年1月、大阪のライブ中に起きたハプニングから語ってもらおう。

 「学校を舞台にしたコントで転ぶアクションがあったんです。千秋楽だから大げさにイッちゃって、地に着いたらいつもの痛さと違う。脂汗とめまいの中『保健室に行ってきます…』とアドリブでその場をしのいだんですけれどダメでした」

 救急車で緊急搬送され、診断は肋骨(ろっこつ)の軟骨部分骨折。人気芸人にとって、痛〜い年明けとなった。

 ところが、体当たりの熱心さに芝居の神様が「もっと、いかんかい!」と、後押ししたのか、出演依頼が舞い込みまくり。ミュージカル「天才執事ジーヴス」をはじめ、立て続けに5本も。

 そして、今月4日初日を迎えた10月公演「南座ミステリー劇場『疑惑』」(松本清張原作、26日まで)のオファーがやってきた。

 「最初は、お笑い系の役者の方が集まったコメディーなのかなと思ったら、サスペンスの舞台でしょ。ナニそれ、ウソやろ? って感じで違和感がありましたよ」

 もともと縁が無いわけではなかった。

 「実は清張さんとの初セッションは昨年ありました。2時間テレビドラマ『留守宅の事件』(テレビ東京系)で、刑事役の寺尾聡さんに取り押さえられてしまう役なんですけど、出演時間はオープニングのたった1分でした」

 こんどは、約1カ月間の長丁場。えらい違いだ。『疑惑』と言えば映画やドラマでもおなじみの清張ミステリーで、今回が初の舞台化。保険金目当てで夫殺しの容疑をかけられた悪女・球磨子(浅野ゆう子)と弁護人(高橋惠子)が法廷で激しく火花を散らす。

 球磨子の昔の情夫という重要な役どころを得た。

 「ひとくせもふたくせもあるダメな奴なんですけれど、球磨子に対する情や腐れ縁を感じながら、最後はきっちりと男の仁義を通す憎めないキャラクターなんです。初めは嫌いになっていただき、最後はちょっと哀愁を感じていただく。責任を感じつつ演じたいと思っています」

 江戸時代から続き歌舞伎の顔見世でも知られる由緒ある南座に立つ。

 「吉本にいながらにして、松竹さんの歴史のある大きい舞台に出していただくというのは、本当にうれしいですね。ましてや、伝統芸能を軸とした小屋で現代劇ができる。いろんな意味での挑戦なのかな。ボクの大好きな『男はつらいよ』の山田洋次監督が舞台を偶然ごらんになって、『コイツに平成の寅さんをやってほしい』みたいな巡りあわせがあればいいんですがねぇ」

 そんな重圧にも負けない強烈なキャラクターが身上だ。

 「アドリブをどこまで入れたらいいのだろうかと探りながら、隙間があれば、遊び心で試しています。どこかで芸人魂が出てしまうのかもしれませんね」

 かつて、友近とのコンビで米人気ドラマ「ビバリーヒルズ高校白書」のディラン&キャサリンに扮したパロディーが大いに人気を呼んだ。

 「千秋楽は浅野ゆう子さんと一緒に自転車に乗って南座を駆け抜けて、キャサリンになってほしいですね」

 芸人として来年25周年を迎える。

 「ある番組に(笑福亭)仁鶴師匠が初老役で出ておられた。少年ジャンプを抱えて出てくるだけで、もう笑っちゃうんですよ。ボクも師匠のようにコントをずっとやれるキャラクターでいたいですね。継続は力なりで、辞めずにやり続けると何かがあると思うんです」

 板の上で着実に成長してきた人懐っこい笑顔が、弾けた。(ペン・高山和久 カメラ・矢島康弘)

 ■なだぎ・たけし お笑い芸人。1970年10月9日生まれ、43歳、大阪府堺市出身。大阪NSC(吉本総合芸能学院)の8期生。同期に、千原兄弟、FUJIWARA(藤本敏史、原西孝幸)ら。89年、「スミス夫人」を結成するも、2001年に解散。02年、演劇的コントのユニット「ザ・プラン9」に加入。同時にR−1ぐらんぷりに出場を続け、07年に王者。翌年に史上初の連覇を果たす。09年には、宮本亜門演出のミュージカル「ドロウジー・シャベロン」に主演。11年、自伝『サナギ』(ワニブックス)を出版。お笑いの職人的な芸をテレビ、ライブなどで披露する傍ら、舞台、映画、ドラマなど活躍の場を広げている。

 舞台「南座ミステリー劇場『疑惑』」は、26日まで。問い合わせはチケットホン松竹((電)0570・000・489)

 

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