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【水森かおり】“ご当地ソングの女王”果てしなき夢

2012.09.19


水森かおり【拡大】

 “ご当地ソングの女王”の夢は果てしない。

 「全国制覇で〜す! やりたいですね。ええ、とても楽しみだけど、その時は私はいくつになってるんだろうかって、ははは…。でも、制覇したい」

 澄み切った声、情緒豊かに日本の風情を歌い込む歌唱力…。『竜飛岬』(1999年)から出発したご当地ソングは、数を重ねるごとに人気を博している。全国制覇もそう時間はかかるまい!?

 今年4月に発売したご当地シングル『ひとり長良川』は13作目。くしくも5月に急逝した所属事務所会長、長良じゅん氏(享年74)が戦時中に疎開した“ゆかりの地”。何かの縁だろう。

 「キャンペーンを長良川のほとりでやったんですが、爆弾低気圧で豪雨…。ビショビショになっても(長良氏は)ずっと側にいてくれた。考えればどこのご当地でも一緒に戦ってくれた人でした」。だから旅情を伝えるのに気持ちが入る。

 「会長の存在を感じながら、これからも歌っていきたい。どの場所でもそうですが、たとえば長良川では、きれいな風景の下を恋に破れた女性がひとり旅をして、こんな気持ちで歩いてます…という伝え人になりたい。私の中に俯瞰(ふかん)の景色があるんです。客観視することで聞く人は想像力を膨らませる。歌は“生き物”だし、私も歌うたびに新たな発見をする。それを感じてほしい…」

 聴衆の想像力は無限になる…なかなかいい法則である。さらに、日本の演歌、歌謡曲に元気がないことも危惧する。

 「テレビから歌番組が消えて演歌を聞く環境がなかなかない。けど、聞いたら“結構、いい歌だな”ってきっと思ってもらえるはず。私とか(氷川)きよしクンとか若い世代のわれわれが演歌の世界を広げてその奥深さを知ってもらえれば…」

 トップランナーであるという意識はアルバム作りにも表れる。通算11作目となる、『歌謡紀行11〜ひとり長良川〜』(9月26日発売)。自らのヒット曲に加え、今回も小柳ルミ子の「わたしの城下町」、奥村チヨの「終着駅」、西田佐知子の「赤坂の夜は更けて」など往年の名曲をカバーしている。過去の紀行集もいくつもの名曲が網羅されており、“歌謡曲振興”につとめる。

 ところで、今回の「ひとり〜」で、自身10カ所目となる観光大使“清流長良川親善大使”に就任した。「光栄です。特定の場所の宣伝ということでなく、私が歌うことでソコに行ってみたいと思ってくれるだけでいいのかなって…」。いいスタンスである。

 最近はバラエティー番組にも出演して、“新たなキャラ”も披露する。ある番組で過去の恋愛を吐露したところ、「すごい反響があって。みんな見てるんですね、恥ずかしい」。女王は顔を赤らめた。意外にウブ!? ところでマジで結婚願望は?

 「(昨年結婚した同じ事務所の田川)寿美ちゃんから“道は作ったよ”って言われて、困ったなって。ペンペン草が生える前に私もソコを歩いていかなきゃって思っているけど、そういうのが全くないんです。一番下の(岩佐)美咲ちゃんが17歳なので、美咲ちゃんだけには抜かされたくない、ソコだけは守りたいって。ははは…」

 こんな環境では、当分は縁がない!? 「だから犬でも飼おうと思ったけど、友達みんなに“そんなことしたら、一生結婚できないっ”て。ですよね〜。いま、休みの日の最高の贅沢は目覚ましをかけないで眠ること。あとは洗濯して、食事はよく豚しゃぶを作るんですが、立ったまま鍋から食べちゃう。ははは…ダメですよね」。

 そんな“ひとり女王”のストレス解消はユニークだった。通販で購入した『叫びの壺』。「壺に向かってたとえば、“バカヤロー”って叫ぶと、漏れてくるのはほんの小さな、ささやかな声だけ。壺にすべての怒りをぶつけてください、って。結構、叫んでます。でも、つまんないプライベートですよね。ははは…」

 しばらくは“歌が最大の恋人”のようだ。(ペン・清水満 カメラ・古厩正樹)

 ■みずもり・かおり 1973年8月31日、東京都北区生まれ、39歳。本名・大出弓紀子(おおで・ゆきこ)。95年、「おしろい花」でデビュー。2003年の「鳥取砂丘」が大ヒットし、日本レコード大賞金賞など数々の賞を受賞、NHK紅白歌合戦に初出場を果たし、昨年まで9年連続出場中。今年発売の「ひとり長良川」がオリコン週間シングルチャートでトップ10入り。04年発売の「釧路湿原」から9作連続初登場トップ10入り。女性演歌歌手では歴代1位で記録更新中。

 9月25日、東京・中野サンプラザホールでメモリアルコンサートを行う。問い合わせはエイ・アンド・エイチケットセンター((電)03・5770・3665)。

 

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