北朝鮮の〝不可解〟な動向に注目が集まっている。これまで日本に対して強硬な姿勢に徹してきたが、唐突に「融和的」ともとれる姿勢をみせているのだ。日本政府内には、最重要課題の日本人拉致問題解決に向け、「日朝首脳会談実現への好機」ととらえる向きもある。だが、北朝鮮の対日外交は「裏切りの歴史」でもある。関係筋は安易な接触に警鐘を鳴らす。
きっかけは、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記が、岸田文雄首相に宛てて発信した能登半島地震の「見舞い」の電報だ。党機関紙「労働新聞」によると、正恩氏は「被災地の人々が一日も早く地震被害から復旧し、安定した生活を取り戻せるよう祈る」とつづった。
北朝鮮の最高指導者が、日本の首相宛てに公の発信を行うのは極めて異例だが、特に注目されたのは「日本国総理大臣 岸田文雄閣下」との宛名だった。外務省によると、「閣下」の敬称使用は初とみられ、〝軟化〟の兆しとの分析もある。
岸田首相は政権発足後、拉致問題の全面解決へ、日朝首脳会談の実現を掲げてきた。関係者によると、政権内では局面打開の期待感が一気に高まったという。