ノンフィクションで振り返る戦後史

ルポライター自らが企業内で働いて労働者への圧迫を告発 1972~73年を描く 鎌田慧著「自動車絶望工場」(徳間書店)

「自動車絶望工場」表紙
「自動車絶望工場」表紙

香川照之が起こした銀座高級クラブでのセクハラ騒動が発覚して、情報番組の司会や各社CM契約などを次々降板した。最大スポンサーのトヨタ自動車で務めていた同社オウンドメディア「トヨタイムズ」編集長の職も今年限りで終えるという。今もまだ耳慣れない「オウンドメディア」(自社メディア)の言葉だが、もし数十年前にあったなら、ルポライター鎌田慧の描いた同社工場労働者のこの状況を果たしてどう考慮しただろうと思ってしまう。

著者は1972年から73年にかけて、季節工としてトヨタ自動車の工場で働き、「自動車絶望工場」を発表した。70年代初頭といえば公害問題が深刻になり、オイルショックが起きるなど高度経済成長のひずみが顕在化した頃。鎌田のこの作品もそんな時代状況の下での報告だ。

本書は最後まで読み進めるのがつらくなってしまうほど、次から次へと工場労働者が会社から圧迫される状況を描く。ある部門では去年まで3人でやっていた作業を2人削減してやるようになった。しかもその組の2人が長期休暇を取っているのにプロペラシャフトを100本も増産せざるをえない体制に追いつめられる。

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