ぴいぷる

【田山涼成】子役から活動し芸歴49年の大ベテラン

★心の壁とぱらった

2011.06.15


田山涼成【拡大】

 今月17日開幕の舞台「太平洋序曲」(宮本亜門演出)に出演する。2004年に宮本が東洋人演出家として初めてブロードウェーでロングラン公演し、米演劇界最高の権威であるトニー賞4部門にノミネートされたミュージカルだ。

 米国人の脚本家と作曲家によって、幕末から開国に至る激動の時代の日本が描かれる異色の作品。田山さんは子役から活動し、芸歴49年の大ベテランだが、今回の舞台で初めてミュージカルに挑戦する。

 「いままで、ミュージカルはやるほうではなく見るほうだと思っていました。歌いながらの感情表現は難しいものですね」

 しかも今回は、江戸幕府の筆頭老中・阿部伊勢守正弘のほか、大工、武士上役、士官の4役を演じる。

 「舞台で4役も変われるのは、演劇人としては楽しいものです。どの役を見ても同じ人に見えないように、額をいかに隠すかがポイントですね」

 広くなった額を自らジョークにする。このユーモアが大きな魅力だが、約50年にわたる俳優人生を支えてきたのはやはり、演技に対する真摯な姿勢だ。

 「阿部は実在した人物なので、そこは崩さずにまっすぐに演じたいですね。鎖国令が解ける前夜の再現ドラマを演じるような気持ちでいます」

 仕事に関しては、こんなこだわりもある。

 「今回の作品には『NEXT(ネクスト)』という、決め手となる台詞があるのですが、僕自身、次につながることって大切だと思っているんです。僕は、1回使ってくれた映画監督や演出家に2回呼んでもらったら、自分に合格をあげているんです」

 ベテランになっても、この謙虚さを忘れないことが人気の秘訣なのだろう。その謙虚さは子役時代からのものだという。

 「高校1年のときに、テネシー・ウィリアムズの『欲望という名の電車』を見て、すごく感動して思ったことがあるんです。『いまよりも一歩進んだ、新しいものを見つけるようにしよう』と。その気持ちは、いまも変わらないですね。実は『夢の遊眠社』に入団したのも、文学座を卒業後に公演を見て、それまでにない新しさを感じたからなんです」

 野田秀樹主宰の「夢の遊眠社」は、演劇ムーブメントの先駆けとなった劇団だが、1992年にファンが惜しむなか解散した。

 「劇団が解散したときは、実はうれしかったですね。それまでは野田さんの台本を劇団員が独り占めしていたので、それが外に広がることは良いことだと思ったからです。野田さん個人はともあれ、彼の台本は愛していますからね(笑)」

 長い芸能生活の末に、変わったこともある。

 「自然な演技がようやくできるようになりました。いままでは照れが出ていたようなことも、自然にできるようになりました。心の壁をとっぱらったからかもしれません」

 そのナチュラルな雰囲気が人気となり、今年は「ぐるぐるナインティナイン」(日本テレビ系)の人気コーナー「グルメチキンレース・ゴチになります!12」で、史上最年長の新メンバーとなった。

 「あの場所では、還暦を迎える普通のおじさんでいます。視聴者の中には僕と同じ世代の人もいると思うので、そういう方たちと同じような感覚で『高いんじゃないの?』と質問したりしています。僕自身、フランス料理などを食べて育ったわけではないので、何でも高く見積もっちゃって、毎回、ハラハラ、ドキドキしています」

 舞台、ドラマ、バラエティーの仕事、どれも楽しいと笑顔を見せる。実は、楽しいのは公私とも、のようだ。かなりの愛妻家らしいのだ。

 「銀婚式を迎えた時に、女房と1つ約束をしたんです。『ストレスはためない』と。僕はどんな人とも先入観を持たずに、良いところがあると信じて付き合うんです。そうするとストレスがたまりません。いつも新たな気分で楽しめるように、“毎日が正月”くらいの気持ちでいます」

 (ペン・加藤弓子 カメラ・松本健吾)

プロフィール たやま・りょうせい 1951年8月9日生まれ。59歳。愛知県出身。62年、NHK放送児童劇団入団。76年、文学座研究所第15期卒業。80年に劇団夢の遊眠社に入団。92年の解散まで主要メンバーとして活躍する。舞台、映画、ドラマとも確かな演技力で演出家からの信頼も厚い。「太平洋序曲」は17日から7月3日まで横浜市中区の「KAAT 神奈川芸術劇場」で公演。

 

注目情報(PR)