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【篠田麻里子】麻里子さま、実は“下からマリコ”

2011.12.06


篠田麻里子【拡大】

 いつも目の前には前田敦子や大島優子がいた。ファン投票で順位を争う過去3回の「AKB48選抜総選挙」では3位、3位、4位と安定した人気を誇るが、AKB48のセンターポジションは「近いようで遠い場」だった。

 9月20日に武道館で行われた「じゃんけん選抜大会」。運だけで勝ち抜いたメンバー16人が新曲を歌い、優勝者はセンターを務める。手中に収めた瞬間、「魅惑のポーカーフェース」と称されるクールな彼女の顔をうれし涙が伝った。

 「他のメンバーのチャンスを奪ったようで申し訳ない気持ちもあったんですけど、いざなってみると、やっぱり気持ちいいですね」

 サプライズはセンターを射止めただけではなかった。じゃんけん選抜のメンバーが歌うAKB48の24枚目シングルは、その名も「上からマリコ」(今月7日発売)。メンバー名を曲名に冠したのはAKB48史上初めてだ。

 CDのジャケット写真は、ガリバーと化した彼女が他のメンバーを見下ろすというもの。プロモーションビデオ(PV)は1人だけ衣装が異なり、まさに彼女を中心にすべてが展開する。初めて「PV撮影現場一番乗り」も経験し、「結構センターって忙しいんだな」と実感したという。

 AKB48最年長で、メンバーに「麻里子さま」と慕われる。だが、決してリーダータイプではない。リーダーになりたいと思ったこともないという。「上から言われるのって、すごく嫌じゃないですか。目立ちたがり屋でもないですし」と、曲名とは真逆の謙虚さだ。

 テレビ、映画、雑誌、CMとひっぱりだこで、責任編集を務めた「MARIKO magazine」(集英社)は17万部に到達。ツイッターのフォロワーは76万人を突破し、芸能人ではトップ級だ。

 168センチのスラリとした体形に独特のショートカット。これだけの美貌と人気ならば当然、街でも目立つと思いきや、意外な答えが返ってきた。

 「『あっ! AKB48だ!』じゃなく、『篠田麻里子だ!』と言われるようになったのは最近のことなんです。芸能人なんだなあと思いました」

 自覚が芽生えた出来事はほかにもあった。3月11日の東日本大震災。25回目の誕生日に起きた悲劇の一報を聞いたとき、メンバーと仕事で海外にいた。情報が入らず、不安な時間を過ごした。

 帰国後、AKB48が始めた復興支援「『誰かのために』プロジェクト」の第1弾として5月に岩手県を訪問した。瓦礫だらけの「街があった場所」を通り抜けると、大勢の人が待っていた。

 トラックの荷台での即席ミニライブと握手会。感激のあまり泣く子もいた。「人の役に立つ」と実感できる経験だった。

 「どんな顔をして会えばいいんだろうとすごく不安でした。でも、すごくあたたかく迎えてくれて。少しでも早く復興できるように私も頑張っていきたいと思います」

 中高生メンバーも多いAKB48にあって「そろそろ制服を着るのは限界では?」と卒業説も流れる。だが、そんな懸念も軽く払拭してくれた。

 「自分で限界を決めたら、それで終わり。制服が限界だと思ったら(AKB48も)限界だと思うけど、あまり考えたことはありません。自分の好きなことをして、すごく楽しんでいるので」

 そして、もう一言。

 「いろんな世代の人にもっと名前を知ってもらえたらうれしいと思いますね。私のことをあまり知らない方もいると思うので、ぜひお願いします」

 上から目線のサディスティックな歌詞が並ぶ新曲だが、いやいやどうして。「国民的アイドル」の頂点に立ちながら、なお貪欲さを隠さない笑顔に人気の源を見た。(ペン・酒井充 カメラ・荻窪佳)

 ■しのだ・まりこ 1986年3月11日生まれ。福岡県出身。2005年、秋葉原のAKB48劇場隣のショップで働いていたところをファンに評価され、06年にデビュー。AKB48のほか個人としてNHK「麻里子さまのおりこうさま!」、フジテレビ系「うまプロ」、日本テレビ系「PON!」のレギュラー番組やCM、ラジオにも多数出演。雑誌「MORE」(集英社)の専属モデルとしても活躍する。今年、「犬とあなたの物語 いぬのえいが」で映画初出演を果たした。11月公開の「サラリーマンNEO劇場版(笑)」「ギャルバサラ 戦国時代は圏外です」に続き、来年3月に「桜蘭高校ホスト部」が公開予定。

 

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