ひとりでの弾き語りライブがターニングポイント
「私にとって、歌ですか…。うーん、心の声ですね。今は、話すこととそれほど違いを感じなくなっていますね。前は、もっとパフォーマンスってとらえていたけど」
「ラブソングの女王」が、今年デビュー30周年を迎えた。日々を積み重ねてきた言葉には深みを感じさせる。
「昨年から30年って言い続けてきたから、少しずつ実感がわいてきた感じです。でも、30年続くということも、今の自分の年齢も、あのころは想像もしてなかったですよね」
自らのキャリアアップを求めて転職するのが当たり前の時代に、30年もシンガー・ソングライターを続けてきたことに驚きを隠さない。それでも着実にステップアップはしている。
「たった一人でもライブができるようになりたかったんです。私、ピアノでの弾き語りが苦手で、でもバンドでやるとなると大そうな話になるでしょ。友達から『ライブないの?』って聞かれたとき、『来週やるよ』と言いたかったんです。『こないだ終わったから、また来年かな』というのは残念でしょう」
2004年から弾き語りライブに取り組むようになった。
「それまでの私は圧倒的にライブの場数が少なかったんです。緊張している間にライブが終わっちゃったというのがしばらく続いたほど。だからステージに私ひとりの弾き語りライブは、最初は筋トレのような感じで、楽ではなかったですよ」
だが、そこで新たな発見があった。MCの大切さだ。
「ひとりだけの舞台って、歌とトークとの間も自由にできる。そうなると、トークも充実させていかないといけないなって。自分なりのスタイルと確立したとは言えないまでも、観客も私も心地よくできるぐらいまでには何とかなりましたね。ここがターニングポイントだったのかな」
そんな彼女がアルバム「果てしないこと」(ソニー・ミュージック)をリリース。前作「体温、鼓動」から約1年での新作だ。
ピアニストとのコラボから一転、今作ではバンドアンサンブルにこだわった。